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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
黎明期編

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36 ハァ~

 夜中、リバットが襲ってきたが、風の刃で斬り殺していたらいつの間にかいなくなって、冬とは思えない小春日和な朝を迎えた。


「海で見る朝日はいいもんだな」


 一匹の頃は何度も見たのに、今のような感慨深い感情は湧いてこなかった。心があると言うのも良し悪しだな……。


 リバットで朝飯を済ませてると、どこかにいっていたヤトアが戻ってきた。なにか湯気を立ち上げながら。


「修行か?」


「ああ。霊装術を体に纏えるようにした」


 オレに霊力を見れる能力はないが、なんとなく感じれるくらいには野生の勘はある。なんか力が漲ってるな~ってくらいには、な。


 ……オレからしたら誤差みたいなもんだけど……。


「人間相手ならイケそうだな」


 背中から生えている触手で払ってやったらなんとか受け切った。


 オレの謎触手は百キロくらいまでなら持ち上げられ、鞭のように振るえばゼルム族でも吹き飛ばせることはできる。なのに、受け切るのだから大したものである。


「……レオガルドには及ばないか……」


「ヤトアが千人もいれば及ぶんじゃないか?」


 まあ、最初の一撃で五百人は瞬殺してしまうがな。


「…………」


 あれ? 傷つけちゃったか?


「お前はオレに勝ちたいのか?」


 生身でオレに勝つのは無理ゲーだぞ。


「勝ちたい! おれは最強の剣士になるんだからな!」


 少年漫画から飛び出してきたような野郎だよ。つーか、出てくるジャンルを間違えてるよ。


「ヤトア。お前がなにを目指そうと勝手だが、今のままでは絶対に最強の剣士になんてなれないよ」


「なぜだ!」


「精神が未熟。肉体が未熟。技術が未熟。考え方が未熟。今のお前はがむしゃらに剣を振るってるだけ。剣を何万回も振って最強の剣士になれるなら皆やってるよ」


 前世、剣士でも武術家でもなかったが、最強の剣士が最強の生物とイコールではない。この世界にチートとかあるなら別だがよ。


 この世界、ある意味バランスが取れた世界だと思う。チートなオレを殺せる武器があるんだからな。


「剣士と言いながらお前は霊装術を優先した。それはつまり、お前の中で意志が定まってない証拠だ。そんな状態で最強の剣士? なんの笑い話だ?」


 ヤトアの中に動機はあるのだろう。だが、その動機が最強の剣士とは繋がってないように思えるのだ。


 言葉を失ったヤトアを放置してオアール人と約束した海岸へと向かった。


 朝日が昇って二時間くらいだからもうきてるかなと思ったが、オアール人たちがいなかった。ウチナータイムか?


 しばらく待っていると、やっとオアール人たちがやってきた。


「決まったか?」


 オアール人の代表者な感じの男に問うた。


「……我々に神を捨てることはできません……」


「では、神とともにここで死ね」


 オレは別に宗教を否定する気はない。信じたいものを信じろってスタンスだ。だが、信じたいものを信じろと強制してくるなら拒絶するスタンスでもある。


 ましてやレオノール国には奴隷を容認するような宗教など不要──どころか害でしかない。宗教の自由を認められるのは神を信じてない国か多神教の国でしか許されないだろうよ。


「一緒に連れてってはもらえませんか?」


「無理だ。お前らが神を捨てない限りはな。救われたいのならお前らの神に救ってもらえ。オレはオレの大切な者を守らねばならんのでな」


 オレはギギの守護聖獣。ギギの大切なものを優先する。他の者は余裕があれば手を貸してやるさ。


「で、では、女子どもだけでもお願いします」


「その女子どもは神を捨てられるのか? もし偽って神の名を口にしたらオレが殺す。慈悲はない」


 そうしないとレオノールの民に示しがつかないし、オレの立場も悪くなる。オレの立場が悪くなればギギにも及ぶ。ここで妥協はできないのだ。


 苦渋の表情なる代表者の男。ってことは偽っているいい証拠だ。


「ただ、条件を飲むなら神を捨てなくても連れてってやってもいい」


 苦渋の表情が驚きに変わった。


「マイアナのこと、お前たちが信じている神のこと、どう言う暮らしていたかをすべてしゃべるなら連れてってやろう」


 ここで見捨てるのは簡単だ。だが、この世界に宗教国家があり、開拓船を出すほどの国力がある。なら、今から知っておく必要がある。備えておく必要がある。こいつらを捨てるのは失策だろうよ。


「…………」


 また苦渋の表情になる。その意味を理解したと言うことか。


「神は捨てたくない、国を裏切りたくない、でも、それで助けてくれと? お前らは異教徒にそう言われて認めてやるのか? 認めないだろう。問答無用で殺すだろう。違うと胸を張って言えるのか? もし言えるなら言ってみろ。オレが踏み潰してやる」


 威圧しながら言い放った。


「これが最後だ。今すぐ決めろ。神とともにここで死ぬか、神を捨てずに国を裏切るかをな」


「……国を裏切ります……」


 代表の男は項垂れるように決断を下した。


 気持ち的にはオレも同じだ。本当なら宗教なんぞ入れたくないんだかな。


 ハァ~。帰ったらゼルたちと話し合わないとならんな~。


 狼煙を上げさせ、プレアシア号から迎えを出してもらい、オアール人とヤトアをミドットリー島から連れ出した。


「ゴルティア。レオノールへ帰るぞ」


「はい」


 こうして新たな問題を抱えてギギの元へと帰ることとなった。ハァ~。

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― 新着の感想 ―
[一言] 偏った教えの宗教は入れたくない、だがそれを主教としてる国家の情報を手に入れる機会でもある ジレンマですねぇ、せめてその国家が今住んでる大陸に興味がなかったり国力がそこまでないのなら捨て置ける…
[一言] 神、こわい
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