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同居人は戦いの女神さま  作者: あしのクン
シーズン1
14/72

ワインとビールと

 朝、鏡で自分の額を見ると、右半分が赤くなっていた。

 後頭部に触れてみると、遠慮がちに膨らんだ瘤ができていた。

 どちらも指で触れると少し痛い。


 戦いの女神はサンドイッチを食べながら、たまに後頭部と顎を擦っている。

 後頭部のこぶりな瘤と顎の痛みを気にしているのだろう。


 事の顛末を明かすとこうだ。


 昨夜、俺はシモベ呼ばわりされている鬱憤を晴らすため、令和ちゃんについて嘘を吐いた。

 ネタバラシのあと、怒りが頂点に達した戦いの女神が固めた拳で殴りかかってきた。

 拳は俺の額の右側に当たり、拳に弾き飛ばされるように後ろに倒れ、後頭部を床に打った。

 倒れる最中、俺の足先が戦いの女神の顎を蹴り、足先で蹴られた反動で後ろに倒れ、タンスに後頭部を打った。


 そういうわけで俺と戦いの女神は後頭部に瘤を作った。

 俺は額の右半分が痛み、戦いの女神は顎の痛みを気にしている。

 堂々の痛み分けだ。


「じゃあ、会社に行ってくる。今日も気温が低そうだから、服装を調整して暖かく過ごせよ」

「承知した」


 戦いの女神が沈んだ声で言った。

 俺はなんだか気まずくなって、玄関の外に出た。


 仕事が終わると、俺は酒屋に寄り、いい値段の赤ワインを買った。

 あの沈んだ声が気になったからだ。

 戦いの女神は晩酌に赤ワインを飲むようになったので、赤ワインを贈ろうと思った。


 帰宅すると、キッチンのテーブル一杯に缶ビールが並んでいた。

 戦いの女神に訊けば、コンビニで買い物する時に店員さんを拳で殴らないように渡してあったお金をすべて使い果たして買ったらしい。

 戦いの女神は逃げるように玄関から出た俺を気にし、晩酌の飲む缶ビールを送ろうと考えたそうだ。


 そして、今。

 戦いの女神は俺の贈った赤ワインを嗜み、俺は戦いの女神が買ってくれた缶ビールを飲んでいる。

 金銭的には痛い出費が重なったけど、まっ、いいか。

 俺の仕事の愚痴に、戦いの女神が可笑しそうに笑ってくれているし。

 仕事の愚痴を笑って聞いてくれる戦いの女神に、なんだか救われている気がするし。

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