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第十八話 3つの幸せ③

第十八話です


この3つの幸せを書いている時はとてもリラックスして書けた

優しい世界というものはとても心地がいいものだ

その日の昼間シロイが突然クロイに勢いよく話しかけた。

「ねえクロイ、僕リンダにご飯作ってあげることにした」

「作れるのか、飯?」いつものシロイを見ている限り無理そうだなとは思ったが一応聞いてみることにしたクロイ。

「リンダが一緒なら作れるよ」得意げにシロイが答える。

「それは目的を達成できるのか?」思いもよらぬ回答に少しあっけにとられクロイが再び尋ねる。

「あ、そうかだめだね」いいことを思いついたにもかかわらず実行できないことに気付き悔しがるシロイ。

「朝のホットサンドなら大丈夫じゃないか?」クロイが助け舟を出す。

「いいね、僕ホットサンド作る!」

シロイとクロイが2人の時はいつもこんな感じだった。

シロイがやりたいことを考えてクロイが実現可能な方向へ導いていく、他愛のない笑顔にあふれた日常。


クロイの提案でシロイは意気揚々とホットサンドを作り始めるとクロイが横で様子を見ながら何とか完成させる。

そして散らかったキッチンを置き去りにして2人で試食する。

「おしいよ、クロイ」自分が作ったホットサンドにご満悦なシロイ。

「大丈夫そうだな」多少の不安を抱きながらクロイもホットサンドを口にする。

食べ終わるなりシロイが何かを思いつきクロイに話を持ちかける。

「そうだ、リンダに内緒で朝ご飯をつくろう」

「起きられるのか?」最後の一口を食べ終わりクロイが聞き返す。

「んー、起きられないね」再び意気消沈するシロイ。

「リンダに全部話して起こしてもらえばいい。シロイが作ってくれるならリンダも喜ぶだろう」クロイのその言葉を聞きシロイはまた目を輝かせる。

いつもクロイはそんなシロイの嬉しそうな顔を見ると自分の心が満たされるのを感じていた。


翌日、朝のキッチンの片づけを終え、日の高いうちは図書館で過ごす2人。

日が傾きかけた頃、シロイとクロイはリンダを迎えに店へと向かう。

店に着くと丁度リンダが仕事を終え店から出てくるところだった。

「あら、迎えに来てくれたの? 嬉しいわ、明日お休みだからご褒美にアップルパイ焼いてあげる。おいしいよ」2人が迎えに来てくれたことをリンダは素直に喜ぶ。

「アップルパイ? やったー、リンダが作ってくれるの?」ご褒美と言う言葉にシロイが反応する。

「そうよ、私が作るの。またお手伝いしてくれる?」少し腰をかがめリンダが2人に微笑みかける。

「うんいいよ、おいしいアップルパイ作るよ」リンダの微笑みにシロイも笑顔で応える。

「クロイもお願いね」リンダはシロイの返事を聞き終えるとクロイにも微笑みかける。

「分かった」

いつもリンダはシロイだけでなくクロイにも同じように微笑みかけてくれる。そんなリンダがクロイも好きだった。


帰り道、3人はその日の夕食の食材と明日のアップルパイの材料を買いにスーパーへと向かう。

そして買い物が終わるとリンダを真ん中に右側にシロイが、左側にクロイが並び家に向かって歩いていく。

「荷物は俺が持つ」歩き出してすぐにクロイがリンダの手からさっき買い物をした荷物を半ば強引に奪い取る。

「持ってくれるの? クロイありがとね」クロイの不器用な優しさにリンダが笑顔で応える。

「あー、ずるい。僕も持つ」シロイが焼きもちを焼きクロイの持つ荷物に手を伸ばす。

「シロイには無理だ、諦めろ」優しさのつもりの言葉だったのだがまだその辺りはうまく表現できないようだ。

「僕も持つのー」駄々をこねて困らせるシロイにクロイが提案を投げかける。

「手が空いてるのならリンダが迷子にならないように手を繋いでやれ」

その言葉を聞き終えるとシロイは満面の笑みを湛えリンダに向かって手を伸ばす

「リンダ、僕が手を繋いであげる。迷子になったら困るからね。手を放しちゃだめだよ」リンダの手を引きシロイは颯爽と先頭を歩き出す。


今日の出来事をいつもより少し早くリンダに話して聞かせながら3人揃って家に戻って来る。

部屋に入るとリンダはキッチンをのぞき込む

「素敵、朝のキッチンとは大違いね」リンダはそういうとクロイに微笑みかける。

「片づけるって約束したからな」当たり前のことをしただけだと言うクロイの表情はどこか照れたように見える。

「ありがとね、クロイ」

いつもの小さな約束、クロイもまたリンダに小さな幸せをもたらす存在であった。

「クロイは片づけるの上手なんだよ」クロイの表情を見てシロイがいたずらっぽく笑う。


小さな約束を交わし続け、そして小さな幸せを甘受する3人。

いつしか小さなそれらは積み重なり大きなものへと変わっていく。

互いに思いやり、慈しみ、大きな幸せと成ったのだ。

間違いなくその時3人は幸せであった。それは今がどうであろうと変わることのない真実であった。



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