63 害獣
オレたちは今、オレらはコルモアの町へと向かっている。今年の冬はコルモアで過ごそうと思っているからだ。
農業村からコルモアの町までの道は往来が激しいからか、レブが感知できる獣はおらず、平和な旅路となっていた。
「……雪か……」
今年の冬は早いようだな。
「くしゅん!」
先頭を進むレブがなんとも可愛いくしゃみをした。
「レブ。寒いか?」
「大丈夫! まだ寒くないです!」
基本、人間より体毛があるゴゴール族は寒さに強いが、子供のうちは体毛は少ない。女になると胸から腹にかけては毛が生えておらず、金太郎の前かけみたいな下着をつけている。
熊の毛皮を纏っているから大丈夫だろうが、雪の降りが強くなってきた。コルモアの町までまだ大分あるし、早めに夜営するとしようか。
「ゼル王。今日は早めに休むとしないか?」
この集団の代表たるゼルにお伺いを立てる。周りにオレたちの関係を教えて込むためにな。
「そうだな。ゴゴールには大丈夫でも我々に厳しいからな。早めに休むとしよう」
ゼルもわかっているようで、こちら意図を汲んで配下に夜営をすることを命令をした。
農業村とコルモアの町の間には夜営できる場所を数十ヶ所設けた。
コルモアは人が多いだけに食料自給率は低い。農業村から運ばないといけないので、避難所を兼ねて柵で囲んだ夜営地を設けたのだ。
今も整備はやっており、将来的には三十キロ毎に宿場町に、と考えているよ。
すぐに夜営地に到着して夜営の準備を始めた。
「狩りにいってくる」
往来が激しくなってモンスターはいなくなったが、獣はまだ出てくるし、熊はなかなか逃げていかない。なので、すぐ冬眠中の赤熊を見つけることができた。
「今年の赤熊はいまいちだな」
味ではなく肥え方がいまいちなんだよ。去年はもっと肥えてたんだがな。
「不作だったか?」
村周辺は豊作だったんだが、場所によって違うのか?
だけど、冬眠している熊は結構いた。一時間もしないで六匹も見つけてしまったよ。肥えはいなかったけど。
肥えてたら二匹も食えば満足なのに、六匹食ってやっと満足できたよ。
次にチェルシー用の熊を探し出し、夜営地へと運んだ。
「ん? 鹿か? 珍しいな」
夜営地まであと少しといったところで小型の鹿が群れでいた。
トナカイ並みの鹿がいることは何百回と見てきたが、奈良公園にいそうな……鹿? ん? 鹿か? 鹿なのか?
オレの姿を見て逃げた鹿は羊のような体毛を持っており、角が一本だった。
「本当に命が溢れたところだよ」
咥えていた熊を放り投げ、鹿を追った。
固まっているところに雷一発。衝撃で数匹が吹き飛んで、手頃なのを謎触手で絡ませた。
「生きてるか」
体毛って意外と防御力があるよな。
夜営地に戻り、ゼルたちに鹿を検分してもらった。
「コミーだな。こちらにも出始めたか」
どうやら珍しくない鹿らしい。
「こいつの体毛は便利なんだが、すぐに増えるのが困った獣なのだ。他の草食獣のエサまで食ってしまい、森を壊すのだ」
害獣ってわけか。
「なら、少し狩るか。銃士隊はまだ弓の腕は落ちてないだろう?」
鹿相手に銃はもったいすぎる。弓矢でいいだろう。
「もちろんです!」
自信満々な銃士隊たち。
「弓矢はあるな?」
「はい。常に持っています」
「ゼル王。銃士隊と狩りをする。コルモアから兵を出してくれ。五番夜営地に鹿を集める」
「わかった。今年は肉に困ることはないな」
困る前に飽きられるかもな。猪、いっぱい運んだからな。
「レブはゼル王の護衛を頼むぞ」
チェルシーがいれば獣も寄ってこない。銃士隊がいなくても問題はない。
「わかりました! 任せて!」
明日のために食料を分け、弓矢の具合を確かめ始める。
次の日になり、ゼルたちと別れて鹿狩りを開始する。
「そう言えば、入れ換えをしたのか?」
銃士隊のメンバーが半分変わっていることに気がついた。いや、今さらで申し訳ないが。
「はい。ミナレアの民からも銃士隊に入りたいときたので遠征訓練をしています」
「ミナレアの民か。あそこもレオノール国に入りたがっているのか?」
ゼルム族のことはゼルに任せてあるから、どんな状況かはよく知らんのだ。
「はい。ですが、氏族の集まりですからあまり意見が統一できてないようです。若いのはこちらにきたがっているようですが」
「種族に関係なく若いのは柔軟だな」
「我々も若いのに負けないようにするのが大変ですよ」
見た目は三十半ばくらいだが、年齢は四十を過ぎているとか。その歳になると柔軟な考えをするのは大変だろうよ。
「あと二十年はがんばってくれよ。お前たちはレオノール国の基礎となる大事な存在なんだからな」
「二十年どころか三十年でも四十年でもがんばりますよ!」
「アハハ。頼もしい限りだ」
変わることを恐れないヤツがいるってのはなによりの助けとなる。老害や近視的なヤツは本当に厄介だからな。
「コミーは狩ったことがあるか?」
「はい。何度狩っています。コミーの毛は重宝しますので」
「肉は?」
「乾燥させて冬の食料としてました」
ってことは干し肉にする技術があるってことだな。
「レオガルド様、いました」
目のよい者がコミーの群れを発見した。
「オレが追い立てる」
銃士隊の練習として何度も狩りをしているので、連携は問題なかろう。
風下から追い立て、銃士隊の前へと誘導。一斉射出と連射により大量のコミーを狩ることができた。
ウム。大猟大猟。




