イカれたメンバーを紹介するぜ!!
へーい、みんな、元気かな!?
明日からまた始まる平日にうんざりしてないかな!?
日曜日が明日も続くように願っていないかな!?
でも、大丈夫!!
平日なんて怖くない!!
月曜日なんて怖くない!!
おっさんのようにテンションあげあげでいけば、どうにかなるさ!!
おい、誰だ!?
痛いおっさん、キモいおっさん、抜け毛を気にしているおっさんと言った奴は!?
そんなテンションさげさげでどうするんだ!?
今から俺の家にいるイカれたメンバーを紹介するから、テンションあげあげで頼むぜ!
最初に、独身彼女なし社畜のおっさん、俺だ!!
次に、異世界炎上娘で現実世界でも炎上しかねない娘、戦いの女神だ!!
最後に、上司先輩俺会社を悩ます体育会系男子、後輩だ!!
以上だ!!
……いや、以上じゃない。
「どうして、こうなったんだ?」
俺は初めて部屋の片隅で体操座りした。
そんな俺を気味悪そうな目で見る戦いの女神。
何も考えてなさそうな顔で見ている後輩。
出会わせたら、面倒なことになりそうな二人が俺を見ている。
「先輩の家に向かっている途中、ショッピングモールで見かけた女性が散歩してたんで、先輩の家まで送ってきたっす」
「この者の申す通りだ。我はこの者が貴様のことを細かく話し、そのうえで車に乗るように頭を下げられたので乗ったまでだ。話を聞けば、この者は貴様の部下ではないか」
「そうっす。俺は先輩の部下っす」
「案ずるな。我は貴様を知らぬ者の車には乗らぬ」
「俺も彼女いるっすから、その辺は心配しなくていいっすよ」
そういうことじゃないんだよな。
アポなし訪問で俺の家に向かっていた後輩の大罪を断じたいけれど、そういうことじゃないんだよな。
後輩に彼女がいることを初めて知ったダメージが大きいけれど、そういうことでもないんだよな。
俺は後輩に戦いの女神の存在を隠していた。
後輩が独り身である俺に、彼女さんは~、結婚は~、と気に掛けてくれることは嬉しい。
でも、戦いの女神を彼女や結婚相手と勘違いされるのは困る。
俺は戦いの女神を匿っているだけだからだ。
それに、異世界の天界から追放された戦いの女神が、突然、俺の家に現れたと言ったところで、誰が信じる?
「ところでお姉さんは先輩の彼女っすか?」
後輩、部屋の片隅で体操座りしている俺の存在をスルーし、質問するな。
「彼女とは?」
お前も俺の存在をスルーして訊き返すな。
「恋人同士って意味っす」
「恋人同士……違う」
「それなら、結婚相手っすか?」
「結婚相手とは?」
「夫婦って意味っす」
「夫婦……違う。おっさんは我のシモベぞ」
「シモベっすか。珍しい関係っすね。でも、そういう関係もありっす」
そういう関係もありって、どういうことだ?
「お姉さんはどこで先輩と知り合ったんすか? 出会い系アプリっすか?」
なんて質問するんだ。
俺は出会い系アプリを使ったことはないぞ。
「出会い系アプリとは? そのアプリというやらで戦うべき魔王や魔物と出会えるのか?」
出会えるわけねえだろ。
この世界は異世界とは違うんだぞ。
「違うっす。恋に落ちる相手と出会うためのアプリっすから」
「その相手とやらと戦えるのか?」
「戦えないっす」
「そうか。それなら、そのアプリを使う必要はないな」
「お姉さんは使ったことがないということっすね」
「当然だ。出会った相手とやらと戦えぬのだからな」
「戦う相手は恋に落ちる相手ではなく、恋のライバルっすからね」
うまい返しをするな、後輩は。
「そしたら、お姉さんはどこで知り合ったんすか? どうして、先輩の家に住んでるんすか?」
触れられたくない質問が来たぞ。
俺はこの質問にどう反応するか、戦いの女神を注視した。
戦いの女神は注視する俺をスルーして、
「我はこの世界とは異なる世界の天界から来た戦いの女神だ。わけあって、おっさんに匿ってもらっておる」
言っちゃうんだもんな。
言っちゃったもんは仕方ない。
次は後輩がどのように反応するか、注視した。
後輩は俺の注視を気にすることなく、
「お姉さんは異世界から来た戦いの女神さんで、先輩に匿ってもらっているんすね。わかったっす」
後輩、本当か?
本当に戦いの女神が言ったことを信じて、わかったのか?
「後輩、本当にその話を信じたのか?」
流石に突っ込んだ。
喉元に槍先を突き付けられていないにも関わらず、戦いの女神の話を信じるとは思えなかったからだ。
「信じるっすよ」
後輩はきちんと俺を見た。
「社会人になってわかったことは、世の中は信じられないことが平気で起こることっす。その中には、受け入れたくないこともあるっす。でも、受け入れたいこともあるっす。それは楽しいことっす。先輩と戦いの女神さんがショッピングモールで見た時、楽しそうに見えたっす。だから、話を信じるっす。戦いの女神さんが異世界から来て、先輩に匿われているとしても、二人の姿が楽しそうなら、俺はそれでいいっす」
目頭が熱くなったね。感動したね。
勤務初日に『社会人は社会のテストで万点取れたらいいんすよね』と言った当時の後輩に比べ、今の後輩は成長したね。
俺は成長した後輩をひしひしと抱き締め、こう言った。
「後輩、お前は社会人として成長したな。先輩として嬉しい」
「ありがとうっす」
「でもな、戦いの女神が異世界からこの世界に来たことは誰にも話すな。状況を見て、先輩である俺が話す。わかったな、後輩」
「わかったっす。戦いの女神さんを先輩の家に送ったんで、もう帰っていいっすか?」
「ああ、帰るがいい」
外に出て、戦いの女神とふたりで後輩を見送ったあとに俺は、
「あそこまで話しても大丈夫だったか?」
「我が異世界から追放された戦いの女神という話か? それなら案ずるな。我は貴様と同様に、貴様の部下と接するつもりだ」
「それは、同じシモベという意味で?」
「馬鹿を申すな。この世界のシモベは貴様だけだ。貴様の部下は我がシモベではない。だから、貴様はあの部下を大切にしてやれ」
「そりゃそうだろうけどさ」
家の中に入ろうとした時、庭の片隅で俺たちを見つめる黒猫に気付いた。
黒猫は俺と目が合うと、庭から外に逃げ出した。
珍しいな。猫を見るなんて。
野良猫かな。飼い猫かな。




