第百八話 これで勝てないわけがない その1
俺がギルド戦の代表と決まってからというもの、俺はエスロという女冒険者から目の敵にされていた。
「なんでこの男が我がスペルニアの都があるギルドの代表なのですか、私がいます!!私がそのギルドの代表戦で優雅に戦ってご覧にみせます」
「エスロ殿もしつこいが、もうギルド戦に参加する選手は登録はしている」
だが、その鬼のような視線はどちらかというと、勝手に俺を代表にしたギルド長に向けるべきだと思う。よって、俺は堂々とギルド長を楯にしていた。
「……俺はどのくらい勝てばいいんだ?」
「それはもちろん、優勝してくれるのが一番良い結果になる」
「俺には特に何も得がないんだが」
「何を言う、優勝すれば賞金が手に入るし、……ギルドの図書室を増築しようか」
うぐっ、このギルド長できる!!俺が確実にやる気が出そうなところをついてきた。確かに優勝すれば賞金が出るし、新しい本が買えるし、おまけにギルドの図書室も増築されるかもしれない。
よぉし、俄然やる気が出てきた、出るからには優勝してみせるとしよう!!
「レクスさーん、相手にお怪我をさせないように頑張ってくださーい!!」
「ちゃんと手加減をなさるんですよー!!」
そうしてギルド戦の日はあっという間にやってきた。やる気が出てきた俺は仲間の声援にも手を振って応える、しかしただのギルド戦によくこんなに観客が集まるものである。王都の闘技場である普段は兵士の練習場に人が山のように集まってきていた。
最終的に俺達が来ている闘技場には千人以上の人間がひしめきあっていた、貴賓席らしきところには何かお偉いさんが来ている。これは関わりあいになりたくない、なるべく目を逸らして過ごすとしよう。
この闘技場は普段は騎士や兵士達の訓練用の施設なんだそうだ、今回の試合で多少は壊していいらしい。土属性に優れた魔法使いが修復を行うことになっている、それに複数の魔法使いが客席を守るように結界を張っている。
この試合は八人の代表者がそれぞれ全員と戦うことになっている、7回戦って一番勝った数が多い者が優勝者となるのだ。
単純でいてわかりやすいが、回復などは自分で行わなくてはならない。一応、戦闘が出来ないような傷を負えば棄権はできるようになっている。
「それではスペルニアの都ギルド代表、レクス。ムフビのギルト代表、コシトム。両者、前へ。始め!!」
俺の最初の相手は茶色い髪に同じ瞳のコシトムさんかな、二十歳は越えてるおっさんである。武器はスタンダードに片手剣、一応俺もメイスは持ってきているが、どちらかというとハンデの為に持ってきている。
「くらえ、『氷撃!!』『盲目!!』」
「ん、これは少しやりづらいな」
まず飛んできた氷撃はあっさりとかわしてみせたが、次に状態異常の魔法を使ってきた。すぐに魔法を解いても構わないのだが、この程度の魔法なら俺の視力を完全に奪うことはできない。
「ほらっ、そこにいたな」
「ぐわあああああぁぁ!!」
俺は視界を奪われたふりをしてから、余裕をみせて近づいてきたおっさんに逆に素早くに近づいて蹴りでその左足を折った。続いて右足も踏みつけて折った、最後にメイスをドガアアァァンとおっさんの横すれすれに叩きつけて聞いた。
「降参するか?今の一撃をくらうか?」
「こ、降参する……」
おっさんは次の試合に備えて自分で『治癒』をかけていた、綺麗に折っておいたから多分それで大丈夫だろう。
「それではスペルニアの都ギルド代表、レクス。セルギワのギルト代表、ネレン。両者、前へ。始め!!」
「はあぁぁぁ!!」
「おっと、よっと、おお、なかなか速いな」
次はまだ俺と同じくらいの青年で鍛えられた体をしていた、こいつも武器は片手剣で正々堂々と正面から武器で攻撃してきた。だが、草食系ヴァンパイアの俺の敵ではない。
「少し痛いが我慢しろ、『魔法矢!!』」
「『障壁!!』……うわああああぁぁぁっぁあぁあ!!」
俺は魔法の矢を効果は薄いがその分数を増やして敵に浴びせかけた、傍からみたらまるで雨のように魔法の矢が降り注いだことだろう。青年は咄嗟に『障壁』を張って魔法から身を守ろうとしたが、俺の魔法の矢はそれ以上に強かった。
俺は魔法の矢で沢山の打撃をおった相手から素早く足で蹴って片手剣を取り上げて、倒れた青年の顔の横へと突き刺した。
「それで、どうする?」
「……降参する!!」
なかなか負けん気の強い坊主である、攻撃にもきれがあったし、魔法も攻守上手く使いこなせていた。このまま成長したら面白くなるかもしれない、……なんて俺もまだ二十歳にもなっていないのに年よりみたいだ。
「それではスペルニアの都ギルド代表、レクス。ニニパダのギルト代表、キサテ。両者、前へ。始め!!」
「……………………」
「そっちから来ないなら、こっちから行くぞ!!」
前の二試合を見ていたせいか、今度の女冒険者は動かなかった。だから俺の方から攻撃を仕掛けた、メイスを振って彼女に投げつけたのである。
「なにをっ!!かはっ!?」
「悪いがあんたも退場してくれ、はぁ!!」
彼女は投げられたメイスを上手く避けた、だがメイスと一緒に走り込んでくる俺の攻撃はかわせなかった。
背後にまわりで両手の掌で肺を狙って打ちこむ、彼女は肺の空気を無理やり押し出されて倒れこんだ、その隙に彼女の武器であった槍と盾を奪ってしまった。
「話せるようになってからでいいが、どうする?」
「………………降参……す……る……」
俺は放りなげてしまったメイスを回収する、あーあ。闘技場の壁が少し崩れていたが何事もなかったふりをしておいた。どうせ、国が修理するらしいから気にしてはいけない。
「それではスペルニアの都ギルド代表、レクス。イムヒムのギルト代表、アグゼ。両者、前へ。始め!!」
今度は女騎士のようだった、全身をフルプレートで覆っていて手加減が難しそうだ。彼女もなかなか攻撃してこない、俺の様子を伺っている。いや、次の瞬間に鋭い踏み込みでレイピアで突いてきた。
「はああぁぁ!!」
「だが、まだ遅いな。『氷竜巻!!』」
彼女の攻撃を軽くかわして、少し距離をとった俺は中級魔法の氷竜巻を唱えた。鎧とは金属だ、氷の斬撃は防げてもその寒さを防ぐことはできない。
「ま、まだまだ……」
「『追氷槍!!』」
今度こそフルプレートの女騎士は氷の槍が直撃して凍りつき、そのまま動けなくなってしまった。
「さぁ、どうする?」
「……ふふふっ、降参するさ」
こんなふうにギルド代表戦は進んでいった、派手な魔法や攻撃が決まる度に観客達は喜んだ。俺は順調に勝ち上がってきた、なんといっても図書室がかかっている。俺には決して負けられない理由があるのだ!!
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