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同居人は戦いの女神さま  作者: あしのクン
シーズン1
15/72

シ、シンジ君!

 台風十五号が発生し、東海や関東に接近中らしい。

 勢力はこの前の台風十四号レベルまで達しない予報だ。

 なにはともあれ、台風十五号の進路方向にあたる地域にお住まいの方は、台風対策を。


 ということで、休日出勤を午前中で終えた俺は帰宅後に台風対策を始めた。

 戦いの女神にも手伝ってもらいながら。

 風に飛ばされそうな置物を部屋の中に仕舞いこんだり、自転車を物置に入れたり。

 家の雨戸を閉めるのはまだ早そうなので、明日にした。


 いまできる台風対策をしたあと、俺はノートパソコンで台風情報を確認した。

 ノートパソコンを覗き込む戦いの女神に台風情報を見せながら説明した。


「その台風情報とやらは嘘ではあるまいな?」

「嘘じゃないよ、気象庁が発表しているんだから」

「一昨日の夜、令和ちゃんは気候を操れると嘘をついたではないか。気象庁が気候を操れるというのは本当だろうな」


 戦いの女神はどうやら気象庁が気候や台風を操っていると勘違いしたらしい。

 戦いの女神がそんな勘違いをしてもおかしくはないかもしれない。

 異世界先に天気予報を伝える組織や情報媒体がなさそうだからね。


「気象庁は気候を操る組織じゃない。これからの気候や気象を調べて教えてくれる組織だ。こんな風に台風の進路や予想される雨量や風向きを伝えてくれる時もある」


 気象庁には他の役割もある。

 でも、ここですべての役割を説明しても、戦いの女神が理解するとは思えない。

 俺もすべての役割を細かく説明する自信がない。てへぺろ。

 なので、気候や気象は季節によって違うとだけ伝えた。これを逃げという。


「承知した。では、なぜ気候や気象はなぜ季節によって変化するのだ? 季節は地球の公転によって繰り返されると申したが、繰り返す目的はなんなのだ? 地球はなぜ公転しているのだ? そもそも地球を公転させたのは誰なのだ? 地球は誰が作ったのだ? そもそもおっさんは……」


 人生、逃げたらさらに踏み込まれることがある。

 俺はそれを経験している。

 踏み込んできたのは、好奇心に火が付いた戦いの女神。

 俺は戦いの女神の質問に答えるべきか、それとも、さらに逃げるべきかを考えている。


 逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ。

 心の中のシンジ君が叫んでいる。

 そうだよな。

 戦いの女神の質問に答えるべきだよな。

 だから、ここで逃げちゃ……。


 いや、こんな壮大な質問に答えられるわけがないじゃん。

 逃げ一手しかないじゃん。

 地球は誰かに作られたわけではないけど、それを説明するのも億劫じゃん。

 ビックバンから説明しないと、地球の誕生を納得させられないじゃん。


 俺は心の中のシンジ君をなだめてから、戦いの女神に冷蔵庫にあったぶどうジュースを献上した。


「いまは飲みたい気分ではないぞ。なぜ持ってきた? それよりも早く我が問いに答えよ」

「戦いの女神、それがこの世界だ」

「?」

「この世界は疑問ばかりだ。戦いの女神は飲みたくないのに、俺がぶどうジュースを持ってきた疑問と同じようにね」

「??」

「一緒にその疑問を解いていこう。大丈夫。俺たちなら疑問を解いていけるさ、きっと」

「???」


 なにはともあれ、みなさんに台風の被害が及びませんように。

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