異世界と現実世界
湿気のある日曜日の朝。
戦いの女神になんとなく元気がない。
朝食はぺろりと平らげたので、体調に異変があるようでもなさそう。
「なにか心配事があるのか?」
「昨夜、魔法を使えぬと申したであろう。そのことだ」
よほど気にしているようだ。
魔法を使えないと戦いの女神とは言えないと言っていたし。
天界の神々、魔王、下界の者たちに馬鹿にされるとも言っていたし。
魔法の存在がアイデンティティを形成する一つの要素なのかも。
でも、俺たちのこの世界は魔法なんて存在しない世界。
魔法がなくても、十分に生きている世界。
そんな世界に戦いの女神はいつまでかはわからないが、生活しなきゃいけない。
戦いの女神に伝えたのは、おおまかにこんな感じ。
この世界で魔法を使えなくても、俺にとっては戦いの女神は戦いの女神。
しばらくは俺が面倒も見るし、いざとなったら守る。
この世界には魔法と同じくらいに面白くて楽しいことがたくさんある。
面白くて楽しいことを受け入れて、一緒に楽しんでいこう。
俺と戦いの女神は何かの縁で出会った。
風紀の乱れない大人同士の接し方で楽しく生活していこう。
「おっさんの申す通りだ。いつまでも思い煩うのはよくないな。おっさんにも心配を掛けてしまう。感謝するぞ、おっさん」
戦いの女神は花が咲いたような笑顔で俺の頬に拳を当て、グリグリしてきた。
恋愛映画とかだと、ここで戦いの女神が俺にハグしてくるんだけど、違うんだな、これが。
感情表現の出し方が戦いの女神らしいっていえば、戦いの女神らしいよな。




