【コント】魔王と勇者
場所――魔王城の玉座があるとこ
役 勇者(男)=ボケ 魔王(男)=ツッコミ
勇者:
魔王、ここが年貢の納め時だ! 覚悟しろ!
魔王:
いや、待て。
勇者:
ととととっ――何だ急に。いきなり戦いを止めて。
魔王:
その……だな。戦いに集中できなくて。
勇者:
カフェインの取り過ぎか!? がぶがぶコーヒー飲むのはどうかと思うぞ!
魔王:
いや、ちょいちょい、ファンタジーにおかしなこと言うのもさ。(まだコーヒーはいいけど。年貢の納め時ってどうだろう)
勇者:
何が言いたいんだ! はっきりしろ! 早く帰ってプ○キュア見たいんだよ!
魔王:
だから、ちょいちょいおかしいよね!? ここ、異世界ファンタジーじゃないの?
勇者:
いいから、さっさと言えってんだ。てめぇ、スミにすんぞ。
魔王:
(こ、こええええっ。こいつ、半グレじゃないの)
ふ、ふんっ。貴様の脅しなど怖くないわ。……ただな。勇者よ。その、素敵な格好だな。それ。
勇者、それが皮肉だと気づかずに頬を赤らめる。
彼はビキニアーマーを着ていた。
勇者:
……お前、惚れたな?
魔王:
殺すぞ貴様! このビキニアーマーの変態が!
勇者:
何っ!? この……差別主義者のヘイトスピーチ野郎が。人の性を認められない哀れで孤独な豚野郎め。
魔王:
そ、そこまで言うか貴様は!
……あのな、戦う奴の気持ちも考えろ。そんな格好で戦って、あげくは負けたらどんな気持ちになるか。
勇者:
あぁ、そういえばお前のとこの四天王は、苦悶の表情で死んでいったな。
魔王:
悪魔か貴様は! あいつら、全員あっさりと殺されてったけどよ、そんな死に方したのかよ!
勇者:
ぬぅぅ、さっきからどうでもいいことをベラベラ――そんなに俺を怒らせたいか。
魔王:
ああああああああっ、興奮しないで! あそこが! あなたの勇者のあそこが! 勇者の剣が! ピョコッーンてなってるから! ソードがビッグソードになってるから!
勇者:
二刀流だ!
魔王:
上手くないよ!? 何、やっぱふざけてるの? これ魔王城の最終決戦だろ、真面目にやれよ!
勇者:
真面目にやってるわ! 全く、てめぇは失敬な奴だな――て、はっ!
勇者は何かに気づいたようだ。
勇者:
お前……田中か?
魔王:
え? な、なな、何を言ってるかなぁ。そんなわけないだろ。
勇者:
俺、鈴木。
魔王:
鈴木ぃぃぃぃぃっ!? な、何してんのこんなとこで!?
勇者:
いやぁ、トラックに轢かれたら勇者になってさ。歩きスマホが良くなかったのかな。
魔王:
歩きスマホは良くないが……そうか……どうりで異世界ファンタジーなのにおかしいことを言うと思ったが、お前、異世界転生してたんだな。いや、私もだが。
勇者:
田中、お前、一人称を私にしてるのか?
魔王:
う、うるさい! 今は魔王だ!
勇者:
目を覚ませよ、田中! 俺たち、プ○キュア同好会の一員じゃないか!
魔王:
うるさい、それ言うなよ!
勇者:
何か、お互いが顔見知りだと知って殺る気が失せたけど。
俺としては、もう悪さしないっていうなら、見逃してやってもいいぞ。
もちろん、今後悪さしないようにしてもらうけどな。この感じだと、お前も魔王が悪さしたあとに前世の記憶が蘇った感じだろ? 俺もなんだよ。だから、今回は見逃してもいいぜ。
魔王:
……退くことはできない。私には、やらねばならないことがある。
勇者:
何があったんだお前。あれだけ、キュア○ター好きだって言ってた、お前が。
魔王:
そんなの、決まっておるわ。
場は沈黙する。
よく分からない雰囲気になってたのが、お肌のピリピリする空気に変わっていた。
魔王:
……美少女の勇者に倒されたい。それが、私の夢だ。
勇者:
………。
魔王:
………。
勇者:
……(ちょっと、目をそむけて、どうしたもんかと考える)。
魔王:
うるせーよ!
勇者:
いや、何も言ってねーよ!
魔王:
うるせーよ! 自分でも言ってて、やべーって思ってるよ!
勇者:
サイコパス! サイコパス!
魔王:
うるさいわ! ……だって、魔王になっても女の子にモテないんだもん! シャ○子みたいなのどこにもいないんだよ!
勇者:
シャ○子が悪いのか……。
魔王:
シャ○子が悪いのさ……だから、だから、こうして魔王になって美少女の勇者が出てきて、その子と主人公×ラスボス、もしくはラスボス×主人公、みたいなカップリングを望んだって……いいじゃないか。
両者、もうこの戦いは止められないのだと悟る。
勇者は剣を構え、魔王は魔力を解放し、戦いを始めた――。
勇者:
うおおおおおおおおおおっ!
魔王:
………。
勇者:
あたあああああああああっ!
魔王:
………。
魔王:
(……こ、こいつ、マジで強ぇ。ぐふっ、ちょ、待って。降s――げふっ)
終わり