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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
開拓期編

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53 発明家マルジェム

 無事、レオノール歴十二年が到来した。


 まあ、新年がきたからと言ってこれと言ったイベントはない。そもそも暦は決めてない。オレが元の世界の季節で決めているまでだ。


 人間たちは帝国の暦を使っているので、徐々に帝国の暦に移行していけばいいだろう。なんの偶然か、一年は十二月あり、大体三十日で区切っていて、六年に一回閏年みたいのがあるそうだ。


 ……オレみたいな転生者、絶対いるだろう、これ……。


 今のオレは農業村で過ごしている。


 ここをレオノール国の穀物地帯にしたいので、オレも開墾の手伝いとモンスター避けとなっているのだ。


 春になったら元マイアナのヤツらを百人くらい呼び寄せた。さすがにベイガー族だけでは作物の世話はできないし、作物だけ作っているわけにはいかない。道具を修理する職人や輸送隊を世話する者など必要になるからだ。


 喜んでいいのかわからんが、三百人以上の移住者がいるといろんな職を持った者がいて、木工職人や大工職人が何人もいた。


 せっかくその道で生きていたのに、モンスター溢れる大陸に無理矢理移住させられるのは可哀想だとは思うが、こちらからしたら技術を持った者が加わってくれるのら大助かりである。


 フレンズな獣人からも人を寄越してもらい、物作りに興味がある者を職人たちの弟子にさせた。


 人間たちは初めて見る他種族に戸惑いを見せていたが、オレがいることでしょうがなく受け入れている。


 それはベイガー族や他の種族にも言える。絶対的なオレがいることで人間たちに悪さをしないでいる。


 ただまあ、我慢させるのも問題だ。回避できないほど我慢させて爆発されたら困る。収穫祭みたいなことして発散させないとな。


「今年も穏やかな天候だといいですね。マルボが育つといいですけど」


 すっかり農業村に馴染んだギギは、開墾して耕した畑を見て笑っている。


 去年も豆とイモ、根菜類を植えたが、今年は飼育用のカボチャ──マルボを植えるそうだ。


 マイアナの地から水牛に似た牛を二十頭ほど連れてきたようで、その餌をここで作り、増えたらここでも飼おうと言う話になっているのだ。


 オレの体では畑に入れないので、農作業するのを眺める。


 人間、ベイガー族、ゴゴール族、ゼルム族と、なんともファンタジーな光景だよな。


 いやまあ、オレが一番のファンタジーなんだが、見てる分にはファンタジーな光景なんだからしょうがない。


「レオ様、高い高いしてー!」


「おれもー!」


 小高く盛った見張り山で寝そべっていたら子供たちが駆け寄ってきた。


 種族に関係なく子供とは順応性の高い生き物である。マイノカの町で産まれたゼルム族の子らがオレに登るのを見て安心したのか、日に日に子供らが集まり出し、今では遊び場とされている。


 大人たちは申し訳なさそうにしていたが、眺めているしかないオレにはちょうどいい暇潰しになる。されるがままに謎触手で相手してやった。


「ほら、仲良くしろ。大きい者は小さい者を守るんだ」


 保育士になった気分だが、道徳は小さい頃に教えておくほうがいい。ついでなので即行お伽噺などを聞かせてやる。


 どこぞの教育機関じゃないが、子供は才能の塊である。楽しく教えればスポンジが水を吸うように覚えていったよ。


 種蒔きが終わったらマイノカの町に戻る。


 オレが一ヶ所にいると獣やモンスターが戻ってくるので、定期的に移動してオレの縄張りだと教え込む必要があるのだ。


 ギギとギギを守るゼルム族の女衆もマイノカの町に戻るのだが、やはり長いこと農業村にいたせいか、獣との遭遇率が高くなっている。


 まあ、オレが美味しくいただくのだからいいのだが、やはり大森林の生命力はハンパないよな。


「これは、もうちょっと間隔を狭めて移動したほうがいいかもしれんな」


 輸送隊にはオレの抜け毛で編んだものを着ているからか弱い獣は近寄ってもこないが、群れる肉食獣は飢えていたら襲ってくる。被害が出ないうちに対策を考えておかないとな~。


 何度も往復してるので道がよくなり、農業村からマイノカの町まで三日の距離となった。


 とは言ってもオレがいるから可能であって、輸送隊は荷車を引いているので五日くらいはかかるらしい。


「橋をかけることもしないとならんな」


 川はオレが均してはいるが、雨が降ると増水したりして渡るのが大変になったり、大蛇が出たりして足止めになったりするのだ。


「レオガルド様、ギギ様、お帰りなさい」


 オレらが帰ると、町の皆が迎えてくれた。


 帰ってきたと思わせてくれる町の者に答えて我が家に到着したら、なんか屋根ができていた。


「屋根が欲しいと言ってたので皆で造りました」


 オレの体に合わせて造るのは大変だったろうに。と言うか、よく造れる技術と人手があったな?


「元マイアナの者のが設計してくれました」


 マイノカの町にも何十人か移動させたが、これだけのものを設計できるヤツなんていたんだ。何者だ?


 どんなヤツか来てもらうと、三十手前くらいの、なんだか筋骨隆々な男だった。


「発明家のマルジェムです」


 発明家? 戦士ですと言われたほうが納得いくんだかな……。


「随分としっかりしたものを設計するんだな? 大工でもしていたのか?」


「いいえ。独自で学びました」


「へー。そいつは凄い。水車とか造れたりするか?」


 水車があることはセオルから聞いてたが、組合みたいなものがあって移民団には入れてもらえなかったそうだ。


「構造は知っています」


「それはいい。だれかゼル王を呼んできてくれ」


 身分や称号を与えるのは王にだけ許された権限なので、ゼルにマルジェムを男爵とさせ、技術局を設立させた。


「わ、わたしが、男爵で、技術局局長ですか!?」


「そうだ。まあ、まだ自由に発明させてやれんが、お前が発明に専念できるよう権限と人を与えてやる。レオノール国発展と王に力を貸せ」


「は、はい! レオノール国のため、王のために働かせていただきます!」


 ゼルに目を向け、なにか言葉を与えろと念を送った。


「マルジェム。お前の働きに期待する」


 まだぎこちないが、ゼルも王の役割ができてきてなによりだ。

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