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第十二話 シボレー

ゴールデンウイークですがいつもと変わらずマイペースで更新していきます


動きのある場面のスピード感を表現するのはなかなか楽しいのですが難しくもある。

なんとか 躍動感を味わってもらえたら嬉しいです。

トラビスは考えていた。どうしてこうなった? ほんの10分前までは順調だったはずだ、心の中で叫ぶ。


いつも通り運転役の仕事を引き受けていただけだった、裏の仕事ではあったが。

仲間を現場に送り届け戻りを待っていた時だった。遠くから聞こえてきていたサイレンがだんだんと近づいて来たかと思うと待機している自分の乗っているシボレーの方へとやって来る。

念のため不審がられないようにゆっくりと発進した時近づいてきたパトカーからマイクを通した声が聞こえてくる。

「前のシボレー止まりなさい」

その瞬間アクセルを目いっぱい踏み込んだ。カーチェイスの始まりだった。

パトカーの数はどんどん増えていく。これはまずい、そう思った時にはすでに遅かった。


どうやって撒くか? そう考えながらハンドルを握る手に自然と力がこもりタイヤを軋ませながら右へとハンドルを切った時に後ろから声が聞こえてきた。

「わー、速い速い」シボレーの後部座席でシロイがはしゃぐ。

「悪くない」相当に揺れているはずの車内で満足そうなクロイ。

「はっ? 誰だお前ら? いつから乗ってやがった?」バックミラー越しに映るシロイとクロイを一瞬視界にとらえたトラビスが叫ぶ。

「行け行けー」さっきまで退屈だった分楽しむシロイ。

一瞬後部座席に気を取られたが今はそれどころではない。右へ左へと忙しくハンドルを切りパトカーを振り切ることに集中する。

この辺りの道は事前に実際に自分で走って確かめていた。運転がうまいだけでは一流ではない。どの道がどこに通じているのか、この時間帯の渋滞状況など車を走らせるための情報の方が重要なのだ。

後ろからやって来るパトカーは3台。サイドミラーで後ろを窺っていた時その3台の間に車1台が通り抜けられる隙間が見えた。その瞬間フルブレーキと共に一気にハンドルを目いっぱい切る。シボレーがその場で180度回転する。逆ハンドルでカウンターを当てながらアクセルを小刻みに踏み続けエンジンの回転数を保ちパトカーと正対すると一気に踏み込む。そして右側のサイドミラーを吹き飛ばしながら3台のパトカーの間をすり抜けるとパトカーを置き去りにし走り抜ける。

そのまま引き離すと事前に下見しておいた人気のない工場へと滑り込む。


車を止めると乱暴にドアを開け車を降りる。そのあとに続くようにゆっくりとシロイとクロイも降りてくる。

「誰だお前ら、なんで後ろに乗ってた?」トラビスは次なる問題に直面し怒りを露わにする。

「僕はシロイ、こっちはクロイだよ」いたって普通に、いつもの微笑みを湛えて自己紹介をするシロイ。

「なかなか良かった」車の乗り心地を伝えるクロイ。

「わけがわからねえ、今日は厄日だ」トラビスは手で顔を覆い天を仰ぎながら愚痴をこぼす。

そんなトラビスを見ながらシロイがクロイの方を見ながら話しかける。

「この人染まっちゃってるよ、クロイ」

そのシロイの言葉を聞き、クロイがトラビスに向かって言葉を発する。

「われらはアルカトラズ、生か死かどちらか選べ。お前に残された道は死のみ、われらの監獄に囚人としてくるのならば生を保証しよう。ただし永遠にわれらを裏切るな」

「なんだ? 子供のお遊びに付き合ってる暇は無いんだが。生きるか死ぬかってのなら生きるに決まってんだろ」特に考えるでもなく当たり前のように答えるトラビス。

「ようこそアルカトラズへ」カールゴンの時と同じように左手を胸に当て右手を後ろに回し美し所作で礼をするクロイ。

そして次の瞬間建物からいくつかの悲鳴が聞こえクロイの影がその悲鳴を発した者を運んでくる。

今回の一連の出来事は何者かがトラビスを始末するために起こしたことのようだった。


「なんだ? 何が起こってる?」目まぐるしい展開に混乱気味のトラビス。

「僕たちはアルカトラズ。約束通りお兄さんの生は僕たちが保証するよ」天使の微笑みでトラビスに笑いかけるシロイ。

「アルカトラズ? もしかして最近現れたヤバい奴らのことか?」仲間内で最近話題に上がっていた名前を思い出すトラビス。

「んー、ヤバいかどうかは知らないけど僕たちがアルカトラズなのは間違いないよ」変わらぬ微笑みのままシロイが話す。

少しの間考えトラビスが口を開く。

「いいだろう、俺は金を稼ぎたいんじゃない。何か大きなこと成し遂げたいだけだ。余計な邪魔を排除してくれるならその監獄に喜んで囚われようじゃないか」些か投げやり気味にトラビスが吐き捨てる。

「やったー、運転手と車確保だ」両手を上げ今にも踊りだしそうに喜ぶシロイ。

「車は良い」シロイ以外の者にはわからないようだがクロイも喜んでいるようだ。

「俺はトラビス。運転なら任せろ。後、さっきの礼は心奪われたぞ」どうやらトラビスは切り替えの早い性格のようだ。

「あれはシロイの趣味だ、そうしろと言われたからやっているだけだ」特に不満があるわけではないが自分の趣味ではないと主張するクロイ。

「トラビスは見る目があるね、あれいいでしょ? クロイがやるとすごく様になるんだ」自分が褒められた様に喜ぶシロイ。

そしてシボレーに歩み寄りながらシロイがトラビスに話しかける。

「よーし、じゃあドライブの続きに出掛けよう」新しいオモチャで遊びたい様子のシロイ。

「バカなのかお前は? また追いかけられるだけだろうが」トラビスは呆れた表情でシロイを諭す。


こうしてアルカトラズに運転手が加わることとなった。


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