戦いの女神の初入浴……おっさん、炎上覚悟で
「おっさん、我は温泉に入りたい」
仕事から帰宅後、戦いの女神にそう言われた。
温泉? ああ、お風呂のことか。
おっさん? ああ、俺のことだよ。
「もうしばらく温泉に浸かって体を休めておらぬ。これほどまで鎧を着ていなかったから、なおさら体が疲れた。ゆっくりと湯に浸かって疲れを癒したい」
「戦いの女神の世界にも温泉があったのか」
「当然であろう。しかし、それは天界のみだ。下界の者たちの多くは湖や川の水で体を洗っておったがな」
「そしたら、その温泉を使えるのは天界の神様だけ?」
「大まかにいえば、その通りだ」
この世界では数百円出せば、誰でも温泉に入れるのにな。
それは置いといて、戦いの女神がお風呂に入りたいというので夕食を食べたあと、浴槽にお湯を入れつつ、お風呂の設備の復習と備品の使い方を教えた。
備品というのは、ボディーソープ(男性用)とかシャンプー(男女兼用)とかボディタオル(新品)とか。
あとで戦いの女神のために、女性用のボディーソープとシャンプーを買ってあげないとな。
「承知した」
説明を聞き終えて頷いた戦いの女神の鎧に水滴が付いているのを目にし、ふとした疑問が沸く。
「お風呂から上がったら、また鎧を着るのか?」
「馬鹿を申すな。我は申したであろう。鎧を着て疲れたと。鎧を着るわけがなかろう」
ふとした疑問が難問にかわった。
賢明なる読書諸氏にはもうおわかりだろう。
そう。戦いの女神の着替えがない。
俺の家には女性用の服も下着もない。
鎧の下に何も着ていなければアウト。
全裸戦いの女神を書こうものなら、この全年齢向けアカウントもBANでアウト。
「戦いの女神さん? 鎧の下になにか着ていらっしゃる?」
「鎧が肌に密着せぬように布を当てておる」
「鎧を脱ぐと、その布は外れたりする?」
「当然ではないか。鎧で締め付けているだけだからな」
さぁ困ったぞ、読者諸氏。
俺の家には女性用の服も下着もない。
全裸戦いの女神を書く覚悟もない。
俺は考えに考えた挙句。
「お風呂から上がったら、これを着てくれ」
戦いの女神に、予備用に取ってあったTシャツ(新品)とトランクス(新品)、ジャージ(洗濯済み)を献上した。
読者諸氏、女神にトランクスを穿かせる変態野郎!と怒らないでほしい。
仕方がないのだ。緊急事態なのだ。
次の休みに戦いの女神を連れて下着を買いに行くから。
「着替えを用意してくれるとは有り難い」
戦いの女神は着替え献上品を受け取り、嬉しそうに微笑んだ。
そして、お風呂デビューを果たした戦いの女神が着替え献上品を身に纏い、バスタオルで濡れたブロンド色の長い髪を乱暴に拭いながら戻ってきたことを読者諸氏にご報告したい。
戦いの女神がボディーソープとシャンプーの清楚な匂いも身に纏っていたので、俺は急いでシャワーを浴び、逃げるように自家用車に駆け込んだことも併せてご報告したい。




