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68 城主=小間使い



「………んで。お前を倒せばいいのか?」


「違う!いや、違うわけではないのだが…吾輩に戦う気はない!」


「あ?どっちだよ」


「バフォメットを瞬殺するようなやつに吾輩が敵うわけないだろう!?」


なんかキレられた…。なんだこいつ…。


「んで、なんだよ。階段の場所教えてくれんなら別に…あ、お前を倒したら宝箱でるか?」


「!?でない!出ないからな!?攻撃するなよ!?」


「本当か?」


「本当だ!吾輩はボスではない!……元は迷宮核の小間使いだ。それで迷宮核からバフォメットを誘導スキルで操って大地殿を襲わせろ、と言われてだな…」


だんだん尻窄みになっていく吾輩さん。小間使いなのに吾輩って一人称使うのかこいつ。


「それで?」


「うむ。話を聞いてくれるのは助かる。それでだな、吾輩はボスではないから宝箱は出ないし、後で復活させてくれるとは言え死にたくもないし…なのでこの下の階層の情報と階段までの案内を買って出ようと思ったのだ!」


「あーうん。じゃあ頼むわ」


「ダンピールさん敵じゃないです?」


「でも倒せば誘導のスキルペーパー落ちるかもしれないわよ?」


「そこの妖精!余計なこと言うではない!大地殿がやる気になったらどうしてくれる!?」


「いや、誘導なんて要らないし。それに淫魔法でも似たようなことできるだろ?」

 

「まあそうね」


あからさまにホッとしたような吾輩さん。罠…ではなさそうだな。本当に残念系ダンピールの吾輩さんだ。モモと同類だな。


「では移動しながら話そうと思う。まず階段はこの下なのだが迷路になっているのでな。吾輩についてきてくれ」


「了解」


「それで次の階層から敵は一体だけになる」


「ボスってわけじゃなく?」


「うむ。迷宮核が少し前に弄ったのだ。なんでもお茶友…大地殿に早く会いたいらしく、わざわざ時間のかかる階層にすることもないから、と」


お茶友って…めんどくせぇ…。


「つか経験値もドロップアイテムも欲しいから別に嬉しくもないんだが」


「それについては心配しなくていいらしい。元々次の階層はオルトロスという魔物が出てくる階層だったのだが、次の階層の一体を倒せば階層内よオルトロス全てを殺した時と同等量の経験値が手に入れられるようにしたらしい。その分強いらしいが」


一体倒すだけで何十何百体分の経験値、ね。ならいいか。


「ドロップアイテムは?」


「オルトロスのドロップアイテムは落ちないが、オルトロスの上位種を敵として配置してあるのでな。オルトロス上位種が持つスキルと肉体の一部は全て各一種ずつドロップするようにしてあるらしい」


「ほー。太っ腹だな」


「いや…大地殿なら時間をかけても本来配置してあった魔物なら問題なく倒せるから問題ない、とのことだ」


「そうか」


「だが今までの魔物とは比べ物にならないくらい強い魔物が配置されているので気をつけた方が良いだろう。吾輩は戦闘はからっきしなんでな。あまり強さの優劣はわからぬが…大地殿が戦ったミノタウロス殿よりも強い魔物を配置したようだ」


「なら気を引き締めないとな…だがまあ楽しみだ」


「そ、それは何よりだ」


そこで会話が途切れ、黙々と進み続ける吾輩さんを追いかける。


「なあ」


「な、なんだ?」


「次の階層以降ででる魔物がなんて種族か教えてもらえないのか?」


「うむ…。口止めされている。サプライズ、だと」


チッ。


「迷宮核はどんなやつだ?」


「迷宮核は龍の姿をしている。人間にもヒヨコにも姿形を変えることは可能だが…本来の姿は龍で迷宮核はその龍の心臓だ」


「ふむ。お前達はなんで迷宮核って呼ぶんだ?龍とかダンジョンマスターとか呼び方他にないのか?」


「龍である彼の方とその心臓の核。両方が迷宮の核としての役割を果たしているからな。人間のように名前もないので迷宮核自身が迷宮核と名乗っているのだ」


「はーん?」


「……興味無さそうだな」


「んなことないが…そんなもんか、って思っただけだからな」


「そうか…。ちなみに吾輩は詳しくは知らないが、核を覆う肉体の姿は迷宮の力を表しているらしい。龍である迷宮核は迷宮の中ではかなり高位らしいぞ」


「そうなのか」


割とどうでもいいな…。


「だから他の迷宮よりもこの迷宮は魔素濃度が高いのだ」


「そうなのか?」


「うむ。ただこの迷宮はまだお試しらしくてな。大地殿が簡単に攻略してしまうからもっと難易度を上げるらしい。大地殿は楽なタイミングで迷宮に入ったようだな」


その言にムッとしてしまう。運が良かったな、といわれているようで。確かに運が良かったのは事実だが…舐められるのは気分がいいものじゃない。


「大地さんのこと馬鹿にしないでください!」


文句を言おうと思ったらモモが声を上げた。


「いや…そう言うわけではないのだ。強い敵と戦いたいのならばある程度時間を置いてからまた挑戦したらもっと強い敵が出る、と言いたかったのだ」


「…ならいい」


「…もうすぐだ」


広間から階段を降り十分程で階段に辿り着いた。

別に案内なくても時間掛からなさそうだが…まあ楽だったからいいか。


「吾輩はここまでだ」


「おう。ありがとなー」


「ダンピールさんありがとうございます!」


「本当何もなかったわね。助かったわ」


そして吾輩さんを置いて階段を降りる。



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