酒は飲んでも飲まれるな
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酒は飲んでも飲まれるな。
飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。
というわけで、宅飲みしている俺だが、飲み過ぎもよくない。
今夜は飲み過ぎたせいか、幻視している。
目の前で無駄に肌の露出度の多い鎧を着た女性が仁王立ちしている。
仁王立ちしている女性が持っているのが、無駄に長い槍。
「貴様ッ! 無礼であろうッ! 我は女神ぞッ! ひれ伏さんかッ!」
幻聴が聞こえた。
ちなみに俺を貴様呼ばわりした女性は年齢が二十代くらい。
ウエーブのかかった長い髪はブロンド色で、俺を睨んでいる目はエメラルド色。
ヨーロッパの映画にヒロインで出てきそうな端麗な顔立ち。
鎧を着ている身体は細いものの、露出している両腕や両足は筋肉が引き締まっている。
「無礼であろうッ! ひれ伏さんかッ!」
また幻聴が聞こえた。
今夜は飲み過ぎたようだ。
明日に備えて、さっさと眠ってしまおう。
「どこへ行くッ!」
女性の怒声が聞こえたが、幻聴、幻聴。
俺は缶ビールの空き缶をごみ箱に捨て、水を飲み、寝室に入って電気を消し、布団に潜り込んだ。
「貴様ッ! 急に暗くすると驚くではないかッ! 夜襲を掛けるつもりかッ!」
今度は女性の切り裂いたような悲鳴が聞こえたが、これも幻聴、幻聴。
酒は飲んでも飲まれるな
飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。
酒飲みのみんな、俺との約束だぞ。