事務員は上司の〇〇〇を目撃するのか!?
星歴1239年。
私の名はモースリー・ジル。
ナダ共和国の首都ノウムベリアーノ在住の23歳。
現在は学校の先輩達が経営している事務所で働かせてもらっている。
団長のリリィ先輩と副団長のユリウス先輩は学校でもなかなか有名な『変人コンビ』だった。
男性恐怖症の団長を副団長が10年近くかかって口説き落とし、ようやく先日交際が始まったらしい。
正直、まだ付き合っていなかったこと自体驚きだけど……
ある日の事、団長たちの姿が見えないなと思い探しているとミーティングルームから声が聞こえる。取り込み中らしい。
とりあえず用事だけでも軽く伝えておこうと扉に近づくと……
「ちょっとユリウス、振りが甘いわよ」
ああ、団長がまた副団長を叱っている。
基本的に副団長は尻に敷かれるタイプだ。
まあ、それでいて彼に頼る所はきっちり頼る辺り微笑ましいのだけれど。
「そ、そうかな?」
「ええ、『腰の振り』が甘いわ。もっとしっかり思いを込めて振りなさい!そんなんじゃ私は満足しないわ」
「なっ!?」
きゃぁぁぁぁぁぁ!!
ちょっと団長と副団長ったら何やってるのよぉぉぉ!
私は今、上司たちの濡れ場に遭遇しかけているじゃない!!
いや、確かにお付き合いを始めたばっかりだし健康的な男女なんだからそういう気持ちもあると思うの。
うんうん、健康的だもんね。
団長って男嫌いだけど副団長の事は例外で結構距離近かった人だし。そりゃ付き合いだしたら燃えあがるわよね。
ああいう貞淑そうな人に限って一度覚醒するとすごいって知り合いから聞いたもの。
まあ、私の友達のお姉さんの同僚、そのおばさんの友人が話してたことだけどね。
うーん、これは風紀的には良くないけど……個人的な興味としては尽きないわぁ。
あの団長がどんな顔して副団長とあんなことやこんな事をしてるんだろう。
可愛い顔を想像しただけでキュンキュンしてくるじゃない。
ちょっと覗いて……否、これは覗きではないわ。
職場の風紀を守りたいという私の職場愛。そして『リサーチ』だわ。
「うーん、やっぱりイマイチね。ここはやはりジルでも呼びましょうか」
「!?」
嘘!まさか私が覗こうとしていることバレた!?
一流の武芸者は気配を読むという。
そう言えば団長は事務仕事が多いが格闘家としての一面も持つ。
「ジル君を巻き込むのかい?」
「ええ、あの娘には素質があると思うの。あんたも参考になるんじゃないかしら。一度見た事があるけど中々のものだったわ」
えぇっ!ま、まさか数節前に別れた彼氏とのあれやこれを『見られていた』!?
どういう状況!?え?理解が追い付かない。
「あの娘は絶対こういうの好きよ。断言できる」
いや、人をイケナイ娘みたいに言わないで。
私の何を知っているの!?
「みんなが見たらきっと喜ぶわ」
公開プレイ!?
「そ、そんなのダメですよっ!!」
思わずミーティングルームの扉を力強く開け放って大声を出してしまった。
そこには腰みのをつけ、腰を振りながら踊る副団長。
そして両手に腰をおいてその様子を監督する団長の姿があった。
「あら、ジル。一体どうしたの?」
「えーと……これはその……何を?」
「今度、母が経営している孤児院を慰問するんだけど、そこでダンスを見せたらどうかなって思ってね。それで、ユリウスに練習をさせているの」
「ダ、ダンス……」
「いやはや、社交ダンスなんかは経験があるがこういうのはあまりね……」
「情けないわね。ねぇ、ジル。あなたユリウスにダンスを教えてあげてくれないかしら?学生時代、ダンス愛好会で踊っていたでしょう?一度見た事があるけどあなたの腰の振りは情熱的で感動したわ」
「わ、私の……」
「ジル?」
「私のキュンキュンを返してぇぇぇぇ!!!」
書いてみたかった勘違い系。
作中のリリィとユリウスのカップルは交際僅か1か月で結婚した猛者なのでこれは時系列的に交際開始直後です。