69 ケルベロス
お待たせいたしましたm(__)m
やってきた四十六階層。
そこはボス階層のように荘厳とした階層だった。
「また柱がたくさんだな。まあ柱の間隔はそれなりの距離が空いているから邪魔にはならんが」
「あっ、大地さん!」
「ああ。見えてる。階段降りばっかのここからわかるって相当でかいんだろうな」
視線の先には真っ黒な魔物が見えていた。
近づいていくと大きさがよくわかる。おそらく体高が四メートルはあるのではないだろうか?体長はもっとだろう。そしてその魔物は頭が三つある狼だ。いや…ケルベロスだとしたら犬か?
「ケルベロスね」
ケルベロスじゃなかったら逆に不思議だ。
「にしてもでかいな…モモとユキは離れとけ。本気でやるから」
「はい!」
「気をつけてね」
「おう」
んじゃやりますか。
「グルルルルル……ガァァァァア」
俺がやる気なのがわかったのか、先程まで六つの目で俺を見ていたケルベロスが突如唸り声を上げ吠えた。
「オラァ!」
一気に駆け出し、殴りつける。すぐさま後ろに飛び距離を空ける。
「手応えは良かったんだが…」
苦しむ様子もなくこちらを睨みつけるケルベロス。
【身体強化魔法】も【怪力】も硬化系スキルも発動させているのだが…物理耐性が高いのだろうか?
「ガッア!」
「ちょっ…ぐはっ」
「大地さん!?」
「大地!?」
「ガァ!」
突っ込んできたケルベロスの速度が異常に早く避けられず真ん中の頭にどつかれた。
ダメージはたいしてない。驚いたが…すぐさま体制を立て直そうとすると左右の頭が大口を開け迫ってきた。
「はえーなおい!」
正面に転がりケルベロスの股下を抜けながらも魔力を盛大に込めた火魔法を発動する。
ドンッ!!!
「あちぃ!」
あつっ!熱いなおい!……俺が自爆しただけか…。んでどうなったかね。煙で見えないが念のため距離を置いていつでも魔法を放てるように火の球を手のひらに出し待機する。
「「「グルルルル…」」」
まあ生きてるわな。
でもお腹…はっきり言えば股間あたりに火魔法を球の形とか意識せずに放出したんだが…無傷だったらどうするか。
煙が晴れると座り込んでいるケルベロスがいた。座り込んでいるというか…後ろ足が上がらないのか?
「おっし。いい的だな」
嬲るのは好きじゃねぇから…全力の魔法一発で終わらせてやろう。
やっぱり矢だな。巨大な…ミノタウロスの時よりも大きく、そして火を纏わせ…着弾と同時に爆発するイメージで…。
「……さ…!だ…さん!」
「だい……!」
「あ?」
声が聞こえてきたので離れたとこにいるモモとユキを見るとあんなわちゃわちゃ…ワタワタとしてた。
……モモがやっているだけなら無視一択なんだが…ユキもなんかやってるんだよな。なんだ?ケルベロス?
目の前には巨大な火の矢がありケルベロスは見えないが…魔力を送り込んでいる手の位置は変えず身体をずらしてケルベロスを見てみると三つの頭がそれぞれ大口を開けて…。
「おいおい…ケルベロスってブレス使うのか…?」
大きく開いた口には青白い光が燦々と輝いていた。
「まあやることは変わらないからいいか…」
魔力を注ぎ、この後戦闘続行の可能性も考え三割程度の魔力までにしておく。
「おっらあ!」
俺の何倍も大きな矢を思い切り放つ。わざわざ相手のブレスを待ってやる気はない……。
ドォォォォォン!!!
……ケルベロスはブレスを放つのを待っていてくれたのか…?いや、放つタイミングがたまたま同じだっただけだろ。うん。
「やば!?」
横に思い切り跳ぶと青白い光が俺の後ろを通り抜けた。
「おいおい…競り負けた、のか?かなり魔力注いだぞ?って連続ブレスかよ。連発できんのか」
しかもバチバチ音がしてるってことは…雷か?犬のくせに雷のブレスってどういうことだよ。
ゴォォォ!
物凄い音がしながらブレスが迫ってきた。速度もかなり速い…というか放たれる瞬間に横に飛ばないと避けるの難しそうなんだが…。
ドォォン!!
「威力もかなりあるし…」
迷宮馬鹿なの?四十六階層でコレって…四十七から五十階層はどんな化け物が配置されてんだよ。
とりあえず宙に浮きながらケルベロスに向かって木、水、火、氷の槍や矢、着弾と同時に爆発するものを放っていく。
そしてブレスを使ってくるときは放たれた瞬間に移動しギリギリで回避していく。
どれくらい経っただろうか。俺の攻撃は当たってはいるが大して堪えたような感じはせず、そしてケルベロスの攻撃は今のところ全て避け切っている。
そしてケルベロスは先程からブレスを撃って来なくなった。
「魔力がもうないのか?作戦か?」
とりあえず巨大な矢をもう一度作ってみる。ブレスがまだ撃てるなら撃ってくるだろう。…これが直撃すればさすがに無事ではないから余裕があるなら撃ってくるとは思うが…なにもしてこない。
ならば遠慮なくぶっ放させて貰おう。巨大な木の矢に火を纏わせ放つ。
「「「ガァァァ!」」」
今度は威嚇するような声ではなく叫び声が聞こえ…そして、矢による煙が晴れるとそこには銀色宝箱が。
「終わったか」
「大地さんお疲れ様ですー!さっすが人外ですね!惚れ惚れしました!!」
「……褒めてんのか?それとも馬鹿にしてんのか?」
「物凄く褒めてます!!」
…ならいい。
「大地お疲れ様」
「ああ…さっさと宝箱を確認して次に行こう」




