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第百十二話 新しい仲間も悪くない

「女なのか!?」

「女の子!!」

「リアル幼女、キタ――――――!!」


 約一匹が間違った方向で驚いているような気がした、いやそんな些細なことはどうでもいい、俺は男なのに女のドラゴンを育てられるのか!?


 慌てて反射的に俺は着ていた自分の上着をかぶせた、そういえば性別がどちらか聞いてもいなかった。ディーレが一番早く衝撃から立ち直って、ファンを相手にお説教してくれていた。


「ファンさん、女の子は知らない他人の前でいきなり服を脱いではいけません」

「レクスたちは知ってる人です、だから大丈夫なのです」


「親しい間柄でも礼儀というものがあるのです、ファンさんはお風呂の入り方はわかりますか」

「わからないのです、どうか教えてくださいです」


「それでは僕はちょっとファンさんをお風呂に入れてきます」

「ああ、わかった。手間をかけて悪いが頼む」


 そうしてファンとディーレはお風呂に向かっていった、ディーレの適応能力の高さに驚いた。だが、考えてみればあいつは孤児院で下の子どもの面倒をみている経験があるわけだ。


「ディーレは孤児院で、下の子どもを相手にするのに慣れているんだな」

「特に慌てることもなく、ごく自然に連れていかれましたね」


「正直、これからファンを育てるのに助かる。俺一人では分からないことだらけだからな」

「ディーレさんは最初の頃が嘘のように、ご立派になられましたねぇ」


 暫くするとファンとディーレが風呂から帰ってきた、ファンは今度は白い綺麗な寝間着を着ている。


「ディーレありがとな、ファン。そうやって服の形は好きなように変えられるのか?」

「はいです、ドラゴンにとって最強の装備は自分の体です。人間体になってもそれは変わりません、だから服は魔力によってその時の気分で作るのです」

「それ以外は僕の見たところ普通の女の子と変わりありません、迷宮などに連れていっても大丈夫でしょうか」

「女の子を危険にさらすわけにはいきません、ここは私が留守番を致しましょう、キリッ」


 やった理由を見つけたとばかりに瞳を輝かせてミゼが、ファンとの留守番役をと言い出した。だが、ファンには大人しくしているつもりがないようだ。


「大丈夫なのです、まだ生まれたばかりだけど魔法だって使えるのです。戦うのは無理でも、荷物もちくらいならできるのです」

「そうか、一度迷宮に連れていって様子をみてみるか」

「外見では小さな女の子ですが、ドラゴンなんですね」

「冒険者登録もしておいたらいいのでは、このままではファンさんの身分証がございません」


 ミゼの奴が良いことをいった、明日はファンの冒険者登録をしてから迷宮に潜ってみることにした。


 宿屋に人が増えたことを説明して、一名分の宿賃を追加で払った。四人部屋に移されて、少々宿賃が高くなったがこれくらいは問題ない。


 俺は軽く眠ると夜中に目が覚めた、そして皆を起さないよう静かに夜の散歩に出る。『隠蔽(ハイド)』を使い外壁を軽々と飛び越えて、いつものように森の中を全力疾走する。木々を蹴って立体的に仮想の敵がいると思って、回避や攻撃の練習を行った。


 朝になって俺は通行料を払って宿屋に戻った、その瞬間に小さい子どもに抱きつかれた。


「どこに行っていたです、目が覚めたらレクスがいなくてびっくりです、ひっく、どこかに行っちゃったのかと思ったのです、うええええええん!!」

「えっ、いやすまん。いつもの癖で森の中で戦闘訓練をしていた、そんなに泣くな、別にどこかに消えてしまったりはしない」


 ディーレとミゼはどこか困った様子で俺に話した、ファンが朝から大騒ぎをしたようだった。


「一生懸命説明したんですけど、どうやらファンにとって親として認められているのはレクスさんのようです」

「はう、外見も中身も間違いなく幼女…………尊い」


 朝食はファンをあやしながら宿屋の近くの飯屋で食べた、ディーレとミゼはファンの食べるご飯の量に驚いていた。


「小さい時は体を作るから、いっぱい食べなきゃダメなのです」


「これは預かるのが俺で良かったな、人によっては食費で破産する」

「ふふふっ、いっぱい食べれるということは元気なこと。僕もしっかりと食べましょう」

「私もです、この肉が一杯入ったソーセージが美味しいです」


 皆で仲良く朝食を食べたあと、俺達はファンをつれて冒険者ギルトにきていた。まずはファンの冒険者登録をしなくてはならない、そうしないと身分証が彼女には何もない。服は冒険者が着るようなシャツに皮鎧とズボンにブーツにさせた。


名前:ホワイトファング

年齢:10

性別:女性


 俺が代筆してファンの年齢は十歳ということにしておいた、本当はまだ数カ月なのだがそんな人間がいるわけがない。銅貨五枚を支払い、血を一滴だけ冒険者証に垂らして彼女は冒険者となった。ついでに俺達のパーティに登録もしておいた。


「それじゃいってみるか、迷宮に」


 スペルニアの都の迷宮には相変わらず孤児達が住みついていた、ファンも珍しいそうに子ども達を見ていたが、彼らは特に俺達の進路を妨害しなかった。


「人目が少ない三十階層くらいまで潜ろう、ファンの実力を見るとしても人目が少ないほうがいい」


 そうして迷宮の三十階層にきたわけだが、そこにはまだ新しいゾンビが偶々四体うろついていた。


「あたりに人はいない、ファン。あのゾンビ達を倒せるか?」

「任せるのです、ファンは強いのです」


 ごおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


 確かにファンは強かった、なんと口からブレスをはいたのだ。幼い少女に見えても実際はドラゴンなのだ、だがこの攻撃方法は人前では使えないな。


「ファン、人間はブレスなどをつかえない。他の攻撃手段はあるのか?」

「はい、いくつかの魔法だったら上級魔法まで、無詠唱で使えるのです」


 さすがはドラゴンだファンは魔法も使えると言った、それからファンのドラゴンの姿も確認しておかなければならない。


「ドラゴンの形態にはなれるか、寿命が縮むと言っていたが大丈夫か」

「うーん、一日に数回程度なら大丈夫、でもあまりコロコロ姿を変えると危険」


 ファンはドラゴンの形態になってみせた、小さい俺の腕にもすっぽり収まるくらいの可愛いドラゴンがそこにはいた。


「女の子の姿もいいが、ドラゴンになっても可愛いな」

『えへへ、そうですか』

「次は僕に抱かせてください、レクスさん」

「ああ、ずるいです。私にも体があればリアル幼女を可愛がれるのに!!」


 ファンは俺とディーレに抱っこされた後に少女の姿に戻った、ドラゴンの時には話をすることができないので、『思念伝達(テレパシー)』で会話をしていた。


「なぁ、ファン。人間の姿からドラゴンに変わったり、その逆もだ。体に負担はないか」

「はい、大丈夫です。どこも気持ち悪くないのです」

「ファンさん、気分が悪くなったらすぐ言ってください」

「そうです、リアル幼女はこの世界でも素晴らしい宝石です!!」


 いろいろと実験をしていた俺達だったが、そこにオーガが三体現れた。さて実験の時間は終わりだな、実践で試してみるとしよう。


「ファンは俺の背中にしがみつくのと、ディーレ達といるのとどっちがいい」

「レクスがいい、僕は魔法で頑張る!!」


 ファンには上級魔法は使うと誘拐されたりするから使うなと教えた、草食系ヴァンパイアに上級魔法の使い手、それにホワイトドラゴン、俺達のパーティには売れば大金持ちになれるものばかりあるな。


「行きます、閃光弾!!」

「『風斬撃(ウインドスラッシュ)!!』でございます」


「俺達も行くぞ、しっかり捕まっておけよ!!」

「うん、分かった。『衰弱(ウィークネス)!!』」


 ファンは本当に俺の背中にいるのかと思うくらい軽かった、またオーガを相手に魔法をかけて状態異常の衰弱にしてくれるので、いつもより攻撃が楽だった。


 背中にファンを背負ったまま、俺は壁を蹴ってオーガの首筋にメイスを叩き込んだ。バキリという骨が折れる音がして、簡単に一体倒すことができた。


「火炎弾、これで終わりです」

「『追炎(チェイスフレイム)(アビー)!!』でございます」


 ディーレの方も一体のオーガを倒したようだ、残るオーガはあと一体。俺はソイツに向かって跳躍した。


「こっちも終らせよう、『重力(グラビティ)!!』」

「はいなのです、『重力(グラビティ)!!』」


 ファンが俺が重力をかけてオーガに振り下ろすメイスに、更に重力を加えて重くしてくれた。おかげでオーガの首の骨は簡単にバラバラになった、ファンはなかなか役に立つやつだ。


「それじゃ、剥ぎ取るか」

「剥ぐ?」


 ファンは俺達がオーガの皮を剥ぐのを珍しそうに見ていた、少し教えてみたが皮を剥ぐのはファンには向いていないようだった。まぁ、少しずつ上達すればいい。


 その代わりに魔石の場所を見つけるのは得意で、オーガの魔石をあっさりと見つけだしてしまった。


「あっ、忘れてた。お母さんの魔石、レクスにあげなさいって言われてたの」


 ファンは一体どこにしまっていたのか、無色透明の大きく綺麗な魔石を俺に向かって差し出した。


広告の下にある☆☆☆☆☆から、そっと評価してもらえると嬉しいです。


また、『ブックマーク追加』と『レビュー』も一緒にして頂けると、更に作者は喜んで書き続けます。

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