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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
黎明期編

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32 礎

 三日後、コルモアの町へと出発した。


「これはいいですな!」


 かんじきを履いたゼルム族の男たちが騒いでいた。


 今年は雪が多く、移動に大変だと言うから急遽かんじきを作らせた。のだが、思いの外、使い勝手はよさそうだ。


「優秀な職人に感謝するといい」


 人間の職人にこう言うものをと口で説明しただけなのに、半日くらいで形にしてしまい、一日かけて今のを完成させてしまった。


 橇も新しくしてくれ、マンモスを一頭載せてもびくともしない。やはり、職人は人間のほうが優れているな。


「やはり何度も行き来していると道もよくなるな」


 前は四日五日くらいかかったが、今では三日もかからなくなっている。雪が降った今も新雪状態なのでゼルム族の進みは速かった。


 さすがに陽が暮れるのは早くて進む距離は短いが、四日目の夜にはコルモアの町へと到着できた。


「灯りが多くなったな」


 ベイガー族ががんばったのか、泥煉瓦の家が増えている。今のところはなんとか上手くいっているようだな。


「よくきてくださいました」


 冬でも周辺を警戒していたようで、オレが町に入るとセオルたちが迎えてくれていた。


「ああ。春までいるからよろしくな」


 ギギや同行したゼルム族には休んでもらい、リドリルに会った。


 半年くらいぶりだが、なんだか体格がよくなったような感じがする。食生活が変わったからか?


「すまないな。放っておいて」


「いや、セオルたちによくしてもらっている」


 リドリルと一緒に呪いが解けたベイガー族もいる。


 呪いが解ける前は獣の目をしていたが、今は理性的な目をしている。まあ、呪いは解けても知識はまだないだろうがな。


「今思うと、お前は理知的だよな。他の種族と交流があったのか?」


 言葉をしゃべれる時点でわかれよって話だがよ。


「子どもの頃、人間と暮らしていた」


 オレが想像してるよりこの大陸には人間が浸透してるな。言葉も人間の言葉が多いような気がする。ってか、オレ、ギギと普通に会話できたよな? 母上様も人間と出会ってたのか?


 なにかいろいろ繋がっているような気がしないでもないが、今は目の前の問題に目を向けるとしよう。


「人間とは上手く付き合えているか?」


 セオルはちゃんとやっているようだが、ベイガー族から見てそうだとは限らない。ちゃんとリドリルからも聞いておかないとわだかまりができるからな。


「……指示されて動くのが精一杯だ……」


「それはしかたがない。お前らは産まれたばかりの赤ん坊と同じだ。誰かに指示されなければ動くこともできない」


 獣の暮らしなら自分たちの考えでできるだろう。だが、文明の中で生きるには知識どころか考えることも難しいだろう。よく人間の中で生きてるなと逆に感心するよ。


「今は苦しいが、子の代には人間やゼルム族とも対等にやっていけるはずだ。少しずつでもいいから人間やゼルム族から学べ。オレがいる間はベイガー族を人として扱うから」


 ここで差別したら将来必ず問題になる。元の世界で二十一世紀になっても差別はなくなってなかった。同族であっても差別が生まれるんだ、違う種族なら想像もできない泥沼になり兼ねない。そんな世界でギギを過ごさせたくないわ。


「……わかった……」


「お前たちは、人間よりもゼルム族よりも力がある。それは種として与えられた特別なものだ。ベイガー族にしかできないことを見つけ、それを極めろ。それは必ずベイガー族の力となるから」


 差別させないことも大事だが、卑屈にさせないことも大事だ。卑屈は劣等感を生み、劣等感は僻みを生む。さらに僻みは妬みを生んでしまう。


 すべてをなくすことはできなくても役目や誇りを与えてやることはできる。少しずつ積み重ねていけばやがて国民性になるはずだ。そう信じてやっていくしかないさ。


「ちなみに、リドリルは泳げたりするか?」


「あ、ああ。貝を採るのを手伝っているからな」


 つまり、人間の動きはトレースできるってことだな。


「他の者にも泳ぎは教えておけ。ただし、子を宿した女には無理させるな。子は宝。未来を築く大切な存在なんだからな」


 人権も男女平等もない時代。と言うか概念を教えても理解できないだろうから、まずは子を守ることから教え込むとしよう。


 他にも話を聞いてやり、ベイガー族の不安を消してやった。


 時間も時間なのでベイガー族を下がらせると、セオルたちがやってきた。


「あなたは、本当に細かい配慮をするのですね」


「そうしなければならない理由は想像がつくだろう?」


 人間が一番よくわかるはずだ。人間がこの大陸にきたら他種族をどう扱うかをな。


「いずれ人間はこの大陸に攻めてくるだろう」


 これからも開拓団や艦隊はやってくる。すべてを排除できればいいが、一隻でも逃せばこちらの状況は帝国に伝わる。そうなったら雪崩のように押し寄せてくるはずだ。


 何百隻もこられたら防ぎ切れない。防ぎ切ったとしても被害は甚大。回復するのに何十年とかかるだろう。


 回復するまで人間たちが待っていてくれるならいいが、さらに大艦隊でやってこられたら奴隷待ったなし。差別問題が何百年と続くだろう。


 どこぞの国のようにやらかして、アフリカのようになったらと考えたら吐き気がしてくる。遺恨は遺恨を生んで大虐殺となるからな。


「なるべく種族差別はするな。特性を認めろ。完璧な種族はいない。よいところもあれば悪いところもある。多様性がレオノールの力だとしろ」


 一番に教えなければならないのは人間だ。人間はすぐ差別したがるからな。


「あなたが求める国になるよう努力しましょう」


 こいつがいることに感謝だな。


「ああ。期待している。レオノール国の礎となってくれ」

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