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第十話 ドエイド

第十話です。


何かしらに名前を付けるのが苦手です。

ドエイドという名前も目の前にあったバンドエイドからパク……オマージュです。

ではお楽しみください。

ドエイドの依頼失敗のうわさは瞬く間に裏社会に広まった。

「おい、聞いたかドエイドの件?」「ああ、聞いたぜドエイドが失敗するなんて聞いたことがねえ」

「しかもかなりの精鋭部隊だったそうじゃないか?」「一体相手はなんて奴なんだ?」

「それがどうやら例のアルカトラズらしいぞ」「あそこの黒い奴がやばいらしいぜ」

「勢力図が変わるかもしれねえ」「こりゃあ荒れそうだな」

この日以降アルカトラズの力は広く認知されることとなる。


そんな中、ドエイドの本部にて行われる査問会にサイラスは呼び出されていた。

薄暗い部屋に細長いテーブルが置かれ、入り口から見て正面に1人、そしてテーブルに添って左右に3人づつ、7人がサイラスを待ち受けていた。

サイラスもヴァレンティノファミリーを受け持っているぐらいなので組織の中でもそれなりに上位の階級にいる。しかしさすがに査問会となるといくらかの緊張を感じていた。

「ドエイドとして依頼の失敗は許されない」威厳のある声が部屋に響き渡る。

ここに呼ばれ尋問を受けることは目に見えていた。ここからがサイラスにとって生死を分ける戦場となるのだ。

「今回の依頼に関して部隊編成は最良で最強でした。我々には落ち度はありません」臆することなく発言するサイラス。

まだだ、切り札は切りどころが肝心なのだ。まだ我慢しろ。

「落ち度がない? では失敗の原因は何だというのだね?」先ほどとは違う老齢な男がサイラスに尋ねる。

ここだ、自分からではなく向こうから発言を促させることに意味があるのだ。

「今回の相手は『イレギュラー』であったと結論付けられます」サイラスは胸を張り力を込め発言する。

『イレギュラー』、この世の理から外れた存在達の事を総じてそう呼ぶ。

「イレギュラーだと? もし本物ならことだな」正面に座る老練な男が言葉を発するとしばらくの沈黙が訪れた。

そしてその沈黙を破ったのはサイラスだった。

「情報集めと戦闘対応のため、幹部付きソルジャーを招集いただきたい」正面に座る老練な男に向かってはっきりとした信念をもって訴えかける。

「幹部付きを招集だと? 正気か?」別の男が異議を唱えようとした時老練な男が手を前に伸ばし発言を制する。

「いいだろう、本当に相手がイレギュラーなのであれば幹部付きだとて役不足だろう」

サイラスはその言葉を聞きこの戦場での勝利を確信する。

「幹部付きソルジャーの招集とサイラスがその部隊指揮を取ることに決議を取る、合意の者は静寂をもって応えよ」

暫くの沈黙の後、

「全員の合意をもってここに幹部付きソルジャーの招集とその部隊の指揮をサイラスに任命する」その言葉を持って査問会は閉会した。

サイラスにとって査問会は完全勝利であったがこれからが正念場となることをサイラス自身も感じ取っていた。


翌日、カールゴンは何者かに襲われることとなるのだが、その予定を知らないのは当の本人だけである。

カールゴンは安心しきっていた。何かあればクロイの影が護ってくれる、実際に危機を何度も救ってもらっている。

しかしその日は影は一切反応しなかった。腕を特殊警棒のようなもので殴られ骨折したのだ。

どういうことだ? なぜ影が出てこない? しかし助かった、生きている。

いや、まて。なぜ腕だけなんだ? あの状態ならどうにでもできたはずだ。その瞬間頭に浮かんだのはいたずらをした時の少年のような笑顔を浮かべて笑っているシロイの顔だった。


数日してカールゴンの元にシロイとクロイが現れる。そして2人の存在を確認するなりいきなりカールゴンが語気強くしゃべりだす。

「お前らわざとやらせただろ?」悪ガキに説教をするように怒鳴りつけるカールゴン。

「何のこと言ってるの、カールゴン?」口を両手で押さえ、こらえ切れぬ笑いをこらえようとするシロイ。

「生きているんだ、何の問題もない」否定はしないが約束は違えていないと主張するクロイ。

「まあいいじゃん、一応これで手打ちって話付けてあるからさ。それでもあくまで僕たちとヴァレンティノとの話だから僕たちから離れればカールゴンが狙われるってことは変わりないけどね」いつもの天使の微笑みでシロイがカールゴンにくぎを刺す。まだ笑いをこらえながらではあるが。


一方、ヴァレンティノファミリーもカールゴンの件に関して組織内に終結の通達を出していた。

外部から見ればヴァレンティノファミリーがカールゴンの腕1本で妥協した、すなわち敗北したと見られていた。しかしそれを口に出し大っぴらに話す者はいなかった。たとえ1度負けたとはいえそれだけヴァレンティノファミリーの名前は大きかった。


「本当にあいつらはイレギュラーなんでしょうか?」ロマーノがヴァレンティノに問いかける。

「十分に考えられる。ドエイドが依頼を失敗した上にお前にそう伝えたんだろう? イレギュラーと敵対するなど愚の骨頂だ」これまでのアルカトラズとのやり取りを思い出しながらヴァレンティノ自身も確認作業を行っていた。

サイラスが最後にロマーノに伝えた言葉は「イレギュラーの可能性があります」というものだった。

「イレギュラーか……」理解の範疇を超えた存在に畏怖の念を抱きながらもどこか期待にも似た感情を感じるロマーノだった。


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