149 町作り
ミナレアに到着すると、収穫の活気に満ちていた。
まだ秋の始まりまのになにを収穫するんだ?
「レオ様!」
「ガウ!」
レブとチェルシーが迎えてくれた。
「元気そうでなによりだ。ミディアとライザーは?」
もう誰がどこにいるかわからなくなってるよ。
「二人ならゴゴール族のところにいかしたよ。農業村ばかりじゃなくいろいろ回ってレオ様の代わりを果たせってね」
なんだろう。レブが急に大人っぽくなったんですけど。いったいなにがあったの?!
「そうか。助かるよ。本当はオレがやらなくちゃいけないのにな」
「ううん。わたしもレオノール国ために働きたいし、レオ様の力になりたいもの!」
ほんと、いったいなにがあったの? 誰に訊けば教えてくれるの? なんなの~?
と言う思いを押し殺し、謎触手でレブとチェルシーの頭を撫でてやる。その意気やよし、なんだからな。
「オレはしばらくミナレアにいるからマイノカやコルモアを見てくれるか? 道をもっとよくして往来を短くしたいんだよ。詳しいことはゼル王から聞いてくれ」
「わかった。任せて」
「ガウ!」
「頼りになるよ」
褒めて伸ばし煽てて伸ばす。叱るのは危ないことしたときだけ。オレの教育方針です。
とは言え、バリュードのことを知りたいのでルゼたちを集めて報告を聞いた。
バリュードの動きは一進一退を繰り返しているようで、騎士たちも毎日のように走り回っているようだ。
「じゃあ、あたしたちはマイノカに戻るね」
「ああ。ギギを慰めてやってくれ」
「任せて。いくよ、チェルシー!」
大人っぽいこと言うようになったが、行動はいつものレブだった。
レブとチェルシーを見送ってからまた話し合いを続けた。
「そう言えば収穫熱に満ちてたが、今の時期に収穫するものなんてあったか?」
「一昨年からコノリスを植えて、今年から収穫できるようになったんです」
コノリス? なんだっけ? 聞いた記憶はあるが思い出せん。
「木の実です。酒になる」
「ああ、コノリスな。思い出した」
ってか、そんなこと言ってたわ。いろいろありずきて記憶から落ちてたよ。
「酒か。ゼルム族は好きなことには全力だよな」
樽作りもそうだったし、サウナ作りもそうだ。好きなことにはどの種族より夢中になっていたよ。
「確かにそうですね。種からは待てないとゴゴール族のところまでいって木を掘り出しましたから」
「そんなことしてたのか」
五日から七日の距離があるのによくやるものだ。どんだけの執念だよ。
「ジュニア。そろそろマイノカに戻るか。あちらもいろいろ起きているからな」
一年以上、親と離れるのも教育上よろしくない。いずれ王となるのだからゼルのやっていることを見せておくのも大事だろうよ。
「ラゼも一旦帰ってゼル王と同盟航路のことを話し合え。なんならお前がいっても構わないぞ。外を知っておくのもいいだろうからな」
まあ、無理にとは言わない。ちゃんと同盟してからも遅くないしな。
「わかりました。王と話し合います」
帰るのは収穫が終わる頃にして、一度ジュニアを連れて第二防衛線までいってみることにする。
出発の準備が整うまでオレはルゼを連れてミナレアを見回る。
ここもしばらくこないうちに建物が増え、衣服も変わってきていた。
オレが通れるよう道を広くしてくれてるみたいだが、荷車を引いてるヤツが多くなっていて交差するのも大変だ。
「早目に交通整理員や決まりを作らないとダメかもな」
「どうしてですか?」
「こうも往来があるとぶつかったり混雑したりするだろう。並んで歩いてたら前からきた者が通れなくなる。それでケンカになったりしてギスギスした関係になったりする。そうなる前に右側交通とか、交差する場所に整理員を置いたりするんだよ。オレが歩くときも交通整理員がいてくれるとミナレアの者も困らないだろう」
町に入れなくなるのはちょっと寂しいし、邪魔にされるのも凹む。交通整理してくれるならそれに越したことはないさ。
「わかりました。話し合ってみます」
「ああ。そうしてくれ。町がもっと広がれば違う問題が出てくる。細かいことに目を向けるんだぞ」
「気をつけます」
「なにか問題があればオレに言え。恨まれる役は引き受けてやるから」
ルゼが言えば角が立つことでもオレが言えば無理矢理飲み込むしかない。そのくらいならいつでも引き受けるさ。
「いえ。わたしの責任でやります。レオガルド様にばかり苦労を押しつけられませんから」
レブだけじゃなくルゼもか。いったいなにがあったんだ?
次にコノリスの畑に向かった。
「凄いな」
三十以上のコノリスの木が植えられていた。どんだけ往復したんだよ?
「そうですね。わたしもそう思います」
ルゼも苦笑いだ。
「水路も作らないとダメだな」
川はいくつかあるから水路を伸ばすのは問題なかろうが、それをするだけの人がいないってことか……。
「土地を広げるときはよく考えて広げろよ。家が建つと立ち退きさせるときごねるヤツも出てくるだろうからな」
「確かに。そう言うこともありますね」
そんなことがあったようで真剣な顔になっていた。
視察しながら問題になりそうなことをルゼに伝えていく。
まったく、町作りも苦労が多いもんだ。これは長老たちを集めて話し合わんといかんな。ヤレヤレだよ。
 




