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同居人は戦いの女神さま  作者: あしのクン
シーズン1
21/72

焼肉の日

 今日は九月二十九日。

 二十九日、つまり、二九と十の日、それ即ち、肉をじゅうじゅう焼く日。

 結果として導かれる答えは、焼肉の日。

 ちょっと強引だったかな。


 まっ、何はともあれ焼肉の日だ。


 帰宅後、俺は戦いの女神に尋ねた。


「戦いの女神は、焼肉は好きか?」

「焼肉とは?」

「鉄板で牛や豚の肉を焼くことだよ」

「好きに決まっておろう」


 そんなわけで二人でやってきました、焼き肉店。

 歩いてきたので、焼肉を食べながら生ビールを飲むことが可能だ。

 焼肉店で焼肉を食べながら飲む生ビールって、美味いんだよね。


 さっそく俺は戦いの女神と生ビールで乾杯。

 実は戦いの女神、赤ワイン以外のお酒もいける口なんです。


「生肉が運ばれてきたが、どうすればいいのだ?」

「俺が肉を焼くから、見てて」


 皿から生肉を引っ張り、熱々の焼き肉プレートに敷く。

 じゅうじゅうと焼き、ひっくり返して、じゅうじゅうと焼く。


「その肉はもう焼けたから、その皿のタレにつけて食べてみて」

「手で掴み取るのか?」

「やけどする気か? その箸で取って食べるんだよ」

「おっさん。我は箸を使って食べたことはないぞ」


 そうでした。

 戦いの女神はフォークを使った食事ばかりで、箸を使ったことがありませんでした。

 白米のご飯をフォークで食べさせていました。

 教育係のワタクシメの大失態です。


 箸の持ち方と使い方を教えてあげないとな。

 そうでなければ、戦いの女神が不便する。


 俺は箸でその肉を抓み上げ、タレをつけて、戦いの女神の口元に寄せて、


「そのまま食べてみろ。美味いぞ」


 これは口あーんのシチュエーションである。


 恋愛ものだと、彼氏が彼女に口あーんさせる甘いシーンである。

 彼氏の口あーんで口に入れ、彼女は美味しそうにもぐもぐさせながら微笑み、彼氏はそんな彼女に『美味しいかい?』と囁く甘いシーンである。


 しかし、俺たちにその甘さを期待してはいけない。


「承知した」


 戦いの女神は当然だと言わんばかりに肉を口内にお納めになり、咀嚼する。

 咀嚼した肉を飲み込んだ後、皿に盛られた生肉を見ながら、


「美味である。おっさん、もっと肉を焼け」


 俺と戦いの女神の現実はこんなものだ。甘さなんてない。

 でも、これは戦いの女神に箸の持ち方や使い方を教えなかった俺が悪い。


 俺は生ビールを飲みつつ、俺の分と戦いの女神の分の肉を焼いた。

 俺の分の肉は俺の口の中に。

 戦いの女神の分の肉は、俺が箸を使って戦いの女神の口の中に。


 そんな俺たちの様子に客と店員がややドン引きしていた。

 客のひそひそ話の内容を集約すると『あのおっさん、キモい』。

 店員の言葉を集約すると『キモいおっさんでも焼肉デートができるんですね』。


 畜生め。

 キモいオッサンの俺が戦いの女神に箸の持ち方や使い方を教え、来月、リベンジしてやる。


 そんな調子で生ビールを何杯も注文し、酔いつぶれてしまった。

 キモいおっさんの俺は戦いの女神におんぶされて帰宅の途に。


「おっさん、いくらなんでも飲み過ぎだぞ。明日も仕事であろう?」

「明日はテレワークだから、ゆっくりできる」

「そうは言っても、やはり飲み過ぎだ。コンビニに行って、酔いを和らげる商品を買いに行くか?」

「大丈夫だよ。それよりも、俺の願い事を聞いてくれ」

「申してみよ」

「箸の持ち方と使い方を教えるから、覚えてくれ」

「承知した」


 帰宅後、キッチンで俺は箸の持ち方と使い方を戦いの女神に教えた。

 酔いつぶれながら教えたのに、戦いの女神は器用に箸を持って扱った。


 これで安心だ。

 来月、あの焼肉店でリベンジできる。


 眠気に襲われてそのまま寝ようとすると、戦いの女神が箸でリビングを指した。


「眠るのならここではなく、リビングで眠れ!」

「わかってるけどさ……あのね、箸で指すのは箸マナー違反だよ」

「何を申すか! キッチンで寝るのは、我に対するマナー違反だぞ!」

「ごめんなさい???」

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