114 移住
長老たちと話し合い、外れにある村の者をブランボルの町周辺へと移すことに決めた。
十数人の規模の村なので、そう難しいことではないだろうが、オレがいかなければ面倒なことになるだろう。だからオレがいくことは決定として、食料持参で荷物運び用に猟兵を十人ばかり連れていくか。
「ギギとゴゴールの巫女を連れていく」
ゼルのとき一緒に回ったから顔は覚えているだろうし、オレらの立場を刻んでおく必要もある。まあ、ギギと一緒にいたいってのが本当の理由だどな。
猟兵を集め、外れの村の者をブランボルへ移動させることを説明する。
「お前たちは、外れの村までいったことはあるか?」
「はい。狩りの拠点としますので」
「かなり遠くまでいくんだな?」
ゴゴールの脚でもちょっとそこまでって距離ではない。いくとなればそれなりの装備をしないとダメだろうよ。
「グローノが狩れるので」
なんでも小動物で、毛皮として狩るようだ。
「防寒着として優れているのですが、警戒心が強くて外れの村までいかないと見つけられないのです」
「外れの者はそれで生きています」
なるほど。外れに住む理由でもあるか。
「なら、猟兵の活動拠点とするか。あちら側からモンスターがこないとも限らないからな」
そうなると猟兵の下部組織を作ったほうがいいかもしれんな。下部組織で何年か従事してから猟兵試験を受けられるとかな。
「長老の許可は得ている。三十人分の食料を運んでこい」
人間を移し、加工技術を教え、煉瓦の倉庫を造らせて貯蔵させてはいるのだ。
肉は現地調達するにしても食料は持っていったほうがいいだろう。
用意を整え、まずはミラーダと呼ばれている村へと出発した。
オレが周囲を回ったので、肉食系のモンスターや獣の姿はなく、三日で到着できた。
「長は誰だ?」
出払っている者以外は全員集めた。
「わ、わたしです」
白髪混じりの男が前に出た。
「お前たちをブランボル周辺へと移動させる。食料や仕事は与える。すぐに準備しろ」
と言ってすぐに動ける者はなし。戸惑いばかり見せていた。
「ここに住んでいるとお前らを守れない。だから、ブランボル周辺に住んでもらう。これはレオノール国としての命令だ。もし、従わないのならレオノール国から追放する」
「これはブランボルの長老たちも認めている。お前らを差別したら蔑ろにしたりはしない」
「皆さんを守るためです。従ってください」
説得はゴゴールの者に任せ、オレときミラーダの者らを見下ろしていた。
「村の者と話し合いたいのですが」
「二日だ。それ以上はまたない。他の村にもいかないとならんのだからな」
この時代で説得なんてしても時間ばかりとるだけ。強い者が命令する。をやればいいのだが、外れの村は二十近くあると言う。
これは試しだ。説得の時間を与えてどう動くかを見るためにな。
オレはその場から動かず、ギギを乗せたまま見守った。
夕方になり、狩りへと出た男たちが戻ってきて、話し合いに混ざった。
どうなるかと思ったが、話し合いは一夜で終了。朝にはブランボルへ移る準備を始めた。
「もっと揉めると思ったんだがな?」
誰か説明プリーズだ。
「外れの村は毎年餓死者が出ますからな、暮らしの面倒を見てもらえるなら移るでしょう。まあ、一人くらいはごねる者がいるから一晩かかったのでしょう」
なるほど。そう言う事情か。これなら冬までには終わりそうな感じか?
昼過ぎには出発の用意が整ったが、今から出発しても大した距離も移動できないので、明日の朝一番に出発することにした。
「狩りをしてくる」
ギギを乗せたまま狩りへと出かけ、十分もしないで草食モンスターを発見。サクッと狩ってミラーダ村へと戻った。
「これを食って力をつけておけ」
草食モンスターを渡して腹一杯食わせ、残った分をオレがいただいた。
朝になりブランボルへと出発する。
戻りも何事もなく、三日で到着できた。
まだ秋の収穫で人手はないが、今回は穴を掘った地下住居で凌いでもらおう。
家族分の穴を掘り、雪の重みに耐えられそうな木を倒してきて屋根の梁とする。
細かいところはミラーダ村の者に任せ、違う村へと出発した。
次の村もそれほど問題もなく移住することを了承し、ブランボルへと移動した。
人が増えればやることも増える。四つの村の者を連れてきたら地下住居作りも加速し、泥煉瓦作りにも移れるようになった。
さらに五つの村の者を移住させ、この冬を乗り切るために木を切り、大量の薪を作った。
マイアナに出稼ぎに出ていた者が戻り、移住組も混ざって粉にする作業をした。
オレはその間、騎士試験を見にいっていた猟兵たちと話し合い、訓練場を予定した場所を開拓した。
やがて空から雪が舞い落ちてきた。
「今年も雪が降るのは遅かったな」
「はい。お陰で冬を越える準備が充分できました」
毎回のこととは言え、冬を越す準備は一苦労だぜ。
「冬の間は任せる。春になったらまたくる」
マイノカに戻ってゼルとの話し合いをしなくちゃならないからな。
「訓練を怠るな。春から猟兵試験を行うんだからな」
「もちろんです。騎士に負けていられません」
やる気があってなにより。しっかり鍛えておけ、だ。
「マイノカに戻るのはオレとギギ、ヤトアだけにする。巫女と守人たちは残れ」
巫女と守人には移住組を面倒見てもらうために残すのだ。
「はい。わかりました」
雪が本格的に降ってきた日にブランボルを出発。ギギとヤトアを背に乗せて全力疾走でマイアナへ向かい、レブとチェルシーを連れてマイノカへと帰った。
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