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魔剣士と終わりゆく世界  作者: 巫 夏希
第二章 食の都の白き女神
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第二章16 世界キャラバン連盟①

 それからのことを話すと長くなる――と私は勝手に思っていた。しかし、意外とそれから行ったことは然程難しいことではないし、長々と語ることでもなかった。

 ラフティアにはこれといった観光地がない。言うならば食べ物に全振りしているのだ。ともあれ、向かう場所については既に決まっていたし、困ることでもないのだがね。


「……その世界キャラバン連盟とやらは、いきなり行っても話を聞いてくれるものなのか? もしかして何かしらコネクションがないと駄目だとか……」

「そんなことはないわよ」


 即答とは恐れ入った。

 まさか私が話す予定の言葉を察知していたか? だとしたらそれはそれで大した物だがな。


「さっきも言ったけれど、『デバイス』を持っていれば何処でも簡単に情報を仕入れることが出来るのよ? そんなところが直接出会う場合は何かしらのコネクションが要ります、だなんてハードルの高いことをする訳はないわよね」


 そりゃ、まあ。

 言いたいことは分かるのだが、これから向かう場所についてはそれなりにクリアーにしておいた方が良いだろうし、きっとそれはウルだって理解こそしているだろうが、面倒臭い人間だとは想っているのかもしれないな。

 そんなことは周知の事実だったかもしれないが、それはそれ。


「……世界キャラバン連盟は、このラフティアに本拠地を構えていて多くの商人はわざわざラフティアに用事を作ってまでここにやって来ることもあるぐらい、重要度は高いのよねえ。何せ、『デバイス』では分かり得ない情報だってあるのだし、それぐらいは安い物なのかもしれないけれど」

「『デバイス』での連絡はあくまでもマストではない、と?」

「『デバイス』が世界何処でも通信出来るというのならそれも可能でしょうけれど……、生憎世界はそこまで発達していなければ平和でもない。何処かで紛争なり戦争が起きていれば、その場所に通信網を発達させることは出来ないものよ」


 まあ、先ずは作業員の安全を取るだろうしな……。安全を捨ててまで世界全体に通信網を広げる程、傲慢でもないだろうし。

 暫く歩いていると、ウルはある場所で立ち止まった。

 そこには、石で出来た立派な建物があった。高い天井の上にはそれも石で出来た看板が掲げられていて、そこにはこう書かれていた。


「……世界キャラバン連盟……」

「そう。ここが数多の商人をまとめ上げ、世界の様々な情報を常に仕入れている……商人にとっては切っても切れない関係にある、そんな場所よ」


 ◇◇◇


 世界キャラバン連盟、その本部に足を踏み入れる――一体どんな場所なのかとは思っていたが、意外と中は静かだった。

 もっと冒険者のクエスト受付みたいな感じで混雑を予想していたが、まあ、静かなのは悪いことではないからそれは良い。


「……ここに、様々な情報が集まってくる、と? 一体どんな力があるんだか……」

「あら、またアンタかい」


 入り口の前に、一人の女性が立っている。白い服は身体のラインを隠すほどにたっぷりと余裕がある作りになっている。そして、顔も殆ど隠れているためか、ミステリアスな雰囲気を醸し出していた。

 ウルは女性に近付くと、両手を広げ――そのまま抱きついた。


「あらあ、久しぶりねえ……ミミ。何というか、そのミステリアスな雰囲気も昔のままね。変わっていないことは良いことよ。それともあなたは……未だに変わることこそ素晴らしいと思っているのかしら?」


 ウルがそう話しながらもずっと抱きついているので、ミミは多少鬱陶しくはないかと思ったが、やはりそのようで強引にウルの身体を引っ剥がすと、乱れた服装を整えながら話を続けた。


「……人間は生きていく上で常に変化を求め続けなければならない。そうやって人間は数多の危機を乗り越えてきた。ならば、そのためには情報が必要だ――それは世界キャラバン連盟の創設に携わったあるメンバーの言葉よ。私はこの言葉は、かなり真剣に受け止めるべきものだと思っている。人間は変わっていく生き物で、変わっていかなければ時代について行くことは出来ないのよ」

「どんな情報でも仕入れるようになったのは、そういう歴史があったから……なんだったっけ? いずれにせよ面白い考え方よねえ、それを否定するつもりはないけれど、諸手を挙げて肯定するかと言われるとそれはそれで話が別なのよね」

「……ウル、お前はいつも変わらないな。いや、或いは少しずつ変わっているのかもしれないけれど……」

「それは誰だってそうよ」


 ウルはゆっくりと歩きながら、話を続けた。


「誰だって、昨日と今日が同じことは有り得ない。仮にパターン化した生活であったとしても、何処かが違うことはある。全て同じな生活を毎日送ることは適わない……だからこそ、人間というのはここまで生きてきたのかもしれないけれど」

「難しい考え方を時折してくるから、お前と話すのは飽きない。……人を惹きつける力というのは、そういったところにあるのかもしれないな」

「あら、そうなのかしら? 褒めてくれてどうも有難う。今度は是非私の舞台に来てくれるかしら?」

「お前のステージはいつも満員御礼だ。なかなかチケットを購入することは出来ないんだ。それは本人であるお前が一番理解しているものとばかり思っていたが……違うのか?」

「私も本当はチケットをプレゼント出来ないか考えたこともあったのよねえ……。でも、それは出来ない約束なのよ。やっぱり楽しみにしている人はそのステージの観客席に収まりきらないぐらい居るのよ。そんな人達のためにわざわざ用意してくれた席だというのに、それを個人の欲望のだけで知り合いに明け渡すことは許されない。これには私一人の感情では動くことは出来ないのよ。全く、残念なことではあるけれどね」

「お前のステージはいずれ見に行くよ。……だが、それよりも先にお前が落ちぶれていたりしてな? まあ、今のところそのような情報はこちらには入っていないが……」


 ミミは踵を返す。


「で、今日は何の用事だ? 世界の情報を取り扱う、この世界キャラバン連盟本部に足を運んだんだ。きっと何かしら……欲しい情報があるから、ここに足を踏み入れたのだろう?」


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