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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
発展期編

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151/225

151 誇り

 ルゼと付き添いの連中は長いこと出歩いてなかったからか、進みは遅かった。


 まあ、無理もない。違う民を治めるのが大変なもの。オレの後ろ楯があろうと気を使うことは多々あるだろうからな。


「少し休むか」


「す、すみません……」


 息も途絶え途絶えに返事をするルゼ。他も似たようなものだ。


「気にするな。これは気分転換みたいなもの。ゆっくりいけばいい」


 ルゼたちの食料はオレが運んでいる。第二次防衛線に築いた砦(と言うほどでもないがな)にいけば食料は貯めている。往復三十日かかっても問題はないさ。


 問題はオレのエサ探しにしばらく離れることだな。まあ、オレの毛で編んだ服を着ているので獣は近づいてこないだろうが、蟲や爬虫類系は近づいてくる。その間がちょっと心配である。


「今日は次の避難場所で休むとしよう」


 ミクニール氏族が逃げてきてから避難所をいくつか作ったそうだ。


「そう言えば、ミクニール氏族はまだ逃げてきてるのか?」


 その辺の話、聞いてなかったわ。


「はい。小集団で逃げてきています。話ではバリュードが増えているそうです」


「増えるだけの食い物があるのか?」


 あいつらも結構な量を食う。毎日熊を千匹くらい食わないと群れなんて維持できんだろう。


「なんでもゴルオと呼ばれる巨大な草食系モンスターを囲って飼っているようなんです」


「飼う? モンスターが?」


 いや、オレも獣でモンスターな立場で国とか創っちゃってるけど、そんなことが可能なのか? 可能だったらバリュードのボスは人間並みに知能があるってことだぞ。


「はい。草原なところに追いやって逃げないよう見張っているようです」


「賢い上に統率も取れてるな。下にも人並みに賢いのがいそうだ」


 一匹だけ賢くても群れを統率するのは難しいものだ。配下に賢いのが何匹かいて、従わせるだけの力を持ってなければな。


「厄介なのか隣にいるな」


 あちらからしたらオレがいて厄介と思っているだろうけど。


 避難所へ到達したら周囲を探り、害となる蟲や爬虫類系がいなかったらエサを探しに出かけた。


 草食系のモンスターはいなかったが、猪の群れを発見。すべて平らげてから戻った。


「また猪が多くなったな」


「はい。バリュードから逃れてきたんじゃないかって話です」


 そう言えばバリュードが出た頃も猪が多く現れたっけ。


「ミナレアでも猪を飼えばいいんだがな」


 ゼルム族は基本、草食食。脂身のない魚やササミ的なものは食うが、血の多い肉は食わない。猪を飼うくらいなら畑を広げたほうが効率的なのだ。


「レオガルド様は猪は好みじゃないんですか?」


「好きかと言えば、そこまででもないな。ただ、エサを厳選した猪は食ってみたいな」


「エサを厳選、ですか?」


「ああ。猪は雑食で味は荒い。だが、特定の豆や芋だけを食わせ、たまに酒も飲ましてゆったり成長した猪は美味いんだ」


 もう前世の記憶──味の記憶はなくやりかけてるが、たまに美味かった味は思い出す。鹿児島産の黒豚、あれは美味かったぜ。


 なんて生肉で食ったわけじゃないんで、獣の舌にヒットするかわからんけどよ。


「そうですか。贅沢な食べ方ですね」


「そんなことができるのは遥か先だろうな」


 今はまだ食料事情は厳しい。貯蔵もまだ弱い。ゴノを粉にしたものを来年に持ち越せるくらいが限度だ。豆だの芋だのを生産するのは数年後だろうよ。


 せっかくだからミナレアの作物事情を聞いた。


 ゴノの群生地があるので他の町に回せるが、畑はミナレアにいる者の胃を満たすほどではない。自然に生ってるものを集めているほうが多いそうだ。


「豆は増やしたいところですね。人間が持ち込んだ豆はゼルム族に好まれてますから」


「どんな食べ方をするんだ?」


「基本的には塩で煮て食べます。あとは潰して団子にしたり他の野菜と混ぜたりしますね」


 あまりレパートリーはないんだ。まあ、今は食べるのがやっとだから仕方がないか。


 避難所に着いたときにいろんなことを聞き、十数日で騎士ワルキューレの最前線基地に到着した。


 オレらがくることは伝令からの報告で伝わっているようで、騎士団長ワルドのミゼルが迎えてくれた。


「久しぶりだな」


「はい。ようこそお出でくださいました」


 オレが忙しいことは伝わっているようで、文句を言われることはなかった。いや、言えるヤツはいないか。


「すまんな。いろいろ任せっぱなしで」


「いいえ。本来なら我々がやらなければならないこと。レオガルド様を煩わせるわたしたちが不甲斐ないだけです」


 なにやら見ない間に礼儀正しくなってるな。なにがあった?


「そうか。立派な顔つきになったな」


 ミゼルの肩を叩いて労ってやる。理由を訊くのは野暮だからな。


「すまないが、ルゼ公爵たちを休ませてやってくれ」


「はい。急拵えですが、小屋を作っておきましたので、そこでお休みください」


 なんとも手際がいいこと。そこまで考えられるようになったか。


「お前ら、本当に立派になったな。レオノール国の守護聖獣として誇りに思うよ」


 褒めるべきところでまっすぐ褒める。ゼルム族にはこれが最大の報酬となるからだ。


 誇りを刺激され、騎士ワルキューレたちは胸高らかにオレに敬礼を送った。

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