第17話 「後悔しても知らないわよ」
私は、アイリーンと策略を練り、無事に成功した。
私とアイリーンが本気で喧嘩をする。そして、ルルーラが喧嘩をするのを見て申し訳なく思い、私の話を聞く。うん。言葉だけで言えばとても簡単なことだ。だが、実際にはそんなにうまくいくとは思っていなかった。だから、この策略が失敗した時の第2パターンや第3パターンなど複数の戦略を立てていた。だが、まさかこうも簡単に第1パターンの作戦で成功するとは思ってもいなかった。
何だか、拍子抜けだった。
「私はまんまとはまったとね」
「あはは。バレていたのね」
「アイリーンの演技はかなり下手だった気がするけどね」
「うぅー、気付いてなかったくせにぃ」
アイリーンとルルーラの2人が言い争っている。まあ、言い争っていると言っても仲がいい2人のちょっとしたじゃれ合いみたいなものだった。
「さて、ルルーラいいか? 話をしても」
「ええ、いいわよ」
「私は、今この王国の宰相を国王陛下から任された。だが、この国には多くの問題がある。そのためには、私1人でできることなど限られている。だからこそ、私はこの王国の政治制度を改革しようと思っている。最初に行うのは、複数大臣制の導入だ。今までは宰相1人で判断していたものからそれぞれ担当分野を持つ大臣数人が政を行う。そんな体制を作りたいと考えている。その中で、ルルーラ、君には科学技術担当の大臣になってもらいたい」
「科学技術?」
「ああ、君はいろいろな物を発明する研究者みたいな存在だというのをこの研究室を見てよくわかった。その研究はどんなものをしているか分からないが、この国のために役に立つものもあると思う。だから、君にはこの国の発展のためにいろいろな発明をしてもらいたい。だからこそ、科学技術担当大臣を任せたいと思ったんだ」
私は、今回ルルーラを訪れた理由を詳しく説明する。
ルルーラは私の話を静かに聞いていた。さっきは一瞬で話を断っていたが、今度ばかりはそんなことをしなかった。私との約束をしっかりと守ってくれている。とても、ありがたいことであった。
「で、どうだ。私の話に賛同してくれるか?」
「うーん。実はまだ迷っているの」
ルルーラは、この話を断りはしなかったが、断わることに近い発言をしてきた。
あ、これはダメな奴か。
私はそんな予感がしてきた。
話を聞いてくれたところまではよかったが、やはりつらいか。
「迷っているってことは話に乗ってくれる可能性もあるってことだよね。私、宰相様の秘書をやることになったの。一緒に仕事しましょうよ」
アイリーンがポジティブにルルーラの話を解釈していた。
「あなた、私の話を良いように解釈しすぎよ。そして、宰相のあなたはこの子が秘書でいいの?」
「まあ、そこは……何とかなるだろう」
「後悔しても知らないわよ」
「……」
やはり、アイリーンのドジぶりからかなり心配されているようだ。
「そこは大丈夫とか言うところじゃないの?」
「……」
「宰相様、何とかフォローしてくださいよ!」
私がルルーラの言葉に対して無言だったため、アイリーンが何かフォローしてよと言ってくるも私は、ルルーラの指摘は至極当然なことであったので返答のしようがなかった。
「……フォロー、か」
「いやいや、何でそんな重たい風に言うのですか? 私だっていろいろとできますよ!」
アイリーンが自分はできますアピールをしてくるもこの子がダメダメな子だということはもう私の中で印象づいている。
「わかったわ。この子のことが心配だし、あなたかなり面白そうだからこの話乗ることにするわ」
「本当か!」
「ええ、二言はないわ」
「じゃあ、頼む」
私は、ルルーラと握手する。
こうして、私の政権の1人目の大臣。科学技術担当大臣ルルーラが誕生したのだった。




