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第百四十六話 正しい道はどこにもない

プログレス国へと向かう旅、先はまだまだ長い。だが行ったところでヴァンパイアを倒す魔法が見つかるだろうか、一度は消滅した魔法だから何も残っていないかもしれない。それにヴァンパイア側の動きも気になった、フェリシアともしばらく会っていない。


ヴァンパイアを友人の子供たちとして可愛がっているフェリシア、俺がしようとしていることを知って酷いと思っているのかもしれない。だが、ヴァンパイアは基本的に危険な生き物だ。そうでない者がいることも知ったが、あれは忘れがたい出来事だった。


「レクスさん、レクスさん。そんなに唸っていると道を間違えますよ」

「えっ、ディーレ。……そうか、こっちの道か」

「レクスったら、ぼーっとしちゃって。どうしたの?」

「私には分かります、ずばりフェリシアさんのことを考えていましたね!!」


つい考え事をしていたら、分かれ道を間違えて進むところだった。ディーレは優しく指摘してくれるし、ファンは心配しくれるがミゼは違った。


「…………なんで分かるんだ、ミゼ」

「そこにリア充の気配がするからでございます、でも最近はお見かけしませんね。レクス様もリア充を返上でしょうか、どうかそのまま賢者にでもおなりください」


「…………お前の言っていることの意味は分からんが、なんとなく言う通りにはなりたくないな」

「何をおっしゃいます、賢者ですよ。レクス様なら、大賢者になることだって可能でしょう」


「フェリシアと別れたら賢者になれるなら、そんなものにならなくてもいい」

「賢者の反対は愚者ですが、恋に生きる人たちって、確かにある意味ではそうなのかもしれませんね」


「訳の分からない話をして、一人で納得してそれでどうなる」

「てへぺろ、どうにもなりません。でも独り身の私としては、人の別れ話は密の味でございます」


意味はよく分からないがミゼが面白がっているのだけは分かる、俺は情け容赦なくミゼの額をぺちんっとはじいた、ミゼはまた地面を転げまわって何か言っている。


「目が――!!目が――!!封じられし太古の神が――!?」

「あっはははっ、ミゼっていろんな神様が好きだね」


そんな転がるミゼと喜んでいるファンは放っておいて、道の様子や周りの風景から、俺は分かれ道を再確認する。少し前の村で聞いたとおり、プログレス国はこっちの道でいいらしい。しばらくして満足げなミゼを抱えて、俺たちは正しい道へと戻った。


「レクスさん、行ってみなければその先のことは分かりませんよ」

「そうだな、まずはプログレス国に行かないと始まらない。だが、ついいろいろと迷ってしまう」

「考え過ぎなのかも、レクスは意外と慎重だよね」

「レクス様は間違えたことがまだ少ないのかもしれません、だから正しいかどうかを悩むのでしょう」


ミゼが珍しくまともなことを言う、そうすると俺は反論したくなった。そんな俺にディーレやファンが、その後に続いてそれぞれの意見を言いだした。


「俺だって間違えたことはいろいろとあると思うぞ、…………白金の冒険者になったことだってそうだ」

「でも白金の冒険者になっても、指名依頼などがある反面で、国立図書館への出入りなどの恩恵を受けています」

「そうだね、冒険者ギルドからの信頼も高くなるから、いろんな場所に出入りできるみたいだし」

「白金の冒険者もなって本当に悪いことは少ないように思えます、レクス様にはまだ経験が足りないんですよ。まだ17、あと少しで18歳でございますから」


確かに白金の冒険者で優遇されていることもある、そう考えるとこの身分を貰ったのは悪いことではない。それに俺はまだ17歳だ、経験と言われると圧倒的に足りない。


ディーレが俺より一つ下で、ファンに至ってはもうすぐやっと1歳だ。だが、ミゼがそんなに経験豊富な生き方をしているだろうか。


そんなことをしていると霧が出てきた、最初はごく薄いものだったが、次第に仲間たち以外のものは何も見えなくなった。


「なぁ、いろんな意見を聞いて考えさせられるんだが、それにしても俺たち迷ってないか」

「そうですねぇ、道がなくなっています。僕たちは街道を歩いていたはずですが」

「これって魔法って感じがする、僕たちを囲んで魔法の気配がするよ」

「えっ、久しぶりに真面目な話なんかしている間に、一体何の魔法なんでしょうか?」


「不思議な感覚だな、『(ヴィジョン)』のみせる幻によく似ている」

「困りましたね、どなたの仕業でしょうか」

「危険な感じはしないよ、そのまま導きのままに歩いていくと良さそう」

「ファンさん、大丈夫なんですか。信用してますからね、……映画みたいに化け物がでないといいですけど」


俺たちは森の中に迷い込んでいた、だがあまり危険な感じはしない。森の木々からそんな感じを受けるのだ、確かに俺たちをどこかへ導こうとしている。


”こっち……、こっちだよ……”


”……まっすぐ…………”


”…………恐れないで…………”


”すぐそこ……だか……ら……”


”……こっちだよ…………”


俺は森の木々の声を聞きながら、仲間たちとはぐれないように歩いて行った。しばらく歩くと霧は晴れてきて、着いたのは森の中の集落だった。その入り口に一人の少女が立っていた、こちらをきつく睨みつけるようにしていた。そして、その少女は薄青い髪と瞳を持っていて、薄い衣をまとって少し変わっていた。


「ミュートスの集落へようこそ、旅の……」

「エロフきたこれ――――――!!」


俺たちの中でいきなり大声を上げた者がいた、言いたくないが俺の従魔であるミゼである。こいつがこういう頓珍漢なことを始めるとろくなことが無い、俺はミゼの首のところを後ろから摘まみ上げて持ち上げた。


「煩いぞ、ミゼ。見ろ、女の子が驚いているじゃないか」

「だってエルフですよ、レクス様!!」


「エルフ、そうかあの耳が変わっている、確か森に住む種族だな」

「そうでございます、本物です。キャー―!?感動ですぅ!?」


「ミゼ、煩い。口をしばらく閉じていろ」

「なんということでしょう、大人しくしますからそれだけはご勘弁を!!」


俺はミゼをディーレの背中にあるフードの中に突っ込むと、俺たちに話しかけてきた少女のほうへ向きなおった。


「話を遮って悪い、俺たちに何か用か」

「み、ミュートスの集落へようこそ。た、旅のお方、こちらへどうぞ」


少女はちょっとつっかえつっかえしながら、俺たちを森の中の集落へと案内してくれた。エルフとは確か森で生きる種族だ、長命で人間があまり好きではなく、隠れ里のようなところで暮らしていると本にはあった。


「わ、私はセラ。あ、あなたたちの中に助け手がいると予言を受けた」

「助け手?」


「村の者が数名、病に侵されている。人里で病を拾ってきて広まってしまった、だからどうか助けて欲しい」

「それなら、おいディーレ。お前がこの村の助け手のようだぞ」


セラの言葉を聞いて俺はディーレに話しかけた、ディーレは特に緊張した様子もなく頷いてすぐそばにきた。


「よほど特殊な病でない限り、流行り病でも魔法で治ります。エルフの中には魔法を使う方はいないのですか」

「この村には魔法を使う者は大勢いるが、回復の上級魔法を使える者がいない」


「そうですか、では病人の方を診せてもらえますか」

「分かっている、このまま案内していく」


それからしばらく森の集落のあちこちの建物をまわった、ディーレは流行り病の状態を診て症状が重い者に魔法を使っていった。


「『完全なる(パーフェクト)癒し(ヒーリング)の光(シャイン)』、これで大丈夫です。貴方が神の慰めと励ましを得ることができますように」

「…………人族にも良い者がいる、ありがとう」


そうして村をひととおり診てまわった、とても小さな村だった。全員でも100人はいなかっただろう、最後に大きめの家に通されてここに泊まっていくように言われた。


「村の者の恩人だ、礼をしたいから泊まっていってくれ」


もう夜が近かったので遠慮なく泊まらせてもらうことにした、ミゼはセラのことや他のエルフに会うたびに大興奮で、変なことは言わなかったが食い入るようにエルフたちを見ていた。部屋でくつろいでいると、セラがまたやってきた。


「さて、旅の人。私が村長なんだ、今年で500歳になる。今日のお礼は何が良いだろう、珍しい薬草か。それとも宝石の山がいいだろうか」


そこでディーレが俺に目配せしたので、俺は聞いてみたかったことを言ってみた。エルフは長命な生き物だ、だったら俺が欲しい知識を持っているかもしれない。


「俺たちはヴァンパイアに狙われて困っている、だからヴァンパイアを退治する魔法を知らないか?」

「あの魔法か!?」


セラは俺から思いがけないことを聞いたようで驚いていた、だがあの魔法というからには知っているのだろうか。


「…………あの魔法、あれは禁じられた魔法だ」

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