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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
黎明期編

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52 終結

 白旗はすぐに揚がった。


 揚がったはいいが、すぐに受け入れることはできない。また爆発させられたら堪らないからな。


「セオル。任せる」


 もうオレの出番はない。と言うか、どうにもできない。辛うじてできることと言えば、マイアナの連中が悪さしないよう威圧するくらいだろうよ。


「わかりました。レオガルド様ばかりに働かせて我々の立場がありませんからな」


「頼もしい限りだ」


 崖の上に移動し、セオルたちの働きを見せてもらった。


 戦艦を一つ使えるようにして湾を出ていき、船団の調査を開始した。


 一隻一隻確認してから一隻一隻湾へと入れ、病気を持つ者は隔離し、元気な者は自分たちが住む場所を開墾させ始めた。


「レオガルド様。食料が足りません」


 四日くらいしてセオルがそんな報告を持ってきた。


「船には積んでなかったのか?」


「積んではいたようですが、食料と人数があってなかったようです。まあ、作物の種や家畜には手をつけてないのが救いですが」


 食料より人を優先させたってことか? マイアナでは人の命が軽いようだ。いや、人権のない時代じゃしょうがないことか。


「嫌な考えだ」


 命は命を食らい、必要なら同族すら食らい尽くす。


 獣に生まれて二十年以上になるが、まだ元の世界の常識に捕らわれている。ここではそうしないと生き残れないと理解してるのによ。


「……そうならない国を創りたいものですな……」


「そうだな。そんな国を創りたいものだ」


 現実は厳しいが理想を掲げなければ始まらない。獣に国創りは難易度が高いぜ。


「理想は高く、目標は低く、志を胸に抱け、だな」


「どう言う意味ですか?」


「冗長しないための格言だよ」


 国をよくしようとして国を滅ぼしたヤツの多いこと。自分の善意が相手には悪意になるなんてよくあることだ。


 他種族が集まるレオノール国が一番恐れるのは種族間内戦。ちょっとした考え方の違いから戦いは始まるものだからな。


「セオル。子ができたらよく教育しておけよ。オレはお前の子を殺すなんて嫌だからな」


 親の意志が子に伝わるのは難しいものだ。精々、三代続けばマシなもの。八代九代続くなんて奇跡なことだ。


「バカなことをしたらレオガルド様に殺されろと教えていきますし、バカな子が出たら殺してくれて構いませんよ。愛着が出てきました国を滅ぼしたくはありませんからな」


 ギギが一番なオレもここに愛着が出ている。国が滅びていくところなんて見たくないよ。


「まあ、子は残るくらいに産ませておけよ」


 今ならハーレム作り放題。気に入った女は唾をつけとけ。


「アハハ! 嫁で困らないていどにはがんばりますよ」


 セオルはまだ三十前。あっちのほうは元気なはすだ。産めや増やせでがんばれだ。


 気を取り直して保護区へと出かけ、ミゴルを狩ってくる。


 とは言え、ミゴルが逃げられても困るので、少し遠出してヘラジカみたいな鹿を狩ったり、おっことぬしみたいな猪を狩ったりと、なんとか移住者たちが飢えないようにするが、さすがにこのままでは不味い。別の方法を考えないとオレの食事がままならなくなるぜ。


 どうするかと悩んでいたら移住船に漁に使う網があったとの報告が上がった。


「よし。ってことは漁師がいるってことだな。すぐにやらせろ」


「わかりました。戦艦に積んだ小舟を使ってやらせます」


 応急措置なものだろうが、やれることはすぐにやる、だ。


 忙しい日々が過ぎて季節は秋になる。


「不味いですね。冬までに家が間に合わないかもしれません」


 移住船を解体して家を作ってはいるが、道具が足りてなくて計画に遅れが出ているそうだ。


「緊急処置として穴を掘るか」


 前にもやったことだ。一冬ならなんとか超えられるだろう。


 切り開いた場所に穴を掘り、泥煉瓦で暖炉を作り、天井を板で塞いで土を被せる。


 二酸化炭素中毒にならないよう空気穴も忘れずに設置し、試しに暮らせてみる。


「これなら大丈夫でしょう」


 一冬暮らした者がそう言うなら問題なさそうだ。


「開墾は進んでいるか?」


「はい。ゴゴールが活躍していますよ」


 フレンズな獣人が増えており、開墾を手伝っているのはわかっていたが、活躍するほど手伝っているとは思わなかった。


「代表者は誰だ?」


「ドーマと言う男です」


 ドーマ? どこか──あ、高低差を聞いてきたフレンズな獣人だ! 我ながらよく覚えていたものだ。


「人間のすることを貪欲に学んでますよ」


 変わったヤツはどんな種族の中にも現れるとは言え、人間に学べる姿勢は才能だろうな。


 いくつかに分けた移住者の村を回っていたらとうとう雪が降ってきた。


「そろそろ農業村に戻るか」


 ギギは去年から農業村で手伝いをしているのだ。


「そう言えば、ヤトアはどうしてる?」


「ヤトアなら同胞を集めて部隊を作っていると聞いてます」


 同胞? 故郷の人間か?


 コルモアの町にいると言うのでいってみると、東洋系の顔をしたヤツらに剣を教えていた。


「ヤトア。オレは農業村に帰るが、お前はどうする?」


「しばらくコルモアにいる。同胞を放っておけないのでな」


 見れば男の他に女もいる。若い女がな。


 ……まあ、それもいいだろう……。


 それも人生だ。オレがどうこう言うつもりはないさ。


「しっかり鍛えておけ。同胞が暮らしやすくなるようにな」


 ヤトアの霊装術はレオノール国の武器となる。また戦争が起こるときまでちゃんとした形にしててもらうとしよう。


「わかっている。師匠の期待は裏切らない」


 謎触手でヤトアを軽く小突いてからギギのいる農業村へと駆け出した。

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