1話:イセラ王国
――建国紀4568年 イセラ王国――
「さあてレイとレナよ。お話の時間ぞえ。」
「「わーい!ばあちゃ!」」
「今日は何のはなし!」
「また妖精さんの話かなあ?」
「ほっほ、元気じゃな。そうじゃのう、今日するのは勇者の伝説の話かのう。」
「なにいそれ!」
「怖い話はいやあ・・」
「怖くないぞい。かっこいい勇者の話さね。」
「「聞きたいはやく!」」
「ほっほ。それじゃあの。
遥か昔、この世界に突然魔王が現れたんじゃ。魔王というのは大勢の強い魔物の軍勢を連れていてのう。
それで多くの人々が襲われたり、戦ったりして死んでしまったんじゃ。
人々と魔王の軍勢は激しい戦いを繰り広げておったらしいのう。」
「ばあちゃ、はるか昔ってどのくらい前なの?」
「何千年も前の話じゃのう。」
「ばあちゃ、それ、怖い話じゃない?」
「ほっほ、まあ聞きなさいな。それで人々は随分負けてしまってのう。いろいろな国が滅ぼされてしまったんじゃ。そんな人々が困っていたところにある時預言者が現れてのう。王様に違う世界から勇者を呼ぶようにと神からのお告げを伝えたんじゃ。
そしてとある地方の言い伝えでな、その地方のどこかで昔むかしに召喚が行われていたという話が見つかったんじゃ。
そこで王様は人々にこの地方で遺跡を見つけたら金貨十万枚の懸賞金を出すとお触れを出したんさね。」
「金貨十万枚ってどのくらいー?」
「わしら庶民には想像もつかんのう。毎日遊んでもお貴族様のように一生暮らせるくらいじゃのう。」
「へー!すごい!僕も欲しいなあ・・」
「ほっほ、それで夢を見た人々が大勢その地方に住んでのう。魔物を倒して森を切り開いたり、遺跡を探索したり、冒険者というお仕事が生まれたんじゃ。とにかくいろいろな町ができて発展したらしいのう。
それで数年たったある日、とある最強と呼ばれていた冒険者の一行がおってな。
ついに遺跡の奥深くで召喚陣を見つけるんじゃ。何でもその遺跡の魔物はたいそう強かったらしい。
そして冒険者が召喚陣に触れたとき召喚が発動してのう。初代勇者が召喚されたんじゃ。
遺跡から出た勇者と冒険者達は王様のところへ行くんじゃがの、そこでなんと王様は金貨のお触れをなしにしようとしたんじゃ。」
「ええ!ずるい!」
「なんでも数年続いた魔王の軍勢との戦いでお金も無くなっていたらしいがのう。
とにかくそれで怒ったのが冒険者よりも勇者の方じゃった。勇者と冒険者達は旅の途中で仲良くなっていたらしくてのう。
怒った勇者と冒険者一行は王様を無視して魔王の軍勢に立ち向かっての。数年の攻防の末、ついに魔王を倒すんじゃ。
戻ってきた冒険者と勇者は、それはそれは人々に大歓迎されての。
遺跡のあったその地方に国を作るんじゃ。
ちなみにその冒険者一行のリーダーがイセラという名前での。」
「「え!僕たちが住んでるのってイセラ王国だよね!」」
「そのとおり。わしらの国は、冒険者と勇者様が作った国さね。
そしてイセラ様と勇者様は結婚するんじゃ。」
「「え!ゆうしゃ様って女の人だったの!」」
「いいや、冒険者のイセラ様が女性だったんじゃ。」
「かっこいい!レナもぼうけんしゃ様になりたい!」
「レイも!」
「イセラ様は最強と呼ばれていたらしいからのう。頑張ったらなれるかもしれんのう。
でもこの話には続きがあってのう。そんなイセラ様のもとに、お告げがあったとあの預言者が現れるんじゃ。預言者曰く、勇者様はこの世界になじめる体ではないらしくての、魔王を倒す役目を終えた後は元の世界に帰らなければ死んでしまうというんじゃ。
それで勇者様は結婚して一月も立たないうちに、召喚陣に乗って帰ることになったんじゃ。
勇者様は必ず帰ってくると言い残してイセラ様のもとを去るんじゃが、帰ったと同時に召喚陣の力が失われてしまってのう。それっきり帰ってくることはなかったんじゃ。
イセラ様は勇者様を生涯待ち続けたらしくてのう、王都の広場には待ち続けるイセラ様の像が立っているぞい。」
「そんなの悲しいよお・・・。レナ、泣いちゃうよお・・・。」
「大丈夫、お兄ちゃんがレナとずっと一緒にいるよ!」
「うええん、おにいちゃああ」
「レイはレナを守ってやるんだぞえ。」
「うん、僕が守る・・!」
「頼もしいさね。さて、この話にはちょっとだけ続きがあっての。
実はその後何百年も先、魔王が再び復活することになるんじゃ。」
「「ええ!それって大丈夫なの・・?」」
「そう、一度は使えなくなった召喚陣なんじゃが、その後何百年かして再び使えるようになっておったんじゃ。そしてそこから、魔王が復活するたびにこの国では勇者を召喚するようになったんじゃ。
ちなみに、今から九百年くらい前にも魔王が復活しておっての。その時の勇者で6代目くらいだったらしいのう。」
「ばあちゃ、それって・・・そろそろ復活しちゃうんじゃないの?」
「レイ、それは分からないさねえ。魔王の復活と比べれば人の一生は短いさね。
それに何かあっても、勇者様がどうにかしてくれるさね。」
「うん・・・!そうだよね!」
「ばあちゃ、その・・・勇者様が負けたことはないの・・・?」
「一度もないから大丈夫さね。次に魔王が現れても必ず勇者様が倒してくれるさね。」
「「ならよかったあ・・・!」」




