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ダブルデートをありのままに(後半)

 昨日に引き続き、二〇二三年四月十五日(土曜日)のダブルデートを時系列で……の後半スタート。



・午前十一時五十七分~午後零時十五分


 昼食を取る場所に向かう車内にて。


「先輩、俺、こんな夢を見てたっす」

「夢? ああ、さっきまで寝ていたときの夢か。どんな夢だった?」

「俺と彼女と先輩と女神さんが異世界に転移して冒険者パーティーを組み、魔王を倒しに行くって夢っす」

「魔王を倒しに行く夢?」

「そうっす。いろんなイベントをこなして旅を続けたんすけど、魔王城に着いた時に目が覚めたっす」

「ふーん」


 俺と後輩のやりとりのあとに、戦いの女神と彼女さんのやりとり。


「あたし、女神さんの寝言で目が覚めたっす」

「我の寝言で?」

「そうっす。寝言で『我に続け! 魔王は目の前ぞ!』っていう寝言っす」

「我はそんな寝言を申した記憶などない」


 戦いの女神の寝言、わからなかったなぁ、俺。


 けれど、なんだか後輩の見た夢と戦いの女神の寝言が妙にリンクするな。


「戦いの女神、寝言を言っているときにどんな夢を見ていたか、憶えてる?」

「残念ながら憶えておらぬな」

「そうか」


 後輩の夢が正夢になることはないだろう。


・午後零時十五分~午後一時十五分


 午後零時十五分、俺と後輩の職場近くの牛丼屋に到着。


「まさか、ここで昼食を取るのか?」

「そうっす。俺は彼女を連れてきたことがあるっすけど、先輩は女神さんを連れてきたことがあるっすか?」

「ないな」

「だから、ここに来たっす。女神さん、ここが先輩と俺がたまに食べにくるお店っす」


 なるほど。気を利かせて選んだというわけか。


 牛丼屋に入店し、テーブル席に。

 牛丼屋そのものに初めて入店した戦いの女神、あたりをきょろきょろ。


「牛丼のぎゅうとはうしのことか?」

「牛肉のことだな。ただ、牛肉を焼く焼肉屋と違って、煮込んだ牛肉をご飯の上にのっけて食べるんだ。戦いの女神は家でも牛丼を食べたことがなかったっけ?」

「食べたことはないな」

「それなら食べるのが今日が初めてか。ここの牛丼は美味いぞ」


 それぞれが注文し終え、注文品が来るまで軽く雑談。

 注文品が運ばれてきたあと、俺、後輩、彼女さんが丼を持ち、牛肉と白米を口の中に掻っ込む。


 その様子を見ていた戦いの女神も俺たちの真似をして口の中に掻っ込む。

 食べ終わったあとに、焼肉も大変美味だが牛丼も大変美味だな、と満足げ。


 食後、しばらく雑談をして店を出て、土砂降りの雨の中、車の中に。


・午後一時十五分~午後一時四十分


「次はどこに行くんだ?」

「博物館っす」

「博物館?」

「そうっす。いま、戦国時代の甲冑展を開催中なんすよ」

「へえ。後輩と彼女さん、戦国時代とかの歴史に興味があるのか?」

「俺はないっす」

「あたしもないっす」


 おまえらなぁ。


・午後一時四十分~午後三時五十五分


 博物館着。

 入館料を払って、入館。

 土曜日の午後だというのに、館内の入館者はまばら。


 館内には、戦国時代の鎧や兜だけではなく、おまけ程度に槍や刀、火縄銃などが展示されていた。


「あれは兜っすね」

「兜っすね」

「あれは鎧っすね」

「鎧っすね」


 後輩と彼女さん、見りゃわかるだろう的な会話を交わしながら、どんどん先に進む。

 遅れないように後を付けたいが、戦いの女神が熱心に見入って動かないため、距離が離れて行き、とうとう姿が見えなくなった。


「我はインターネットで甲冑について調べたことがあるが、実際にこうして目にすると、印象が違ってくるものだな」

「やっぱり調べてたんだ。どう印象が違ってる?」

「戦う者の殺気を感じ取れる」

「殺気?」

「そうだ。戦う者の持つ殺気だ。それと痛みだな」

「痛み?」

「戦う者の持つ痛みだ」


 しんみりとした口調の戦いの女神。


 戦いの女神は神で甲冑を装備していた戦国時代の武将は人間だけど、そういったものとか時間とかを越えて『戦う者』として共鳴し合う部分があるんだろうな。


 と、そのとき。


「あれは兜っすね」

「兜っすね」

「あれは鎧っすね」

「鎧っすね」


 先に行って姿が見えなくなったはずの後輩と彼女さんの声が背後から聞こえた。

 後ろを振り向くと、何にも考えてなさそうな顔をした二人が歩いていた。


 二人はそのまま俺たちの横を通り過ぎ、また姿を消した。

 しばらくすると、また背後から、あれは兜っすね、兜っすね、との声が。

 そんなことが十回くらい続いた。

 五回目くらいから、制服を着た警備員が二人のあとにぴったりとつけた。

 何周もしていたから、警戒されたのだろう。


 そのかん、戦いの女神はそんなことなど気に留めずに甲冑を熱心に見入り続けた。

 おかげで三十分程度で回れるコースを回るのに二時間も掛かった。

 ちなみにまた別の制服を着た警備員が遠くから俺たち二人を監視していた。

 そのことにも戦いの女神は気付いていなかったけれど、時間を掛け過ぎて回っていたので、警戒された?


 閉館時刻午後四時の十分前に退館。

 土砂降りだった雨が小雨になっていた。


・午後三時五十五分~午後四時三十分


 午後三時五十五分、博物館から出発。


「次はホームセンターっす」

「ホームセンター?」

「俺と彼女、今年が終わるまでに新しいアパートを借りて同棲するつもりなんで、どんな家具を買うかを考えるために見てきたいっす」


 いまは四月中旬だから、今年が終わるまであと七か月と半月もある。

 余裕を持って同棲する準備を進めておくのはいいことだ。


・午後四時三十分~午後五時三十分


 午後四時三十分、ホームセンター着。

 博物館とは違い、店内には多数の客の姿。


 後輩と彼女さんのあとを着いて行くと、家具や調理具、寝具のほかにキャンプ道具などを見て回っていた。

 それらを談笑しながら見て回る二人の姿を距離を置いて後ろから見て、ほんわかとした暖かな気持ちになった。


 戦いの女神もそんな二人の姿を見ていたけど、なんだか様子が変だった。


「どうした? 疲れたのか?」

「疲れてはおらぬ」

「戦う者の殺気や痛みを感じ取って、久しぶりに槍を持って、魔王や魔物と戦いたくなったのか?」

「違う。後輩と彼女のことだ。二人は相思相愛のもと、新しき家庭を築かんとしておる。精霊とタマと同じようにな」

「黒猫とタマは見た感じでは、まだタマは黒猫の求愛を受け入れてなさそうだけどね」

「いずれは精霊とタマも新しき家庭を築くかもしれぬ。おっさんと我の二人は、新しき家庭を築かんとするふた組を見守り、時として支えてやらねばならぬのだな」

「そうだね」


 またもしんみりとした口調の戦いの女神。

 ホームセンターの店を出て車に乗り込むまで、戦いの女神は口数が少なめだった。


・午後五時三十分~午後八時


 午後五時三十分、ホームセンターから出発。

 午後五時五十五分、イタリア料理店に到着。

 そこのイタリア料理店で食事を取るのは、俺も戦いの女神も初めて。


「夕食は俺たちのおごりっす。先輩も女神さんも好きなメニューを注文してくださいっす」

「そういうわけにはいかないよ。年下からおごってもらうわけにはいかない」

「先輩さん、気にしなくてもいいっす。今日、ダブルデートをしてくれたお礼っす」

「しかし……」

「おっさん。相手の親切を年上だからといった矜持で断るのはよくないぞ。受けた親切には、いずれ感謝を持って返せばよい」

「……そうだな。それじゃあ、お言葉に甘えてごちそうになるかな。この店のおすすめメニューは?」

「特製のサンドイッチと赤ワインっす」


 そのおすすめメニューとコーンスープを戦いの女神が注文。

 俺は値段と食欲を天秤にかけて、適切に注文。

 後輩と彼女さんは同じメニューを注文。

 ミックスピザ、旬の野菜サラダ、トマトソースのスパゲティ、などなど。


 午後八時、満腹感と満足感を持ったまま、イタリア料理店から出発。


・午後八時~


 午後八時二十分、俺の家に到着。

 五分ばかり話をして、後輩と彼女さんと別れる。


 戦いの女神を先に家に上がらせ、俺は物置に行き、黒猫とタマの様子をちらっと確認。

 二匹(?)とも睡眠中。

 家の中に入ると、今朝、用意してあった今日の三食分の餌がなくなっていた。


「戦いの女神、今日はどうだった?」

「午前中はどうなることかと心配したが、午後からは楽しめたぞ。特に博物館で見た甲冑展は何度でも見に行きたい。おっさんはどうだ?」

「俺も午前中でダブルデートが強制終了になるのかなと思ってたけれど、無事に過ごせてよかった」

「まったくだ。無事が何よりぞ」


 戦いの女神も結果的に楽しめたようだけど、やはり口数が少なめだった。

 今日一日の疲れのせいなのか、それとも、博物館で感じ取った戦う者の殺気や痛みをまだ感じ続けているのか。

 その辺を俺は訊きそびれたまま、週一の飲酒タイムに突入した。



 以上、ダブルデートのお話でした。

ジャンルをこのままローファンタジーで続けるのか、それとも、キーワードにラブコメを追加するのか、思案中。

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