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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
黎明期編

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13 天敵

 あれはヤバい! 


 と、これまで野生の勘など発動したこともなかったが、今初めて野生の勘が叫び捲った。


 咄嗟に風を起こし土を巻き起こして銀色弾の軌道を反らした。


「ギギ。降りてろ」


 ギギの腰に巻いている毛を解いて背から降ろした。


 突風に近い風をまともに食らった兵士は吹き飛んでおり、何人かは首の骨でも折ったのか事切れているのがわかった。


「皆、出てこい。武器を取り上げろ」


 ゼルム族を呼び、兵士たちから身ぐるみ剥いでやった。


 運がいいのかゴッズ将軍と呼ばれた男は生きており、パンツ一丁にして後ろ手に縛ってやる。


 兵士たちも捕縛し、荷物部隊は抵抗しないので一ヶ所に纏めて何人かで見張らしておく。


「銃や火薬は纏めて村に運べ。セオルに管理させろ」


 火薬はいずれ必要となる。大事に保管しておかないとな。


「放せ! 放さんか! 獣風情が!」


「威勢のいい人間だ」


 己の立場もわからないでよく将軍とかになれてんな。縁故採用か?


「そんな獣風情にお前は負けたんだよ。将軍なら潔く降伏しろ」


 爪の裏で将軍どのをデコピンしてやる。もちろん、超手加減してな。


「さて。お前らに選ばせてやる。ここで死ぬかこちらに従うかをな。沈黙は死だと判断する」


「し、従います!」


 一人が口走ると、感染したかのように次々と従うことを表明した。選ばしておいてなんだが、この軍隊、大丈夫か? 


 ま、まあ、従わなかったり働かなかったりするなら殺すまで。人権などないと思え。


 荷物部隊にも選ばせると、第三の選択を要求してきた者が半分以上いた。


「帰らしてくれ! 家族がいるんだ!」


 とのことだ。まったく、勝手なもんだ。


「お前らは侵略してきた者に優しくしてやるのか? なら、今からお前らの家族を殺して、財産を奪っても許してくれるよな?」


 無慈悲、とか言わんでくれよ。ここではまだ愛と正義はお呼びじゃないんでな。


 荷物部隊も渋々従うことを承諾した。


「お前ら、出てこい」


 調査にきた者たちに言うと、すぐに出てきた。両手を挙げて。


「お前らは帰っていいぞ」


「……いいんですか……?」


「こちらは侵略してきた者に容赦はしないが、交流を求める者には友愛を示す。オレは粗暴でも野蛮ではないからな」


 オレは、インテリジェンスビースト。力には力を。会話には会話を、だ。


「こちらと本当に交流したいのならレオノールの者もコルモアの町に入れるようにしろ。あと、捕まえた者を返して欲しければ出すものを出せ。こちらは仕事を中断して対応してるんだからな」


 ゼルム族に目配せして撤収を指示した。


「ゼル。話のわかるヤツを何人かつけてやれ。わかってるな?」


「ああ、わかっているさ」


 情報収集の大切は解いてある。ゼルム族を発展させたいなら聞き出せるだけ聞き出し、人間を学べ、だ。


「人間たち。逃げたいなら逃げてもいいが、この辺は毒のある草があるから気をつけろよ」


 オレには効かないが、ゼルム族には効いた。なら、人間にも効くはずだ。なんなら誰かに試してもらいたいくらいだ。


 人間たちの足が遅く、三日もかかって村へと戻ってきた。


「セオル。捕らえた人間たちをお前の下につかせる。逆らう者がいたらオレに言え。森の奥に捨ててくるから」


「わかりました。では、レオノール軍として組織しますね」


「ああ、任せるよ、セオル将軍。ゼル。お前は大将軍な。セオル将軍から組織を学べ」


「学ぶことばかりだな」


「死ぬその日まで学ぶことばかりだよ」


 あとは任せてオレは狩りに出かけた。獣のたぎりを鎮めるためにな。


 獣の性は薄いオレでも血の臭いに闘争本能を刺激される。鎮めるためには狩りをするしかないのだよ。ハァ~。


 賢者となって帰ってくると、ゴッズ将軍が磔にされていた。なにがあった?


「すまん。妻を侮辱されて我慢できなかった」


 ゼルが前脚を折って謝罪してきた。ってか、お前、結婚してたんだ!? 言えよ、そう大事なことは!


「ま、まあ、それならしょうがないだろう。見苦しいから穴に埋めておけ」


 死ぬそのときまで状況を理解できないバカなどいなくてもいい。他にもしゃべってくれるヤツはいるだろうからな。


「セオル。そいつの副官とかはいるか? いたら連れてきてくれ」


 で、連れてこられたのは軍人にしては細い体格をした四十歳くらいの男だった。


「ゴッズ将軍の側近の一人で、ヤガルだ」


 下だった男に呼び捨てにさて不快に思ったのか、顔をしかめるヤガル。なんかダメな軍隊だった感じがよくわかるな……。


「一度しか問わない。あの銀色の弾はなんだ?」


「……知らん」


「シナド。こいつを実験に使え。死んだら死んだで構わん」


 騒ぐヤガルをセオルの部下に連れていかせる。人類に貢献してこいや。


「ヤガルの次を連れてこい。いや、銀色の弾を撃った者らを連れてこい」


 確か、半分は生きてたはずだ。


 オレの前に並ばされた者たちは、恐怖でか青い顔で大量の汗を流していた。


 ……命が軽い時代なのに、死にたくない思いは強いとか皮肉でしかないよな……。


「あの銀色の弾、あれはなんだ? オレだから使ったよな?」


 機密なのか、誰もしゃべろうとしない。


「セオル。銀色の弾を持ってきてくれ」


 貴重なようで銀色の弾は二十発もない。


「見てるだけでヤバいってわかるよな、これ。セオルは知っているのか?」


「おそらく、呪霊が込められたレイギヌスだと思う。その情報を知らされる立場ではなかったから本物かどうかはわからんし、どう言うものかもわからん」


「呪霊か。そういやそんなのがある世界だったな」


 前にギギから聞いたが、あまり興味なかったから忘れていたわ。


「オレは選ばせてやったよな? 死ぬか従うかを。従うならレイギヌスがなんなのかをしゃべれ。沈黙は反逆とみなす」


 観念したのか、レイギヌスはオレのような霊獣を殺す呪具であり、この世には呪霊師なるものがいるとのこと。


「そう、上手くはいかないか」


 オレにも天敵はいるだろうな~とは思ってたが、まさか人間が天敵だったとは思わなかった。呪霊師か。相まみえるまで対策を考えておかんとな。まだギギを残して死んでられんのだからよ。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] いつか独立戦争が起こりそうですね 開拓地の民と本国で
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