シモベ
三連休最終日の夜。
みなさま、どのようにおすごしですか?
俺は自宅で戦いの女神とお酒をたしなんでいます。
俺は缶ビール。戦いの女神は赤ワイン。
戦いの女神は百均で買ってきたワイングラスに赤ワインを注いでいます。
赤ワインを相当飲んでいるはずなのに、戦いの女神が酔ったような様子はない。
ほどほどに酔っているのは俺のほうだ。
ノンアルコールワインなのか、それとも実はぶどうジュースなのかと確認するためにボトルを手に取る。
アルコール入っていました。本物の赤ワインでした、はい。
戦いの女神は酒に強いのかね。
俺は明日からまた仕事だ。
深酒をせず、そろそろ明日に備えて眠りにつかないと。
最後の缶ビールを飲み干し、戦いの女神におやすみの挨拶を告げて、寝所の自家用車に向かうために立ち上がった時だった。
「もう、よいであろう」
戦いの女神が可笑しそうに笑った。
「なにが?」
「これから自家用車に向かい、寝るのであろう? もう、それはよいではないか。おっさんも家の中で眠るがいい」
この家の主は俺なんだけどね。
ただ、戦いの女神は俺の寝室で寝て、俺は自家用車で寝ると決めたのも俺なんだけどね。
そのような決め事を決めた理由はこれだ。
男女の火遊びに発展しないため、そして、触らぬ神に祟りなし。
「我はもう警戒しておらぬ。寝静まった時に襲ってくることをな」
上目遣いの戦いの女神。
言葉の意味がわかって、慌てふためく俺。
「最初から襲うつもりはないって」
「我が槍を盗み、寝首を掻くために夜襲を仕掛けてくることを警戒しておった」
そっちかよ。
「しかし、おっさんはそのような卑怯な手段を取らなかった。そればかりか、我のための食事を用意し、家の中にある物すべてを説明し、このような心地よいパジャマを買い与え、今日はコンビニにて買い物の方法を教えてくれた。おっさんは忠義の高きシモベぞ」
「俺、お前のシモベなのか?」
「おっさん、今夜から家の中で眠るがいい」
「なあ、俺はシモベなのかって?」
そういうわけで、シモベは今夜から家の中で眠れることになりました。
ありがとうございます。
それでは、また明日。