『代打、戦いの女神!』
本日の目覚めも快適であった。
精霊は我の寝言で眠れなかったニャと申しておったが、知らん。
おっさんは養毛剤とやらの薬品を頭部につけておったが、枕元の抜け毛の量は変わらぬ。
おっさんが会社に向かうため、今朝もこの家を出る。
家を出る際の後ろ姿たるや、憎き魔王や魔物を退治せんと出撃する勢いではある。
だが、家を出る前に枕元の抜け毛を掃除してから出てほしい。
我は枕元の抜け毛を清掃し、ごみ箱に廃棄する。
その後、おっさんと黒猫が目を覚ます前に読んだ朝刊をまた読む。
我が君臨していた世界の下界のように、この世界も慌ただしい。
精霊にキャットフードを与える。
精霊は特上マグロの刺身のほうがいいニャと申しておったが、我と精霊はおっさんの世話になっておるので、贅沢は申せぬ。
ただ、キャットフードよりも特上マグロの刺身が美味であるのを我は知っている。
精霊が我の膝で眠る。
我が天界にいた頃には信じられないことだ。
天界にいた頃、精霊は我を守るように直立不動で眠っていたからだ。
昼食まで、おっさんのノートパソコンを使い、抜け毛を減らす手段を検索する。
検索した結果、抜け毛を減らす有効的な手段はまだ発見されていないと判断。
ことのついでに、おっさんのノートパソコンに保存してあった如何わしい動画を削除。
昼食。
サンドイッチを食す。
精霊にはキャットフードを与える。
昼食後、精霊を家に残して散歩に出る。
昨日とは違い、吹く風が冷たい。
体をあたためるため、全力で走った。
帰宅前にいつも品を買いに行くコンビニに行く。
コンビニの店員といつもと同じように会話を交わす。
いつもと違わぬコンビニの店員の笑顔に胸の内まであたたまる。
帰宅後、槍と鎧の手入れをする。
戦う相手のおらぬこの世界におる限り、槍も鎧も必要ない。
しかし、槍も鎧も我が戦いの女神である何よりの証だ。
来客あり。
来客曰く、『いま話題のこのプロバイダーに契約すると、インターネットの速度が光速クラスにあがりますよ。ご期待ください』。
おっさんよりもキモい来客の笑顔に腹が立ち、拳を見せつけると、逃げて行った。
眠っている精霊を起こし、ともにストレッチをする。
精霊は我と人間のように体を自由自在に扱っておった。
精霊に空を飛んでみせよと申してみたが、やはり飛べず。
精霊の夕食。
キャットフードを与えるが、精霊は美味しそうには食べぬ。
我はキャットフードを何粒か食べてみたが、やはり美味にあらず。
おっさんのいつもの帰宅時間だが、帰宅する気配がない。
先に夕食を食べ、入浴を済ませる。
まだ、おっさんは帰宅せず。
おっさんがいつも座っている椅子に座り、この文章を書き始める。
うつらうつらとしておると、精霊が前足で両耳を押さえた。
前足で両耳を押さえても、おっさんは帰宅せぬぞ。
この文章を書き終えても、おっさんはまだ帰宅せず。




