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第百三十二話 決して拾ってきちゃいけない

 俺たちはいつものように迷宮に来ていた、そうして狩りをしていたら索敵をしている途中で、ファンが変なものを拾ってきてしまった。


「ねぇ、ねぇ、これ落ちてた。どうしよう?」

「元の場所に捨てて来なさい……とも言えないか」

「冒険者のようですが、こんな軽装でどうして三十階層に」

「嫌な予感がいたします」


 ファンが拾ってきた少年は黒髪で簡単な皮鎧と一振りの剣を持っていた、他の仲間とはぐれたのだろうか彼からは血の匂いがしていた。


「優しき神の癒しの力を、『大治癒(グレイトヒール)』」

「ううぅ、あ? ここは、あんたらは誰だ!!」


 ディーレが回復させると同時に剣で斬りかかってきたので、俺がメイスの柄でそれを受け止めた。恩を仇で返すとは、この時点で気に入らないやつである。


「お前が倒れていたから、仲間が回復させた。その馬鹿は礼も言わずに、恩人に向かって斬りかかってきた。以上」

「お気になさらず、混乱されていたのでしょう」

「むうぅ、僕はディーレが好きだから許さない」

「私も同様でございますね」


 ディーレに斬りかかった少年は気まずそうに礼を言った、それから早口で俺達にまくしたてた。


「俺の仲間がオーガと戦って、俺だけ逃がされたんだ。どうか頼む、仲間を助けてくれないか?」

「…………既に手遅れだと思うが、場所はどのあたりだ」


 面倒なことになった、俺達は倒れていた少年の案内でその仲間を助けにいった。だが、既に時は遅過ぎた。


 そこにはオーガが三体ほどおり、少年の仲間であろう者達を食べつくしてしまった後だった。


「うああぁぁぁぁっぁぁぁああぁ!!」

「馬鹿が、お前が行ったところで何の役に立つ、ファン、ディーレやるぞ。ミゼはその馬鹿を見張っておけ!!」


「閃光弾に、風撃弾!!」


 まずはディーレの魔法銃ライト&ダークで、一体のオーガが頭をビシャアァと破裂させて倒れ込んだ。


「遅い、遅い!!」


 ファンがオーガまで勢いよく走っていって跳躍し、そのオーガの体を駆け上ってかぎ爪で首を掻っ切って殺してみせた。


「これで最後だな」


 俺もファン同様にオーガに向かって走っていき、跳躍してその頭にメイスを叩きつけた、ぐしゃりという嫌な感触と共にオーガをあっさりと倒した。


 その後は剥ぎ取りの時間である、『(ウォーター)』でオーガについた血を洗い流してその皮を剥ぎ取っていった。


 ファンはちょっと迷っていたが、今回は人目があったのでドラゴンには変身せず、武器であるかぎ爪で魔石を取り出していた。


 ディーレとミゼは少年に励ましの言葉をかけていたようだ、少年の仲間の遺体はほとんど人間の姿を残していなかった。千切れた手足がいくつか落ちていただけだ。


「おい、お前はどうする気だ。俺達は少し獲物が少ないがもう帰るぞ」

「あっ、あんた達と一緒に行かせてくれ」


 その日はオーガが三体と少なめの獲物だったが、冒険者ギルドでの売却では黒字になったので良しとしよう。飯屋によってファンはオーガが食べれなかった分を余計にいっぱい食べていた、今日の稼ぎが吹っ飛ぶほどではなかったので良しとする。


 翌日、俺達が迷宮に行こうとすると昨日の少年が待ち構えていた。そして、沢山の冒険者がいる中で土下座をして頼みこんできた。


「俺を貴方達のパーティに入れてください!!」

「断る、邪魔だ」


 はっきりいって迷惑だった、だから俺はすぐにその申し出を断った。俺が断ったのに少年が後をつけてきた、面倒だったので俺達は今日は迷宮に行くことを諦めた。


「俺は森に行くが、ディーレ達はどうする?」

「僕は『貧民街(スラム)』の方にいきます、ミゼさんついてきてくださいね」

「はい、もちろんでございます」

「はーい、今日は僕もついてくよ。そうしないと寒気がざわざわするの」


「お、俺は……」


 俺達のパーティはそこで解散し、素早く移動してしまった。俺を少年が追ってきたようだが手加減しているとはいえ、草食系ヴァンパイアの走る速度に敵うわけがない。


 俺が森に行くとフェリシアが現れた、俺達は森の木陰で何をするでもなく、ただ二人だけの心地の良い時間を過ごした。うん、偶にはこうして休むのも悪くない。


 面倒なことがまた起こったのは翌日だった、俺たちが迷宮に行こうとしたらあの助けた少年が待ち構えていた。


「俺を貴方達のパーティに入れてください!!」

「……断るといった、言葉を理解できないのか?」


 翌日も少年は俺達のパーティにつきまとった、面倒くさかったので俺がディーレを背負い、ファンがミゼを持って三十階層付近まで走り抜けた。案の定、少年はついてくることができずに置いていかれた。


 行った先にはジャイアントが三体いた、俺達は戦闘体勢に入った。ディーレがまず閃光弾と風撃弾を撃ちこんだ、それで一体の巨人はその頭をはじけさせて死んだ。


「もう、慣れちゃった。はーい、行くよ!!」

「俺もだ、もうジャイアントは敵にならないな」


 俺とファンはそれぞれが跳躍して、ジャイアントの首を掻き切るか叩き潰すかしてしまった。ファンはさっそくドラゴン本体に戻って巨人の体を食べ始めていた。


 俺とディーレも手慣れた手順で皮を剥ぎにかかった、ミゼはいつものように見張りをしていた。剥ぎ取りも終ったころに少年が現れた。


「面倒だな、『火炎嵐(フレイムストーム)』」


 おれは明日からも付きまとわれるのが嫌で、残ったジャイアントの体めがけて魔法を放った。ジャイアントの体は使える場所がないように、燃え尽きてしまった。


 帰りはしかたなく迷宮の入り口まではゆっくりと歩いた、だが迷宮を一歩出たところで全員で走って散らばり、追ってきた少年を置いてきぼりにしてしまった。


「ねぇ、ねぇ、あの子。どうして僕たちに付きまとうのかな?」

「自分の実力以上のパーティに寄生したいんだ」

「ああいった人は絶対に仲間にしてはいけません、私達にもまた本人の為にもならないことです」

「実力に見合ったパーティを組まなければ、待っている結末は一つだけです」


「同じ人間なのに協力しないの?」

「ファン、協力っていうのは助けあうことを言うんだ、あの少年では俺達が一方的に助けるだけで俺達にはなんの得もない」

「厳しいですが、自分の実力に似合ったパーティで力をつけていくこと、それが結局は一番自分の為になるんですよ」

「そうです、実力が伴っていないパーティについていっても死ぬだけです」


 ミゼの言葉は予言のようだった、翌日俺達は迷宮に行く時に少年に出会わなかった、行きも帰りも出会わなかったから多分、寄生して稼ごうとした少年はおそらく亡くなったのだろう。


 それを助けなかったことが冷たいとは思わない、そんな冒険者志望の少年をいちいち拾っていたら、俺達は学校を作らなければならないだろう。


 そんなことは無理だ、俺達にできるわけがない。そう思って迷宮に行こうとした時に、俺達は兵士に取り囲まれた。


「ヤオ・トーミヤ殺害容疑でお話を伺いたい」


広告の下にある☆☆☆☆☆から、そっと評価してもらえると嬉しいです。


また、『ブックマーク追加』と『レビュー』も一緒にして頂けると、更に作者は喜んで書き続けます。

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