衝撃
夜が更けた幻想郷。静かな自然の中に佇む家屋の類に、近代的なものは殆どなく、あるのは昔ながらのかやぶき屋根の木造住宅、それから田畑が果てしなく続いている。見渡す限りの田園風景。鈴虫の鳴き声が響くその中を、歩く者があった。白い艶の乗った長髪、そのところどころには赤いリボンの装飾が見られ、服装は上に白いYシャツ、下は赤くゆとりのあるズボンを履いて、これも札のような装飾が見られた。その瞳は赤く、美しい。
その隣を歩く、もう1人の女性。こちらの女性は対照的な印象の服装で、青系統の色をベースにした服装に身を包んでいる。頭には帽子の様なものを被り、頭髪は隣を歩く女性の
ものとは何気にたがわぬが微妙に淡く青みを含んでいる。
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妹紅「.....。」
私は、藤原妹紅。今は幻想郷の真っただ中にある、田園地帯を歩いているところだ。今日は博麗神社の宴会に参加して、今は帰っている途中。普通なら”異変”と言って、何か事が起きてそれが無事終息してから祝勝会も兼ねて行われるものだが、いかんせんこの世界の奴らは酒好きが多い。気まぐれで宴会をやることもしばしばある、まあ本来宴会っていうのはそう言った形のものかもしれんが....。
途中まで大勢の奴等が居たが、別れて皆それぞれ帰路についた。今はこうしていつも一緒にいる上白沢慧音と共に、夜道の中を歩いて帰っている。この時間は何気ないものであるが、この落ち着きが私にとってかけがえのないものだ。
妹紅「今日の宴会も、盛況だったな。」
慧音「ああ。」
酒の余韻を楽しみつつ、表情に出すことなく私達は会場を後にし、竹林の前まで足を運ぶ。私はわかるが、慧音も何故行くか、だって?決まっている、2次会の設定を私がちゃんとしておいたのさ。ぬかりはない、どうせ楽しむなら夜が明けるまで楽しまなきゃ損ってもんだ。今回の宴会は輝夜はいなかったし、鉢合わせることは無いし他に水を差す奴もいない。じっくりと楽しむとしよう。.....ん?
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2人の目線の先には、光り輝く星々が見える。その中でひときわ輝く流星が直線の軌道を描き、その中を駆けていた。青く輝く軌跡を尾に引きながら、それは次第に高度を下げていく。それも遠目から見てもかなりのスピードで、妖怪の山、人里、霧の湖の上空を通過。そして紅魔館の上を通り過ぎようとした、その時であった。その流星が、盛大に爆ぜた。幻想郷の上空に、ド派手な大爆発が発生したのである。
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文「はあ....。トクダネ....、どこかに落っこちてないでしょうか...。」
どうも清く正しい「文々。新聞」発刊者の射命丸文です。今日も博麗神社で大宴会、盛況な盛り上がりでした。大いに盛り上がり、そして色々な話を聞いて回ったりしたのですが、どれもトクダネには程遠い情報ばかり....。いかにも幻想郷らしいと言うか、そういうような話ばかりで、そもそもこの世界が可笑しいくらいに力に溢れているからどのような事態でも容易に起こってしまうと予想出来てしまうのです....。故に、トクダネを集めるのは至難の業...。何処かの誰かが異変でも起こせば、それがトクダネになるのですが...。いえいえ、別に平和が壊れればいいと言っているわけではありませんよ?
ドッ..................!!!!
文「あや.....?」
..........オオオオオオオオオン..............!!!!
今、私の気のせいで無いのであれば、とてつもない衝撃が幻想郷に走ったと思わざるを得ません。壁に貼られている羽目殺しの窓はピリピリと音を立て小刻みに揺らぎ、土片が天井から軽くパラパラと落ちてくる。妖怪の山に響く衝撃の残響、このレベルの衝撃は何かが起こった証拠なのだと、私は感じました。つまりこれは......。
文「トクダネ!!」
私はそう言うや、一眼レフを首にかけメモ帳筆記具を引っ掴み、疾風の如くその場から飛び立つのでした!