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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
黎明期編

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43 ロドの蜜

 フレンズな獣人の依頼が終わってから平和な時間が流れている。


 もちろん、嵐の前の静けさなのはわかっている。歴史と言うのは動くときは激しく動くとわかっているからな。


 だが、せっかくの平和なんだから堪能しなければもったいない。ギギとの甘い一時を過ごすことにする。


 秋は収穫に勤しみ、冬は火を挟んで会話を楽しむ。これと言った特別なことはない日々が過ぎ去り、また春となる。


「今年も出産ラッシュだな」


 冬に知ったのだが、ゼルム族の性交は獣よりで、秋に発情して春の半ば辺りに産むそうだ。


 秋から春と考えると六ヶ月から七ヶ月で出産するのか。それでいて三、四歳くらいで産まれてくるんだから生命は神秘だよ。


「ゼルム族って、生涯何人産むんだ?」


「多い人は八人産んだって言ってました」


 八人か。多いのか少ないのかわからん。人間も産もうと思えばそのくらい産めるからな。


「このままいくと町も拡張しないとならないか」


 人口増加は利点もあれば欠点もある。ゼルム族はその体から居住空間は人の倍だし、食うのも倍だ。食糧難になれば真っ先にゼルム族から死んでいきそうだ。


「ギギもそろそろ相手を見つけないとな」


 もう二十歳。完全に大人の女だ。


 セオルたちといた元娼婦でギギの世話役の女たちは相手を見つけて子を産んでいる。ってことを冬に聞きました。


「……べ、別にわたしは……」


「無理強いはしないさ。ただ、相手を見つけて子を産むのも幸せの一つだとオレは思っているぞ」


 オレは未だに発情期は訪れてない。オスとしてのシンボルはちゃんとあるんだがな。


 ……いやまあ、同族に発情するのも嫌だけどよ……。


「レオガルド様、遊ぼう!」


 去年産まれたゼルム族の子らがわらわらと集まってくる。


 たった一年で十歳くらいまで成長しており、体も倍近くなっている。これは食事がよくなったことが原因で、本来ならもっと小さいそうだ。


「なら、ピクニックにいくか」


 オレがいればモンスターどころか肉食獣も寄ってこない。狩りを教えられないのがちょっと悲しいぜ。


「いくー!」


「いきたいいきたい!」


 子らがオレの体を押してくる。元気なヤツらだよ。


「わかったわかった。弁当を持ってミロル岬までいくぞ」


 ここから二十キロほどのところにある湖に伸びた岬で、春になるとミロルと言う野いちごみたいなものが生るのだ。


 甘さはそんなにないらしいが、ゼルム族の舌には合うようで、春になると採りにいったりするそうだ。


「砂糖があるといいのにな」


「そうですね。砂糖が欲しいですよね」


 ん? え? ギギ、砂糖を知っているのか?


「セオルさんがきた頃にもらいました」


 ってことは砂糖があるんだ、この世界。


「この大陸にも砂糖になる植物があるといいんだがな」


「甘い木ならあるよ!」


 と、ゼルム族の子がそんなことを言った。え、あるの!?


「この近くにか?」


「うん! ミロル岬にいく間にあるよ!」


 と言うのでゼルム族に聞き込みをすると、昔から知られている木のようで、子供の頃はよく木の蜜を舐めるそうだ。


 ……メープルシロップだろうか……?


 楓の木から採れるとは知っているが、楓の木がどんなものかまでかは知らない。前世はシティー派だったからな。


 知識のある者を連れてミロル岬へと出発する。あと、なにかあるとついてくるヤトアも連れてな。


 マイノカの町から一時間くらいのところにその甘い木があった。


 幹の太さから樹齢はありそうだ。ゼルム族の下半身の胴くらいはあるんじゃなかろうか?


「結構生えてるんだな」


 ここは何度も通ったのに、意識するまで全然気がつかなかったよ。


「ロドの木です。甘いのは太いものですね」


 ゼルム族の女が黒曜石のナイフで木に深く傷をつけた。お、透明な液体が出た!


「ギギ。ちょっと味を確かめてくれ」


 基本、ゼルム族と人間の味覚にそれほどの違いはないみたいだが、好みは少し違っているそうだ。


「わかりました」


 樹液を指につけて舐めてくれた。


「確かに甘いですけど、そんなに甘くはないですね」


「それは煮詰めると甘くなるはずだ。誰か壺に樹液が入るようにしてくれ」


 一応持ってきてよかったぜ。


 葉や枝で壺に入るようにし、集まるまでミロル岬へと向かった。


 ミロル岬へ着いてまず腹拵え。オレは湖に出て四メートルくらいのピラルクっぽいのを捕まえて腹拵え。この苦味が堪らない。


 ミロル摘みが始まり、オレは日向ぼっこして待つ。獣には細かい作業はできんのよ。


 各々背負い籠いっぱいに摘んで帰路につく。


「お、結構溜まってるな」


 十リットルくらい入る壺の中に半分くらい溜まってた。


 それを持って帰り、焦がさないよう煮詰めたら、子供たちが取り合いするほどの甘さになり、次の日からロドの蜜集めが始まった。


 根こそぎとらないよう注意するのが大変だったが、甘味があると料理のレパートリーが増える。


「ホットケーキが作れるな」


 ゴノの粉、山羊の乳、ミロルの蜜を混ぜてフライパンで焼くと懐かしい匂いがしてきた。


 匂いで記憶が蘇るとは聞くが、本当のことなんだな。前世の記憶が次々と蘇ってきた。


 まずギギが試食する。


 一口食べたギギは固まり、次に勢いよく食べ始めてあっと言う間に完食してしまった。


「レオガルド様、甘くて美味しいです!」


「そうか。それはよかった」


 オレは食うことはないが、ギギの笑顔で胸がいっぱいになれた。


 ゼルム族の子供たちが食べたい食べたいと騒ぎ出し、ホットケーキ祭りが開催された。

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[良い点] >人口増加は利点もあれば欠点もある。ゼルム族はその体から居住空間は人の倍だし、食うのも倍だ。  だから食糧難になれば真っ先にゼルム族から死んでもらうそうだ。 家族は計画的に
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