令和ちゃんと戦いの女神と飛んできた拳と
令和ちゃん。
温度調整、もう少しなんとかなりませんか?
昨日まではあれほど蒸し暑かったのに、今日は凄くひんやり。
余りにも寒くて、スーツの下に冬物のセーターを来て出社しましたよ。
もちろん、同じ部署の後輩に笑われましたが。
しかし、見てください。うちの戦いの女神を。
戦いの女神は部屋の中で毛布にくるまっています。
あまりにも寒くて。
半袖Tシャツにスパッツという出で立ちで毛布にくるまって。
そりゃ寒くて毛布で体をくるみたくもなるでしょう。
……いや、まずはその出で立ちをなんとかしなさいよ。
半袖Tシャツにスパッツという出で立ちは真夏限定です。
そんな出で立ちでは、誰だって毛布で暖まろうと思いますよ。
それ以前に、気温にあわせた服装に着替え直しますよ。
「昨日まで蒸し暑かったから、今日も蒸し暑くなると思っていたのだ」
戦いの女神はどうも先を読むのが苦手のようです。
さすが、異世界先で冒険者たちよりも先に魔王を倒してしまうレベルですね。
俺は着替えを置いてある場所を教え、気温にあわせて着替えるように、きつく、そして、きつく注意しました。
「今夜のおっさんは好戦的だな」
そうでもありません。
単にシモベ呼ばわりされていることを根に持っているだけです。
しかし、きつく注意され、その腹いせに飛ばしてきた拳を避けられ、しょんぼりしてしまった戦いの女神を元気づけさせなければなりません。
戦いの女神は、俺にとって快適に過ごしたい同居人ですから。
「これが令和ちゃんなのか?」
俺はツイッターに投稿されている数々の令和ちゃんのイラストを見せました。
大人な令和ちゃん、子供な令和ちゃん、アイドルチックな令和ちゃん、エロチックな令和ちゃんがずらっと並んでいます。
興味深そうに令和ちゃんのイラストを見ている戦いの女神にいたずらを仕掛けてみます。
令和ちゃんは日本の気候を操れる存在だと耳打ちしました。
「なんと! 令和ちゃんは気候を操れるのか? 昨日まで蒸し暑かったのは、そして、今日は寒かったのはこの令和ちゃんが気候を操ったからなのか?」
俺は営業スマイルで頷いてみせました。
「この者は神なのか?」
俺は営業スマイルで顔を横に振りました。
「神ではないのか! それなのに天候を操れるとは……令和ちゃん、なんたる奴ぞ」
戦いの女神が令和ちゃんのイラストを睨みながら唸りました。
もう、この辺でいいでしょう。
シモベ呼ばわりされた鬱憤は、少しは晴れましたから。
俺は戦いの女神にネタをばらしました。
令和ちゃんは架空の人物。
架空の人物の令和ちゃんが天候を操れるわけがない。
天候は地球と自然の営みがもたらすもの。
しかし、最近は地球温暖化という問題が、と説明していたら、
「貴様ッ! 我を愚弄しおってッ!」
戦いの女神の拳が俺の顔面目掛けて飛んできまして……。