84 猟兵(イェーガー)
移動はそれほど苦てはないが、やはり寒さは辛いようだ。
まあ、冬に移動しようと言うのが間違っているのだが、これも修行だ。巫女として、守人としての心構えと精神を鍛えるもの。厳しいときにやらないと意味はないだろう。
十日くらいかけてブランボルの村に到着した。
「なにか、人が多くなったな」
ゴゴール族の中で一番大きいな村で人も多かったが、今回は祭りかと思うくらい人で溢れていた。
「レオガルド様。巫女様。ようお出でくださいました」
長老たちに迎えられる。
「ああ、ご苦労。よくオレたちがくるのがわかったな」
「出稼ぎにいった者から聞きました」
あれ? いくなんて言ったっけか? ゴゴール族が帰ってから決めた気がするんだが?
「そうか。なら、神殿を建てることも聞いたか?」
「はい。場所を拓いておきました」
随分と行動が早いな? そんなに神殿を望んでいるのか? いや、オレらを取り込むための行動か。
ザザを連れてこればよかったと思いながらゴゴール族たちを使い、簡素な小屋──もとい、神殿を造らせた。
神殿には御神体──と言っていいか謎だが、オレの抜け毛で作ったヌイグルミを置いた。
なんか複雑ではあるが、信仰の対象なのだから割り切るしかない。
「シャルタ。あなたを神殿長にします」
連れてきたゴゴール族の巫女、シャルタを神殿長とする。
「はい。守護聖獣レオガルド様の教えを伝え、この地の祝福を願い、任せられた神殿を守ります」
獣神教でありながら守護聖獣とはこれ如何に? とか言いそうなヤツに言っておこう。それはそれ、これはこれ、であるとな。
「レオガルド様の寝床も作らないとなりませんね」
ん? オレ?
「ここは、レオガルドの家でもあります。寝床がないと困るでしょう」
言われてみればそうか。オレを祀るところはオレの家、みたいなもんか?
まあ、反対する理由もなし。シルミの陣頭指揮の下、フレンズな獣人たちに作らせた。
とは言っても土を盛ったていどのものだが、たまにきて眠るだけの寝床に拘りはない。狭くないのならなんでもいいさ。
「屋根も作らないといけませんね」
「そうだな。あったほうはいいな」
ないのならないで構わないが、ブランボル村にないのもよくない。オレを軽く扱っていると他に思わせるからな。
「屋根は次にきたときでいいさ」
まだ守人の修行は続く。神殿はシャルタと巫女三人に任せ、フレンズな獣人の村を回ることにする。
「長老たち。オレらが戻ってくるまで巫女たちを頼むぞ」
「はい。お任せください」
これはちょっとした試験。ゴゴール族の巫女たちをどう扱うかを知るために巫女だけにするのだ。
もちろん、シャルタたちにも伝えてある。どう扱われ、なにを仕掛けてくるかをだ。
「案内役はお前か」
槍のドーガだ。
「はい。よろしくお願いします」
なにか礼儀正しくなったな。どうした?
「我々にも騎士になれる許可をくだされ」
やはりきたか。
ただ、騎士とは予想できなかった。
「騎士は団結して戦う集団。お前らのように個を得意とする種族には不向きだと思うぞ」
五、六人ならいい。だが、十人以上はダメだ。個が強すぎて纏まらないのだ。
「お前らは、騎士より猟兵だな」
「イェーガー、ですか?」
「五、六人で組み、あらゆる武器を使いこなして、敵を狩る。お前らはそんな戦い方が似合っているし、森での戦いなら大集団でも相手できるだろうよ」
近代ならゴゴール族は最強の特殊部隊になれるだろうが、集団対集団では各個撃破されるのがオチだろうよ。
「……猟兵……」
「もちろん、猟兵を纏める者は必要だ。ドーガ。お前が頭になって纏めろ。守護聖獣たるオレが命令する。そして、お前を団長に任命する」
どの種族も強いヤツがトップにならないと纏まらない。ドーガなら団長として纏められるだろう。
「お前が信頼できる者を集めろ。村を回りながらオレが鍛えてやる」
守人も育てなくちゃならないが、こいつらを放置しておくのも問題だ。やるなら一緒にやるしかないだろう。
「はい! すぐに集めます!」
そう言うと駆けていった。
「守人たち。猟兵の戦い方を学べ。お前らは巫女を守る壁。騎士や猟兵に劣ってはダメだ。鉄壁となれ」
あちらを立ててこちらも立てる。まったく、獣のやることじゃないぜ。
「はい! 鉄壁となります!」
強く返事する守人たちが頼もしいよ。
ドーガが三十人ほど集めて返ってきた。
……また、たくさん連れてきやがって……。
「今すぐでなくていいから、五、六人の隊を組め。いずれお前たちが隊長となり猟兵隊を率いることになる。隊としての戦い方、纏め方、いろいろな位置について学べ」
ちなみにドは適当です。まあ、騎士も守人も適当につけてるんだがな!
「オレがドーガを団長とした。異論があるヤツは声を上げろ。どれだけ強いかオレが確かめてやる」
威圧してゴゴール族たちを睨む。
まあ、オレの威圧を前に異論を述べるヤツはなし。両膝を折って服従のポーズを取った。
「よし、出発する」
案内役のドーガを先頭に、猟兵を連れて出発した。
宣伝。『隣の幼なじみがまた「ステータスオープン!」と叫んでる 勝ちヒロインの定義』もよろしく。




