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第11話 「わかった。君を秘書に任命する」

 連続投稿11日目。


 アイリーンは私に魔法を当ててしまった。

 一介の生徒が宰相に手を出した。普通に考えればそれだけで重罪だ。だが、私は知っている。彼女がわざと私に魔法を当てたわけではないことを。なので、罪に問うつもりなど全く持ってなかった。

 しかし、今までのこの世界の常識であればそのことは考えられないことだったようだ。私の話を全くもって聞いてもらえない。

 むしろ、どんどんと悪い方向に話は進んでいく。


 「さ、ささ宰相様。わ、私なんかでよろしければ抱かれてもいいですから」


 「ぶぅ」


 つい驚いて変な風に吹き出してしまった。宰相として恥ずかしい限りだ。いや、政治家としても動揺してはいけないのについ動揺してしまった。

 だ、抱くって意味を分かってこの子は言っているのだろうか?


 「抱くの意味を分かっているのか?」


 「ええ、分かっています。私はそれほどひどいことをしました。宰相殿の気分が晴れるように私の体を好きに使ってください。私の処女をもらってください」


 勘違いしていなかった。

 この子の年齢は大体女子高生から女子大生ぐらいだ。つまり、この子をだけば日本であったら私は週刊誌で叩かれ辞職ものだ。世間からものすごいバッシングを受ける。女子高生であれば法律に違反する。

 そんなことできるわけないか。


 「私はそんなことするつもりないぞ。そうだ。君は何か得意なことがあるか?」


 私は、話をそらすため違う会話を始める。


 「と、ととと得意なことですか? そ、そそっそそうですね。わ、わわ私は得意ではないですけど趣味で本を多く読みます」


 ……本を読む、か。読書家ということだろうか。

 でも、どんな本を読むのだろうか。


 「どんな本を読んでいるのか?」


 「……言わなきゃいけないですか?」


 言わなきゃいけないということは言うのが恥ずかしいようなものを読んでいるのだろうか。だったら、わざわざ話を聞かない方がいいか。


 「いや、いい」


 私はアイリーンの気持ちも考えて話を聞かないでおく。


 「わ、わかりました。れ、恋愛小説とかです」


 いや、私は言わなくていいと言ったよな。

 それなのにどうして答えたんだ。

 アイリーンはモジモジしながら恥ずかしそうに答えた。いや、恥ずかしいならわざわざ答えなくてもよかったのに。


 「は、恥ずかしいですぅ」


 恥ずかしいなら本当に言わなければよかったのに。


 「普通の専門書とかは読むのか?」


 「専門書?」


 ああ、この世界にはそんなに文字がないから専門書がないのか。その割にはなぜか恋愛小説が存在しているという謎があるが。小説があっても文字を読めるのが貴族とか偉い階級の人しかいないのだから需要は少ないのだろうか。

 売上とか大丈夫なのか。


 「魔法の本とか、かな?」


 私は聞く。

 魔法の本ならあるだろう。ただ、私が本当に求めているのは農業とか産業とか工業とかそういった専門の本だ。


 「専門的な本なら旅行の本とか読みましたよ」


 旅行の本。

 つまりこの国の地方とかに詳しいということだろうか。

 アイリーンは私に悪いことをしたという思いがあるから今私が否定的なことを言っても話を聞かないだろう。だから、彼女を何かしら利用しよう。言い方が悪いが。


 「わかった。君を秘書に任命する」


 私は、アイリーンにそう言うのだった。


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