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東方 外来人物語  作者: 佐藤練也
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なにゆえ、そこに

そう。アレは忘れもしない、ある夏の暑い夜の出来事だった。俺が幼い頃...。そうだな、小学校4年の時だった。あまりにも突飛な話だとは自分でも思う、しかしこれは紛れもない現実....。いや、誰がその場に居てこれをあくまでも夢と言い張ることが出来るのか。”それ”の確かな質感と、重量。闇の中でも僅かな光に照らされれば、その外殻は煌めく。まるで暗闇の中、俺に気付いてもらうためこちらに信号を送ってくるかのように。

 

 

暗い竹林の中で佇む俺の前に、それは突然上空から不意を突くように落ちてきた。煌めく外殻に包まれ、その手に持てばわかる重量は手にズッシリとくるような重さだった。落ちてきた先、その方に目をやった。そこには、この竹林に似つかわしくはない存在が、まるで俺を見下ろすかのようにそこに居た。赤く煌めく外殻から突出した角を持ち、背中には昆虫を彷彿とさせる翼を広げ宙に浮いていたのである。明らかにその外見的な特徴は、赤いカブトムシと言った感じであった。しかし俺はその容姿を知っていた。

 

 

練也「......。アレは....!」

 

 

俺を一見して気が済んだのか、空中で浮遊するその赤いカブトムシはその後一瞥もくれずにその場から飛び去って行った。俺が手に持つそのきらめきを放つ1つのものだけが、この出会いの証明....。あの赤いカブトムシが残したものを手に持ち、そしてまじまじとそれをもう一度見た。......。

 

 

練也「アイツと、これは良く知っている.....。まさにこれは......。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

それから時は流れ、社会人となり近所にある神社の下男として働いて精を出し、少ない規模ではあるが社会貢献活動などを継続的に行うことに注力をする生活を送っていた。神社の雰囲気と言うのも個人的には好きな雰囲気ではあったし、そこで働かせてもらえることにありがたさというか、人にだけではなく目に見えない存在にも触れることが出来るというオカルトチックな部分にも、興味を持つようになっていた。

 

 

「佐藤くん、今日もお疲れ様。」

 

練也「はい、神主さん。」

 

俺、佐藤練也は今年で27歳を迎える社会人だ。この神社の奉務を承り、かれこれ9年くらい経つ。神社が就業場所なだけあって、神主の方々も厳しく業務もなかなか多忙ではあるが、やりがいもある、職場はすぐ隣、そして休みもたくさんある上に職場の人間関係も良好、友達もいる。唯一身近で思い当たる無いものとすれば、彼女ぐらいだろうか。

神主さんと一通り話を交えてから、帰路につきすぐ隣にある自分の家へと入る。

 

 

練也「さて...。今日は、呑みに行ったり、運動したりだな...。社会人は忙しいぜまったく....。」

 

 

ぼやくようにつぶやき、部屋の鏡の前で自分の顔を見る。昨日剃った髭の剃り残しは無い、相変わらずの天然パーマ、常時怒っていると勘違いされがちの厳つい顔つき、精悍な体格。いつも通りの俺の姿が、鏡に映し出された。

 

 

練也「.......。」

 

鏡の側に置かれていたバックに目を通し、その中から煌めく何かを手に取ろうと近寄る。外出する前には決まってこの挙動を、いつの間にかするようになってしまった.....。なんなんだこの癖は。

 

 

練也「なあ.....。.....なんで俺なんだよ.....。他にもっと適任者がいるんじゃないか?」

 

 

手に持ったものに対して問いかけるが、その答えが来るはずもない。相手は無機質な外殻に包まれた、”ベルト”なのだから。自分で分かっていても、どうしても気になってしまうこの奇妙な縁.....。俺は、あの小学生の頃の記憶が、今だ頭から離れずにいた。

 

 

練也「.....カブトゼクター.....。」

 

 

自分が知る名前を、....小学生のころからの憧れだったヒーロー的存在の相棒。その名前を虚空に向かい呟いた。様々な東方projectのグッズやヒーローのグッズが所狭しと並べられている部屋を見渡してから、俺は友人達との約束の為に家を後にした。

 

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