38 ランク
レオノール村を改め、マイノカの町へと改名した。
マイノカと名付けたのはギギ。母親の名前から持ってきたらしい。ちなみに、村から町に変えたのは単に人数が増えたから町にしたまでだ。
まあ、名前は変わっても日々の暮らしに変わりはない。いや、ヤトアがなぜかオレの弟子になり、霊装術の修行に付き合わされてるよ。
「勝手にやってろよ。遠征の準備で忙しいんだから」
「師匠はなにもしてないだろう」
オレはチェックマンとして目を向けてるんだよ。
まあ、なんのかんのと言いながら霊装術はおもしろいから修行はつけてやるんだけどな。
「霊力を全開に放って霊力の容量を増やせ」
霊力がなんなのかわからんが、体から出てるものには違いなく、容量が物を言う。なら、某ハンターな感じで鍛えたらいいさ。まあ、ダメだったときはそのときだ。
「レオガルド様。用意ができた」
今回もゴゴールなところにはゼルたちも連れていくが、ミナレアの民のところへ寄るので綿花を手に入れるので、女たちも同行することになった。
「師匠。おれも連れてってくれ」
「お前は歩きになるぞ」
人間の女は橇に乗せるので野郎は歩け、だ。
「もちろんだ! 霊装強化の訓練になるからな!」
強くなりたいのか修行が好きなのかわからんヤツだ。
次の日、総勢三十八名による出発となり、ぞろぞろと長い列へとなってしまった。
ミナレアの民も何度もマイノカの町にきているので獣道みたいな道ができており、何事もなくミナレアの民の村へと到着できた。
「……意外とかかるのだな……」
霊装術をしたまま歩くからヤトアは息も切れ切れ。その根性には呆れるよ。
「レオガルド様、ミナレアの民のところにゴゴールがいました。どうも秋の頃から定期的に通っているそうです」
情報収集役の女(ゼルム族)がミナレアの民の町の情報を持ってきてくれた。
「なにを持ってきてるんだ?」
「ケセで編んだ籠などを持ってきているようです」
「ケセ?」
これですと、ザルを出してくれた。
……竹か、これは……。
「いいものだな。使えるものがあったら仕入れてくれ」
木の蔦で編んだものよりよさそうだ。
他にも情報を仕入れてきた者から聞き、ミナレアの民とゴゴールとの間に商売の関係ができてるのがわかった。
「……そろそろ貨幣を考えないといけないな……」
まだ金属加工の技術もないが、鎧竜の鱗から作るのもいいかもしれん。鎧竜を狩れるのはオレくらいだしな。
「狩りにいってくる」
ここにくるまで順調だったが、それはオレの胃を満たしてくれる獣やモンスターがいなかったってことだ。
「師匠、おれもいく!」
「邪魔だ。霊力のコントロールでもやっていろ」
オレの全力疾走についてこれないんだからついてこられても迷惑でしかないわ。
二時間ほど駆けるが、小腹を満たす獣しかいない。やはり、ちょくちょくきてると逃げ出してしまうんだな……。
なんとか夕方になるくらいに火を吐くゴリラの群れを見つけられた。
「久しぶりだな、お前たち!」
母上様といた頃はよく見たが、一人立ちしてからは一回か二回見たくらい。なかなか貴重な存在である。
吐いてくる火を風で躱し、爪で喉をかっ斬ってやる。まずは今夜のメシゲットし、明日の分に持ち運びやすいゴリラの脚を折ってやった。
「いただきます」
喉をかっ斬ってやったゴリラをバリボリと食らい、腹を満たした。
「ゲフ。ごちそうさまでした」
このまま眠ってしまいたいが、明日にはゴゴールのところへと出発しなくちゃならない。今日中に帰らないとな。
折ってないほうの脚を噛み、ミナレアの民の村へと戻った。
「ゴアとは珍しいものを捕まえてきましたな」
夜に戻ったにも関わらず、火を焚いて待っていたゼルム族。運んできたゴリラ──ゴアに驚きを見せていた。
「あまり近づくなよ。火を吐かれるぞ」
イタチの最後っ屁みたいなことをする。いや、尻からじゃないからな。
「ヤトアも近づくなよ。お前じゃ怪我をしたゴアにも勝てないんだからな」
ゴアはモンスターだ。片脚を折ったくらいではヤトアに勝てる術はない。皮膚は厚いゴムのような弾力と強度があるんだからな。
「……人は弱いのだな……」
「その分、知恵を持っているだろう」
モンスターがどれほど強かろうが、人には考えられる頭がある。それはどんな鋭い牙や爪にも勝る武器である。
「霊装術を極めたらゴアくらいには勝てるようになるさ」
ゴアはS、A、B、C、D、Eでランク分けするならCくらい。霊装術があるならそこまでは相手できると思うな。ちなみにオレはSSSランクな。
「……あまり慰めにもならんな……」
「種としての壁は低くないからな。超えたければ別の方法を探ったほうが賢いぞ」
まあ、それで納得できなければ努力を重ねるしかない。人も限界を超えたらAランクまではいくんじゃないか?
「師匠。もう少し弱められないか?」
「痛めると鮮度が落ちるんだがな」
獣の舌は熟成肉より血生臭い味のほうが旨いと感じるのだ。
「頼む、師匠!」
まったく、熱血バカはしょうがない生き物だよ。
「ゼル。お前たちも混ざってやれ」
ゼルム族も混ざりたそうな顔をしていたので、ヤトアと一緒にやらせた。
「明日出発するんだからほどほどにしとけよ」
そう告げてオレは眠りへとついた。




