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第十九話 焦燥

第十九話です


一気に書き殴った印象の話になりました

もう少し過去編お付き合いください。

シロイとクロイ、そしてリンダの3人が一緒に暮らしだして3年の時が流れた。

今日もいつもと変わらない幸せに満ちたそんな日だった。

そう、いつもと変わらないはずの日常、しかしそんな日常は何の前触れもなく打ち砕かれる。


「じゃあお店行ってくるね、お留守番お願いよ」

「行ってらっしゃいリンダ。早く帰ってきてね」

「わかったわ、約束ね」

いつもの小さな約束、そしていつも訪れる小さな幸せ。しかし、その日小さな幸せが訪れることはなかった。


リンダを送り出した後、シロイは少し不安げにクロイに話しかけてきた。。

「クロイ、なんか変なんだ。リンダがなんだか靄がかかったように見えたんだ」

「俺にはいつも通りのリンダに見えたけどな」

シロイ自身もどう説明していいか分からず困惑している様子だった。

「クロイの事は普通に見えてるのにリンダにだけ靄がかかってるんだ。最近外に出た時もそういう風に見えることがあるんだけど、なんか嫌な見え方なんだよ」

感覚によるところを他人に説明できずもどかしそうなシロイ。

「俺たちに何かできることはないのか?」シロイのあまり見せることのない不安げな表情にクロイが敏感に反応する。

「分からない。見えたからどうなるのとか分からないんだ」

「よし、じゃあ今日はリンダを迎えに行こう。俺たちがリンダを護ろう」

自分たちにできることをやるしかないとシロイに納得させるクロイ。


その日シロイはリンダを迎えに出る時間までずっとソワソワしていた。

「クロイ行こう、早くリンダに会いたい」

シロイの我慢の限界を迎えたその言葉にクロイは黙って付き従う。まるで共に死地へと向かう戦士のように。

外に出ると珍しく雨が降っていた。初めてリンダと出会った時のような冷たい雨が。


いつものスーパーへの道を2人で歩いて向かって行くと遠くでサイレンの鳴る音が聞こえてくる。

「クロイ、なんだろう嫌な感じがする」

「行こう」

言葉短くクロイが行動に移す。

クロイが駆けだすとシロイもすぐに続いて駆けだす。サイレンの鳴る方へと進むと少し先に人だかりができていた。

いつものスーパーの少し手前にある雑貨店の前に数台のパトカーが赤色灯を光らせ止まっている。

店の前には警察官が立ち、店の入り口は黄色と黒の立ち入り禁止と書かれた規制線が張られていた。

その人だかりに近づくと店の中を覗き込む人々が口々に話していた。

「強盗だってよ」「銃を持ってたらしいぞ」「けが人はいないみたいよ」

皆それぞれにどこから仕入れたか分からない情報を誰にとでもなく話している。


人だかりの中にリンダがいないことを確認するとスーパーへ向かい再び駆け出す。

「リンダいないね」クロイと2人でスーパーの中を見て回ったシロイが不安げに辺りを見渡す。

「入れ違いになってるかもしれないな、一旦家に帰ろう」不安げなシロイを勇気づけるようにクロイが言う。

2人は仕方なく家に向かって歩き出す。

家に向かいながらも、道すがらリンダを捜すシロイとクロイ。

そして家に近づいて来た時シロイが話し出す。

「クロイ、リンダに初めて会ったのその先の路地だったね」

「そうだな」

そこにリンダとの思い出を見つけ、ようやく少し安心したような表情を見せたシロイにクロイも少し気を緩める。

束の間の平穏の時と共に出会いの路地に到着すると2人は路地をのぞき込む。

その時、路地を見つめるシロイが何かを見つける。

「誰か倒れてるよクロイ」

「行ってみよう」

2人は路地へ駆け込むとその先に見覚えのあるブロンドの髪が地面に伏せるように倒れていた。

「リンダ!」

そう叫ぶとシロイとクロイは駆け出していた。

その人影の周りには紙袋から飛び出すように、買い物をしたであろう物が散らばっていた。


シロイとクロイがリンダを探しに出る少し前、その日リンダはいつもより早く仕事を終えることができシロイとクロイのお迎えを受けることなく店を出る。

「やっぱり降ってきたのね」リンダはそういうと持って来た傘を差す。

そしていつものスーパーでその日の夕食の食材を買い、傘を差し家に向かって歩いていた。

もう少しで家に着くところでシロイとクロイと出会った路地で足を止める。

「シロイとクロイと出会ったのもこんな雨の日だったわね」そう1人で呟き路地へと入って行く。

3年前の事を思い出し2人との出会いを懐かしみ1人想いにふける。

シロイとクロイは私の天使ね、本当に自分は幸せなのだと改めて実感する。

その時、その路地に1人の男が雨の中、傘もささずに走りこんで来た。

水溜まりの水を踏みはじく音に気付きリンダが振り返ると男と目が合う。

「くそっ、顔を見られた」男はそういうとベルトにに挟んだ銃を手に取りリンダに銃口を向ける。

パン、パン、パン、雨の中3発の乾いた音と共にその場に倒れるリンダ。

地面にスーパーの紙袋の中身が散らばり、ゆっくりとリンダから流れ出る血がそれらを赤く染めていく。



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