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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
開拓期編

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73 公爵

「レオ様、おかえりなさい!」


 コルモアの港に着くと、レブとチェルシーが迎えてくれた。


「ただいま。元気にしてたようだな」


 数ヶ月離れていただけなのに、成長したと思うのはオレの気のせいだろうか? もしかして歳を取ったってことなんだろうか?


 イトコの子がやたら成長速度が速いと感じるのは歳を取った証拠と言うが、まさにそんな感じがする。


「はい! よく食べよく動いてたから!」


 まあ、アルビノとは言え、レブはブレンズな獣人。持って生まれた生命力は人間とは違うのだろう。ちゃんとした食事と適度な運動をすれば立派に育つってことなんだろうよ。


 正確な年齢はわからないが、十三、四歳くらいに見えるまでには育っている。こねまま健康に育ってもらいたいもんだ。


 レブにオレがいない間のことを聞いたり、久しぶりに狩りをしたりとコルモアで過ごし、もう少しで夏になる頃にマイノカへと立った。


 オレ専用の荷車に、塩をたくさん積んでマイノカに帰ると、ゼルム族がやたらと増えていた。


「ミナレアの民か」


 マイノカは人間の影響を受けているので、ミナレアの民とすぐにわかるのだ。


「レオガルド様、おかえりなさいませ」


 まずは自分の巣と言うか家に帰る。


「ただいま。またうちが豪華になっているな」


 土を盛っただけの寝床になんかの毛で編まれたものが敷かれていた。


「ミナレアの民がレオガルド様やゼル王に献上したものです」


 部族単位で生きてきたのに、上に献上とかする考えが浮かぶものなんだな。


 まあ、せっかくもらったものなら使っておくかと、寝床に入ってみる。


「如何ですか?」


「いいと思うぞ」


 格別かと言われたらそうでもないが、まあ、そう悪いものでもない。いいんじゃないかってものだな。


「ギギねえさま。チェルシーにはないの?」


「あるわよ。寝床にいってみなさい」


 ちなみにチェルシーの寝床は別のところにある。オレの寝床の周りには最初に移り住んだ者の家があるんでな。


 巫女たちにレーキで毛を鋤いてもらっていると、ゼルの妹、ルゼがやってきた。


 ……女は個の名前があるけど、今度は覚えるのが大変だよな……。


「おかえりなさいませ、レオガルド様。王がお会いしたいそうです」


 用があるならお前がこいや! なんてことしたら王の立場や権威を示せない。ゼルも王の自覚がないときは単独でやってきたが、今はちゃんと人を通して呼びにくるようになったようでなによりだ。


「わかった。いこう」


 ルゼの先導でゼルのところへと向かった。


 王宮、と言うには烏滸がましい平屋の家だが、ゼルム族に階段はキツい。なので広大な土地に政務宮(小屋だけど)や謁見の間(広場だけど)などを作ってあるのだ。


 一応、王宮と呼んでいる場所にはミナレアの民の者らが集まっていた。


「こちらに」


 と、謁見の間(広場)に案内される。


「待たせたな」


 謁見の間の王座(と言うのも烏滸がましい台だけど)にはゼルと王妃たるゼルの妻、そして、側近らが左右に控えていた。


 一応、オレの席として御座が敷いてある。実を言うと、この御座のほうが寝心地がいいんだよな。畳っぽい香りがして。


「それで、なにかようか?」


 ゼルに問いかける。まあ、この状況を見ればなんなのかわかるけど。


「ミナレアの民がレオノール国の民となりたいそうだ」


「そうか。いいんじゃないか。オレに異論はないぞ」


「うむ。守護聖獣レオガルド様の言により、ミナレアの民をレオノール国の民とする。これよりレオノール国の法に従ってもらう。よいな?」


「はっ。ゼル王の庇護の元、レオノール国の法に従います」


 決めてあったのだろう。すんなりとミナレアの民はレオノール国の民となった。


「ミナレアの民が住む地をミナレアの町とする。レオガルド様。ミナレアの町の守護をお願いする」


 つまり、ミナレアの町にいけと言うことか。しょうがないとは言え、オレはこの世で忙しい獣だぜ。


「わかった。ギギ。出発の用意を」


「はい。すぐに準備いたします」


 あ、ギギも大巫女として立ち会っています。


 ミナレアの民──いや、ミナレアの町のヤツらが下がり、ゼルから状況を説明してもらう。


「纏まるのに時間がかかったな」


「あそこはたくさんの氏族が集まっているからな、表面上は従っても心の中では反発する者も多いだろう」


「それでもゴゴールがレオノール国の民になったのに焦っている、ってことか」


 ミナレアの町とブレンズな獣人が住む場所は隣り合っている。隣が栄えているのを心穏やかに見てなんていられないだろうよ。


「ああ。レオノール国の民になってから小競り合いもなくなり、暮らしもよくなっているのが結構伝わっているようだ」


 ここでも噂は千里を駆けるようだ。


「ゼルの親族で、ミナレアに移っても構わないヤツはいるか? そいつに統治させて纏めるしかないな」


 氏族を纏めるなんて苦労しかないだろうが、纏められないからミナレアの長老たちはレオノール国に入ろうとしているのだろう。


 それならこちらから王族を出して言うことを聞かせるしかないだろう。公爵的な立場を与えてな。


「親族、か。あそこを纏める者などいないぞ」


 だよな。ゼルも一族を纏める能力があると言うわけではない。象徴的な立場でいるからな~。


「配下からは?」


「…………」


 沈黙が返ってきた。


 ミナレアが厄介と知るだけに下手なことは言えないか。まあ、無理もないけど。


 さて、どうしたものかと悩んでいたら、ルゼの姿が目に入った。


 そう言えばこいつ、独身だったな。


「ルゼ。お前、ミナレアの地を治めてみないか?」


 オレの言葉に全員がびっくりした。


「わ、わたしがですか?」


「そうだ。王の妹であり、才覚もある。オレが支えるからやってみないか?」


 ルゼと絡みは少ないが、それでも賢いところは見えていた。


「女でも活躍できるところをお前が示せ」


 たぶん、こいつは向上心が強い。女としての立場に鬱屈した思いを持っている。なら、こいつにやらせてもいいかもしれない。女の進出を考えたらな。


「はい! わたしにやらせてください! 必ずやミナレアの地を纏めてみせます!」


 ルゼの宣言にゼルを見る。


「いいだろう、ルゼ。お前に任せる。やってみろ」


 ルゼ・ミナレア公爵と命名し、ミナレアの地を纏めるために次の日に出発した。

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