2話:御前会議
――建国紀4581年 1月 イセラ王国――
人々が寝静まった夜、王都を見渡せるイセラ王城内の一室。
国王、宰相、副宰相と、各省庁の大臣及び補佐10名以上が、
わずかに消え残った数本の蝋燭と月明かりだけで輪郭を浮かび上がらせていた。
おそらく十分以上、誰も一言も発さず重苦しい空気を放つ中、
目を瞑って黙り込んだ国王のもとに傅いた宰相が、カラカラに乾いた口を開く。
「・・・国王様。」
「・・・・・・ああ、わかっている。
まさか私の代で・・・とは思ったが、やむをえまい。
宰相よ・・・・まずは直属の諜報部隊を出動させ、魔王が復活したとの情報の正確性を急ぎ精査してくれ。
勇者召喚は慎重に行う必要がある・・・。確実であることが確認でき次第、勇者召喚の儀を執り行う。」
「っ、承知しました・・・。」
「さて・・・・・各省庁大臣以下よ、今回の件は取り急ぎ口外無用!
魔王復活の情報の正確性が確認でき次第改めて召集をかける!
それまでに復活に備えた各省庁での対応をまとめておくように!
以上、解散!」
新しい蝋燭の明かりがつくとともに、ざわつきを取り戻した会議室ではため息をつく者もいれば苛立つ者、補佐官と今後について話し合う者など、今回の件に関して三者三様の反応を見せていた。
やがて一組また一組と会議室を出ていく中、宰相が国王に話しかける。
「ラインハルト様、ご決断を・・ありがとうございます。」
「・・・うむ。儂ももう若くはない、もう数年したら息子らに引き継いで儂は隠居生活をと思っておったが、そうもいかんようだな・・・。これから何年になるか、最後に大仕事を覚悟せねばならぬか・・・。
・・・やむを得ん。過ぎた話はもうよい。今後について考えねばならぬな。
召喚の儀は、王族内で最も魔力の高いものが行うのが通例。
・・・・儀式を行う場合は、当代一の魔力量を持つわが三女、アシュリーを・・・任命することになろう。」
会議より二週間後、王家直属の諜報部隊により、数千キロ北東の国で魔王復活、すでに
小国二国が滅ぼされたとの情報がもたらされる。
王国は周辺国とも協議の上、近く召喚の儀を執り行うこととなった。
「お嬢様、大丈夫ですよきっと!」
「メフィいい・・お父様、急に呼び出して何かしら・・・」
「うーん、なんでしょうか。・・・また縁談とかですかね?」
「いやですわいやですわ!三女の縁談相手なんてどこの国でも碌な人がいないですの!
私、結婚するなら物語の王子様みたいな方がいいですわああ」
「まあまあ・・お嬢様も18歳といい年齢ですし・・・それに縁談と決まったわけでもありませんし・・
さ、国王様の執務室につきましたよ。私は外で待ってますから。」
「いきたくないうう「・・・失礼いたします!アシュリー様をお連れいたしました!」
・・・ガチャリ
「どうぞお入り下さい。第三王女殿下。」
「・・・失礼いたしますわ。」
「よく来たアシュリーよ。ああ、スチュワード、お前含め話が終わるまでは人払いをしてもらえるかな。」
「御意に。」
「さて、今日お前を呼び出したのは、重大な話があるためだ。」
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「それでは、失礼いたしますわ。お父様・・・いえ、陛下。」
・・・バタン
「お嬢様!どうでしたか?」
「・・・・・・・・・・」
「お嬢様?具合でも悪い・・・でしょうか?」
「・・・メフィリア。今は少しそっとしておいてもらえるかしら?
ああ、今回の話、縁談のようなものでしたわ。
それも、とびっきり最悪の。」




