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同居人は戦いの女神さま  作者: あしのクン
シーズン1
35/72

『代打、戦いの女神!』

 本日の目覚めも快適であった。

 精霊は我の寝言で眠れなかったニャと申しておったが、知らん。

 おっさんは養毛剤とやらの薬品を頭部につけておったが、枕元の抜け毛の量は変わらぬ。


 おっさんが会社に向かうため、今朝もこの家を出る。

 家を出る際の後ろ姿たるや、憎き魔王や魔物を退治せんと出撃する勢いではある。

 だが、家を出る前に枕元の抜け毛を掃除してから出てほしい。


 我は枕元の抜け毛を清掃し、ごみ箱に廃棄する。

 その、おっさんと黒猫が目を覚ます前に読んだ朝刊をまた読む。

 我が君臨していた世界の下界のように、この世界も慌ただしい。


 精霊にキャットフードを与える。

 精霊は特上マグロの刺身のほうがいいニャと申しておったが、我と精霊はおっさんの世話になっておるので、贅沢は申せぬ。

 ただ、キャットフードよりも特上マグロの刺身が美味であるのを我は知っている。


 精霊が我の膝で眠る。

 我が天界にいた頃には信じられないことだ。

 天界にいた頃、精霊は我を守るように直立不動で眠っていたからだ。


 昼食まで、おっさんのノートパソコンを使い、抜け毛を減らす手段を検索する。

 検索した結果、抜け毛を減らす有効的な手段はまだ発見されていないと判断。

 ことのついでに、おっさんのノートパソコンに保存してあった如何わしい動画を削除。


 昼食。

 サンドイッチを食す。

 精霊にはキャットフードを与える。


 昼食後、精霊を家に残して散歩に出る。

 昨日さくじつとは違い、吹く風が冷たい。

 体をあたためるため、全力で走った。


 帰宅前にいつも品を買いに行くコンビニに行く。

 コンビニの店員といつもと同じように会話を交わす。

 いつもと違わぬコンビニの店員の笑顔に胸の内まであたたまる。


 帰宅後、槍と鎧の手入れをする。

 戦う相手のおらぬこの世界におる限り、槍も鎧も必要ない。

 しかし、槍も鎧も我が戦いの女神である何よりのあかしだ。


 来客あり。

 来客曰く、『いま話題のこのプロバイダーに契約すると、インターネットの速度が光速クラスにあがりますよ。ご期待ください』。

 おっさんよりもキモい来客の笑顔に腹が立ち、拳を見せつけると、逃げて行った。


 眠っている精霊を起こし、ともにストレッチをする。

 精霊は我と人間のように体を自由自在に扱っておった。

 精霊に空を飛んでみせよと申してみたが、やはり飛べず。


 精霊の夕食。

 キャットフードを与えるが、精霊は美味しそうには食べぬ。

 我はキャットフードを何粒か食べてみたが、やはり美味にあらず。


 おっさんのいつもの帰宅時間だが、帰宅する気配がない。

 先に夕食を食べ、入浴を済ませる。

 まだ、おっさんは帰宅せず。


 おっさんがいつも座っている椅子に座り、この文章を書き始める。

 うつらうつらとしておると、精霊が前足で両耳を押さえた。

 前足で両耳を押さえても、おっさんは帰宅せぬぞ。


 この文章を書き終えても、おっさんはまだ帰宅せず。

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