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最終奥義

 打ちっぱなしのゴルフ練習場。

 無蔵はゴルフクラブを手にしたまま、打席に備えつけの椅子に腰かけている。むろん、袴ではなくゴルフウェア姿だ。

「~というわけで、出場権を勝ち取りました!」

 文彦は息を弾ませている。

 予選が終わるやいなや駆けつけてきたのだ。

「ぜひ、大会の出場許可をください!」

「ふ~む、こんな大会がほんとにあったとはのう」

 無蔵にはそこまでの関心はなさそう。

「わが門下は原則他流試合は禁止。しかしこの大会だけは例外を認めてください!」

 文彦は熱く訴える。

「破邪神拳が天下一であることに疑いの余地はありませんが、あらためてその古今無双の強さを世に知らしめるよい機会ではないでしょうか」

「わしは他流試合禁止の原則を生涯厳しく守ってきた。軽はずみに他流と拳を交え、血気にまかせて殺めてしまうことを避けるためだ」

 無蔵はいつもの師匠っぽい感じで、とうとうと語る。

「だが後悔もある。もっと強い敵とも闘いたかったという。おまえはわしのぶんまで自由にするがよい」

「ありがとうございます!」

 文彦は深々と頭を下げる。

「しかしこの大会はさすがに強豪ぞろい。もちろん万が一ですが、不覚をとる可能性も皆無ではありません。……今のままでは」

 緊張で息を飲みながら、

「無理は承知で特別に伝授していただきたいのです。正統後継者のみに伝えられる一子相伝の最終奥義〈破邪雷神拳(はじゃらいじんけん)〉を……!」

「ん? わしはそんなの使えんぞ?」

「え? でも師匠は正統後継者では?」

「そうじゃが、あの技は特殊でよくわからなくてのう。親父もちゃんとはできてなかったみたいじゃし」

「そうですか……」

 がっくりとうなだれる。

「それほど覚えたければ、奥義書を見て自主稽古すればよかろう」

「え、お貸しいただけるんですか? 自分はまだ免許皆伝しておりませんのに。秘中の秘である奥義書を……」

「べつにかまうまい。文句いう奴もおらんし」

 椅子から立ち上がり、スイングマットの上でボールをセットしながら、

「まあ、破邪魂で頑張ってこい。わしはその日は大事なゴルフコンペがあるから大会には行ってやれんが」

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