第十一話 招集
第十一話です
登場人物が増えてクラス替えの後の様に名前を覚えるのに必死です。
カンニングペーパー用意しながら書いてます。
それではお楽しみください
アルカトラズとの一件から1週間ほど過ぎたころサイラスは再びドエイド本部へ呼び出されていた。
今回は査問会ではなく幹部付きソルジャーとの顔合わせだ。
サイラスもうわさで聞いたことのある程度で顔を合わせるのは初めてだった。
部屋に入ると中にはすでに人影があり話し声が聞こえてきた。
「か弱い乙女をソルジャーってどういうつもりなのかしらね?」露出の多い服装で足を組み爪を研ぎながら妖艶な女が話す。
「人を平気で殺せる奴の事をか弱いとは言わねえよな、後、乙女って見た目でもないだろ」女の横に座る顔立ちの整った若い男が答える。
「……」2人の会話を向かい側で大柄で無口な男が聞いている。無口だが不思議と意思疎通はできているようだ。
「あいつら2人は相変わらず頭ん中軽そうだな」片肘をつきながら会話を聞いていた屈強な男が誰にとはなくつぶやく。
「まあ、やるときはしっかりやるんじゃからそう言うてやるな、若さゆえよ」達観したような赴きで老人が応対する。
「若いからってみんなあんな風じゃないよ」子供の様に見える見た目とは裏腹に思慮深そうな感じの少年。
「やることさえちゃんとできるなら後は好きにすればいい」一番奥に座る落ち着いた雰囲気の男。自然とリーダー的な役割を任されているようだ。
サイラスと7人のファーストコンタクトであった。
「初めまして、私が今回指揮を取ることになったサイラスだ。よろしく頼む」
サイラスはこういった手合いとのコンタクトの取り方を心得ていた。求めるのは結果のみ。だからこそ普段の振る舞いや言動、仕事への取り組み方、やり方、こういったものに関しては一切口を出さないのだ。そして決して高圧的な対応はしないこと。暴力はコントロールできてこそ自身の力となり得る。タガの外れた暴力など身を亡ぼすだけだ。コントロールできることが私の力なのだと自負できていれば下手に出ることなどどうでもよかった。
「つまんない、おじさんじゃない。殺しちゃえば新しく若い男がくるんじゃない?」サイラスをチラッと見ると爪を研ぐ手を止めアイリーンが含みのある笑いを浮かべながら話す。
「俺は可愛い女の子がいいな」アイリーンに同調するようにクライドが続く。
「……」ダリルは何も話さないがどうやら会話には参加しているようだ。
「私を殺せばこの招集自体がなかったことになる、今回のミッションの対象はイレギュラー、本物なら生半可な気持ちで対応できる相手ではない」サイラスは毅然とした態度で答える。
「イレギュラーだって? 面白そうじゃないか」サイラスの発言に食いつくジェラルド。
「長く生きてはいるが未だにイレギュラーにはお目にかかったことはないのう」顎髭をなでながら興味深そうに話すデスモンド。
「僕たちでも十分化け物扱いされてるのにイレギュラーってどんな感じなのかな?」好奇心旺盛に目を輝かせるルーファス。
「口の悪いのもいるが気にするな。俺はブランドンだ、よろしく頼む」ブランドンは唯一の良識者のようだ。
一通りの顔合わせを終え、サイラスが話し出す。
「つい最近の話なのだが、私が手配したエージェントが彼らとやりあった、一方的だったようだがね。相手は2人、アルカトラズというルーキーだ」
「ヒュー、やるねルーキー」クライドが茶々を入れる。
クライドの横槍を気にも留めず続けるサイラス。
「5人編成で人選も一般的に見れば上位に位置するエージェント達だった。余裕の表れなのか全員生きて返されている、一度彼らから直接相手の情報を全員で聞いておきたい」
一方、自分たちへ再び刺客が送られようとしている当のシロイとクロイ。
「ねえロマーノ、お金の稼ぎ方教えてよ。車と運転手が欲しいんだ」親におねだりするように訴えるシロイ。
「車は良い」車が気に入った様子のクロイ。
意図しない2人の突然の来訪に驚きながらも平静を装いロマーノが答える。
「なんでお前らのしのぎを俺が面倒見なきゃいけないんだ。そもそもどうやって部屋に入ってきたんだ」1人でいる時間が気に入っているロマーノは少しイラついていた。
「えー、いいじゃん、細かいことは気にしちゃだめだよ」この状態のシロイに敵う者はいない。
「金が要るなら稼いでる奴でも攫って来いよ」さっさと2人を追い出したいロマーノは雑に答える。
「あっ、それいいね。クロイ、お金持ち探しに行こう」宝探しという目的ができるとさっさと部屋を出ていくシロイ。
「分かった」いつものようにクロイはシロイと共に部屋を出てゆく。
ロマーノのオフィスを後にし、当てもなく街に出て宝探しを始めるシロイ。
「ねえ、お金持ちってどこにいるんだろうね?」30分もせず飽きてきてしまっているシロイ。
「片っ端から攫うか?」極端なクロイ。
「何人かは染まりきってる人はいるんだけどね。お金持ちかどうかわかんないや」公園のベンチにもたれかかり腕を頭の後ろで組みつまらなさそうなシロイ。
その時遠くからおびただしい数のサイレンが鳴り響いてきた。
そしてそのサイレンに追い立てられるように1台のシボレーが猛スピードで他の車の間を縫うように走っていく姿が見えた。
「カーチェイスだ、行こうクロイ」クロイに向かって楽しそうに微笑むシロイ。面白そうなことに関わらずにいられないようだ。
「分かった」暇を持て余していたクロイもいつも通り素直に応じる。
荒々しい運転だが他を巻き込まないように細心の注意で疾走するシボレー。
だがそんな細心の注意を無視してシロイとクロイという災厄がそのシボレーを巻き込んでいくのであった。