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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
黎明期編

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37 激動の年

「レオガルド様、お帰りなさい」


 コルモアの港に着き、プレアシア号から降りてギギの顔を見たらホッとしたのか、思わず深いため息を吐いてしまった。


「どうしたんです!?」


「説明はあとでする。まずは、あいつらを風呂に入れて服は熱湯で洗い、持ち物を調べてくれ。やるときはマスクをして手袋をしろ。あ、レミアも同行させろ。霊呪な道具があるかもしれんからな」


 呪法管理人にわかるかどうか知らんが、しないなよりはマシだろうよ。


「セオル。主な者を集めてくれ」


 オレの重い雰囲気を悟ってか、深刻な表情で頷き、集会場(外だけど)なところ集めてくれた。


「すまんな。急に集まってもらって」


 風で雪と寒さを遮断し、焚き火で暖を取ってもらいながら話を始めた。


「オアール人とはまた厄介な者を拾ってきましたな」


 当然のように知ってたか。


「ミドガリア帝国にとって宗教国家はどんな位置にある?」


「水と油、ですかね。馴染めなくてよく戦争をしています」


 つまり、どっちもどっちと言うことか。水と油なら共闘しないだけマシと思おう。


「技術差は?」


「そう大差はないかと。ミドガリア帝国と差を開けられないようアイアナも技術を求めてますから」


 だろうな。パラゲア大陸に開拓団を送り出しているんだから。


「オアール人から聞き出せるだけ聞き出せ。神へ祈ることは許したが、広めることをしたら罰しろ」


「ミドガリア帝国出身者はアイアナの神を嫌っているので大丈夫かと思いますが、注意しておきます」


「ちなみにだが、ミドガリア帝国はどんな神を信じているんだ?」 


 ってか、神に祈ってるところ見たことないな? それらしい偶像もないし。


「ミドガリア帝国は大陽神と月神を信仰してますが、一般人は冠婚葬祭くらいで触れるくらいですね」


 その分、軍事力に向いちゃった感じか。ほんと、宗教も軍事も迷惑この上ないな……。


「これからゴルティアを海軍将として周辺の警戒に出させろ。アイアナの開拓船なら鹵獲して、開拓民は選択させる。神を捨てる者はレオノールの民とし、捨てられない者は労働民とさせる。ただし、働いた分は食わせろ。騒がれても面倒だからな」


 将来を考えたら奴隷は悪手だ。第二民として扱っておくのが無難だろう。時間をかけてレオノールの教えを刻んでいけばアイアナの教えも消えていくだろうよ。


「それなら先にレオガルド様を奉る宗教を築いておくのはどうです? レオノール国はゼル殿が王ですが、実質、レオガルド様が仕切り、ギギ様が頂点としているのですから。これを期に国家と宗教を分けておいたほうがよろしいかと」


 なるほど。言われてみればそうだな。


 ギギに国家運営に参加させたくないし、苦労もさせたくない。心穏やかに過ごしてもらいたいなら、宗教側に置いたほうがいいだろう。そんなガチな宗教にする気もないしな。


「ただ、レオガルド様がいないとレオノール国は成り立ちませんから、離れられても困りますが」


「……獣のオレから命令されて嫌ではないのか?」


「あなたがただの獣なら嫌でしょうが、なんの因果かあなた人以上の思考や洞察力を持っている。これだけ他種族が揃って諍いなくやれているのはレオガルド様がいるからです。あなたは種族ではなく、才能で見てくれます。上司としては最高ですよ」


 他の者を見れば不満に思っている感じはしない。いい顔をしていると言っていいだろう。


「おれは、レオノールの民となれてよかったと思ってますよ」


 他の者も同意の頷きをした。


「まあ、出世欲もありますがね」


 こう言う本音を茶目っ気っぽく言えるヤツは貴重だ。物事を柔軟に受け入れられるからな。


「オレは働きに応じて地位を与える。封建制度にするつもりだ。レオノール建国のために大いに貢献してくれ」


 王位はゼルム族から出すが、侯爵や伯爵などは人間から出したほうがいいだろう。政治は人間のほうが優れているからな。


 ……まあ、安定期に入れば権力闘争とか起きるだろうがな……。


 なんて今から考えてもしかたがないか。どこかの誰かが国は三百年も続けば立派なものって言ってたしな。そのときを生きるヤツらがレオノール国の未来を決めたらいいさ。そのときまでオレが生きてるとは限らないんだしよ。


「話を戻す。アイアナがミドガリア帝国と同じなら大艦隊で押し寄せる可能性が出てきた。数年先か数十年先かわからないが、くると予想して動くことにする。ここで生きていくなら覚悟を決めろ」


 オレはギギのために、いや、オレの幸せのために他者を害する覚悟を決めている。この爪が血で濡れようとな。


「覚悟ならもう決めてますよ」


 ニヤリと笑えない獣の顔が憎たらしいぜ。


「セオル。あとは任せていいか?」


「もちろんです。あなたに有能だと見せないといけませんしね」


 まったく、できる人間は頼もしいよ。


 冬の間、オアール人たちからアイアナのことを聞き出したり、セオルたちの働きを見たりして、雪が溶け出してきた。


「ギギ。帰ろうか」


「はい!」


 ギギを背に乗せ、一緒にきたゼルム族の者たちとレオノール村……って言うか、そろそろ新しい名前にしないと紛らわしくなるな。なんて名前にする?


 まあ、急ぐことはない。帰るまでに考えとするか。


 セオルたちに見送られ、オレたちはコルモアの町をあとにした。あ、ヤトアも一緒にいきたいと言うので連れていくことにしました。こいつはこいつで放置できないからな。


 ハァ~。レオノール歴六年は激動だったぜ。

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