101 情報の大切さ
三日かけてマイノカへと到着した。
「道も固まってきたな」
一番往来があるので道も固まりなだらかにもなったことで、五日くらいかかってたのに三日で到着できるようになった。
「レオガルド様。お帰りなさいませ」
マイノカがオレらの故郷なので、お帰りなさいと迎えてくれるのだ。
「ただいま」
なかなかマイノカにいられないが、お帰りと言われたらただいまと返せるくらいにはこの地に愛着はあるようだ。
「三日ほどマイノカで休んだらミナレアと向かうとしよう」
道がよくなり短縮できたとは言え、ギギたちには辛い道程だ。三日くらいは休ませる必要はあるだろう。
その間にオレとミディアはゼルたちと話をする。
ゼルム族には輸送隊が各村を回り、情報を集めるようにし、その情報を人間に記録させて主要メンバーには読ませている。
情報収集、情報共有、情報把握、情報精査。ゼルたちにそれらを強く教えてあるのだ。
「ゴゴール族から出稼ぎが出るようだ。あと、人間の職人を回して欲しいそうだ」
「セオルに伝えて融通してもらえ。結婚していて移住するなら優遇するとな」
ゼルム族にも口が上手い者はいる。そう言うヤツを交渉人──高級次官として各村へと送って物事の調整をさせたりもしているのだ。
「食料はどうだ? もしかするとコルモアへと送るかもしれん」
「去年は豊作だったので問題ない。ただ、塩の消費は増えたようで増産して欲しいな。ルゼよりミクニール氏族がやってきたと報告がきた」
「ミクニール氏族とはゼルム族か?」
「ああ。どうもバリュードに追いやられてきたようだ」
「難民か」
また厄介な。
「なんみんとは?」
「戦いや災害で住む土地を追いやられ、食料もなにも持たずにやってきた者たちのことだ。百人二百人ならまだしも千二千人となると国が傾きかねないものになる。人間がこの大陸に人を送り込んでくるのも似たようなものだ」
難民問題は五百年経っても解決できてない問題だ。この時代で解決なんて無理なことだろうよ。使い潰すんじゃなければ、な。
「ミクニールをどうするかは伝えたか?」
「いや、まだよくわからんのでルゼに任せてある。あちらも食料に問題なさそうだからな」
まあ、ゴノの実が豊作だったからな、暴動にはならんだろう。統率された騎士もいるしな。
「わかってはいたが、食料があると言うのは心強いものだな」
「腹が満ちていればバカな考えはしないものだ。マイノカのゴノはちゃんと育っているか?」
くる途中に畑があるので枯れてないのはわかったが、一年を通してみてるわけじゃない。収穫量もまったく知らないのだ。
「雪が降ったときは重さで折れたのが何本かあったが、大体は育っている。去年は倉一つ分は貯蔵できた」
倉一つ分では大した量ではないが、その日暮らしだった頃に比べたら大進歩だろうよ。
「そう言えば、鎧竜はどうした?」
見てるようで見てない鎧竜。よく見ないと岩でしかないから意識から外れると気にもならないのだ。
「順調に育ってはいる。あまり動いている姿を見てないがな」
住んでいても動いている姿を見てないのか。小さいときはあまり動かないモンスターなんだろうか?
他にもいろいろ尋ね、マイノカの情報を聞いた。
「また銃士隊を連れていくが、不満な声は上がっているか? 特に嫁や子供から」
銃士隊の大体は所帯を持っている。半年以上いないとか離婚案件だろう。
「男が何日も狩りにいくのは昔から。そのことで怒る女はいないさ」
言われてみればそうだな。ゼルム族は狩りで生きてきた種族。いや、正確には採取で生きてきたか。食い物を求めて何日も集落を空けることは日常だったな。
「また冬まではミナレアにいると思う。なにかあれば連絡を寄越せ。今はミディアもいる。三つに割くこともできるからな」
チェルシーもSランクに近く、ミディアはAランクだ。並みのモンスターなら余裕で狩れるだろうよ。
「わかった」
一応、マイノカの周囲をパトロールし、忍び込んでいるモンスターがいないかを探り、いないことを確認してから銃士隊を連れてミナレアへと出発した。
ちなみにヤトアの嫁さんたちはマイノカに置いてきた。妊娠したと言ったのでな。
ならヤトアも残れと言ったが、面倒をみてくれる者もいるとミナレアについていくことにはなった。
「今年で解決できるといいんだがな」
「師匠。それフラグだぞ」
思わず呟いてしまったらヤトアから指摘が入ってしまった。
「そ、そうだな。すまない」
イカンイカン。教えたオレがフラグ立ててどうする? 最悪を想定して最適に動くとしよう。
いろいろ覚悟しながらミナレアへと向かった。




