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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
開拓期編

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54 獣神(ししがみ)

 マルジェム。こいつは真の天才だった。


 記憶力も理解力もあり、オレの曖昧な知識も自分の頭の中で組み立てられ、そこから想像する力も凄かった。


 それに、かなりのメモ魔だ。持参した紙の束にすべてのことを書き留めている。


「紙の作り方は知っているのか?」


「はい、知ってます。子供の頃、金がなくて自作してました」


 自作って、紙を作る手間を考えたら買ったほうが安くないか? とは思うが、天才の思考は凡人とは違う。マルジェムの中では自分で作ったほうが安いんだろうよ。


「これから知識を溜め込むなら紙は必要だ。量産しておくほうがいいだろうな」


「そうですな。持ってきた紙も残り少ないので、量産できるなら助かります」


 紙は前々から欲しかったので、ゼルに話を通し、紙作りに必要な職人をマイノカの町に集めさせた。


「この大陸の木がわからないので、わかる者をお願いしたいのですが」


 木に詳しい者、か? 植物に強いのはベイガー族だな。


 知能が落ちていたが、大森林で一番の経験則を知っているのはベイガー族だ。食えないときは木の皮を食ったこともあると言っていたからな。


 農業村にゼルム族を走らせ、木に詳しいヤツを何人か呼び寄せた。


 調査隊を組織し、紙作りに適した木を探した。


「レオガルド様。我々も手伝わせてください」


 紙作りの話を聞いたのか、ドーマがやってきた。


「行動力あるな、お前は」


 好奇心が強いのか、探求心が強いのかわからんが、ゴゴール族の中では弱いのに、護衛もつけずに単独でやってくるのだ。


「レオガルド様が知識を求めるなら貪欲になれと言ったんじゃないですか!」


 いや、確かに言ったけど、弱肉強食な大森林ではもうちょっと危機意識を持て行動しろよな。


「マルジェム。こいつはゴゴールのドーマ。見ての通り、知識欲の高いヤツだ。お前の下につけさせるから面倒見てやれ」


「ドーマです! よろしくお願いします!」


「マルジェムだ。こちらこそよろしく頼む!」


 知識欲を満足するのなら人間の下につくことも厭わない。ってのを理解したのか、マルジェムはフレンズな獣人をいともあっさりと受け入れてしまった。


 ゼルに言ってドーマを技術局副局長とさせた。身分はない。爵位には興味なかったからだ。


 知識がありやる気があり技術があり人手があると、紙はすぐにできた。


「これで知識が溜められる!」


「マルジェム様、本も作ってくださいね!」


「任せておけ!」


 意識はもう本に移ってるのか。欲望は人を成長させるもんなんだな。


「春までに量産できるようにしておけよ」


 二人にそう言って、オレはゴゴール族のところへと出発する。


 ここ数年、冬はエサにしていた熊がいなくなり、保護区のミゴルを繁殖させるために冬は狩らないようにしたのだ。


 冬の間、狼や鹿などの獣もいるが、どれもサイズが小さいのばかり。腹を満たそうとしたら一日中、狩りに費やさないとならない。そんな面倒なことしてられないので、冬でもエサに困らないフレンズな獣人のところにいくことにしたのだ。


 今回は、と言うか、これからは冬の間はゴゴール族のところで過ごそうと思うので、ゼルの家族やギギ、なんかギギの配下的な女衆を連れていくことにする。


 フレンズな獣人はレオノール国に入りたそうなので、ゼルを王と認めなければならないし、従ってもらわなくちゃならない。だから、ゼルを連れていって様子をみるのだ。


 オレたちがいくことは事前に伝えてあるので、どうかと思ってたら総出で迎えてくれた。


「王よ、よくお出でくださいました」


 外に出たヤツらから話を聞いているからか、長老格のヤツらが土下座な感じでゼルに頭を下げた。


 いや、そこまで卑屈にならなくても、とは思うが、力がすべな環境で生きていればこれも仕方がないのだろう。


「冬の間世話になる」


 ゼルにも王らしい言動を心がせているのですぐに言葉を返せた。


「主だった者と話をしようか」


 ゴゴール族が住むところも雪が積もるが、住むところはアマゾンの原住民よりいくぶんマシなレベル。とてもゼルム族が入れる作りではないので、火を焚いて外での会談となった。


「これまでゴゴールとの因縁はあった。互いに血を流したことも多くある。だが、外から人間が攻めてきている今、我々は纏まらなければならない。この地を守るため、この地に住む者のために力を貸してくれ」


「はい。王に従います」


 まっ、オレが横にいてはそう言わざるを得ないだろうな。逆らっても勝てないどころか下手したら滅ぼされかねない。弱肉強食な世界で生きてるからこそ、強さには従順になるのだろう。よく知らんけど。


「レオノール国の民になるなら飢えさせることはさせないと約束しよう。もし、違えることがあるならばおれは王を下りると誓おう」


 これはオレが決めたことだ。


 もし、飢えるときがきたらそれは天候不順かそのときの王が慢心したかだ。なら、そのときがレオノール国が新しく変わるときだ。仮に滅ぶならそれもしかたがない。新しい世に移行できない種は滅ぶだけだ。


「おれは王ではあるがレオガルド様を信奉している。ゴゴールの娘の中から十人ほど選び、仕えさせろ」


 これはゼルが考えたことだ。レオノール国の守護聖獣として奉りたいらしい。


 なので、獣神ししがみに仕える巫女として、他の種族からも集めるそうだ。ちなみに巫女を纏めるのがギギで、祭司としての地位を与えた。


「種族による考えや暮らしは違う。だが、それを乗り越えてレオノール国は豊かな国を目指す」


 ゼルの言葉に、オレは頷き、ギギや連れてきた者らが頭を下げた。王に従う意をフレンズな獣人たちに見せるために。

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