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65 四十五階層


四十三階層、四十四階層と面白みのない階層が進んだ。


四十四階層は石壁迷路で、敵はウィルオウィスプ、らしい。俺の目には蛍…ビックファイヤーフライにしか見えなかったが。

まあつまりただの火の玉だ。蛍だって燃えてたし、俺の手からも火の玉くらいだせるし………何が言いたいかというとただ水をかけるだけの作業だった。

一応その火を見たものの精神を汚染する、って能力があるらしいが…効かないし、スキルペーパーとしてドロップしないみたいだからよくわからん。


初の魔物なのに目新しさがなく、ドロップするスキルペーパーも【火耐性】と【呪耐性】のみ。

頑張れば【火魔法】や【呪魔法】、他のも手に入るのかもしれないが階段を見つけるまで何匹も倒したのにテンションが上がらん。火や呪の耐性や魔法は待ってるしな。


ただ、ドロップアイテムは初めは少し嬉しかった。宝石なのかパワーストーンなのか綺麗な紅い丸い玉がドロップするのだ。

初めは、綺麗だ。売れるかも。投げたり指で弾けば攻撃として使えるかもしれない。なんて思って少しテンションが上がりかけたのだが…まあ毎回落ちるから有り難みがなくなった。


因みに宝石でもパワーストーンでもなくウィルオウィスプの核らしい。そして紅い石…ではなくウィルオウィスプさんも悪魔に分類されるらしい。ウィルオウィスプって分類するなら幽霊とか自然現象とかだと思ったが…。


基準がよくわからん。


まあ今まで出てきた分類するなら悪魔だろう、って魔物についてモモとユキに聞いてみたら、インプとかは分類するならば妖精種らしい。そしてガーゴイルは人型種って返答があったから種族の分類は割と適当らしい。


とりあえず精神に影響を及ぼす魔法を使う魔物は悪魔だと思っておくことにした。【闇魔法】使ってたやつは?と思ったが…あまり気にしないことにする。


どうせ迷宮が作った生き物だし、あんまり深く考えたら思考の迷路に陥る。ってことで考えるのを止めた。


四十四階層はこれまた石壁迷路で消化活動だ。

ジャック・オー・ランタンさんつまりカボチャ型の火の玉が出てきた。…….この迷宮火の玉好きだな。くらいの感想しか出なかったが。

これまた【火耐性】【呪耐性】が出たから粘れば魔法も出るんだろうがこれまたいらない。

ただ…カボチャがドロップした。


飯だ飯!と物凄くテンションが上がり興奮したが…食べ物ではなかった。材質が何かは知らないが味的には粘土っぽかった。


…この時ほど迷宮核への挑戦権を放棄したことを恨むことはないだろう。本気で迷宮を殺したくなった。

そんなわけでイライラしつつもとっとと階段を降った。


そしてイライラしながら…忘れていた空腹が、飢餓感が再発し次の階層で発散しようと考えつつ階段を降り、四十五階層の手前まできた。

あと数歩で階段を降り切る場所からでも四十五階層が見える。

おそらく大部屋階層。なんか凄く薄暗いが…夜空間なのだろうか?初めての環境だ。

大部屋階層に規則性はなく迷宮の気分次第で変わる物なのだろうか?それにしても暗そうだなー…目が慣れるまでここにいようか。


「大地さーん?」


「大地何固まってるのよ?」


ヒヨコが…鳥が二匹俺の目の前で羽を振っているので軽く払い退ける。


「別に固まってない」


ちょっとだけ固まっていたかもしれないが。……考え事していただけだ。


「ならなんで四十五階層に降りないんです?」


「…………お前達見えてないのか?」


階段の先を指さすとモモとユキは目を向け固まる。

ほらな?固まった。


……そう。階段を降りたところに何か立っているのだ。ただ階段付近を彷徨いてる魔物なら気にしないで魔法でも撃ち込むんだが…。


「な、な、なんですかあれ!?」


「バフォメット…よね?なんであんなとこに…」


バフォメットらしい。まあ極悪そうなヤギの頭にミノタウロス並みの筋骨隆々な肉体。薄暗いせいで凄く雰囲気がある。

そして何より…俺が階層を降りない理由はバフォメットが刺又みたいな形の二又の槍をこちらに向けて構えているのだ。しかも二匹。


また迷宮に知能を与えられた魔物だろうか。それともここで待ち受けているのがデフォルトの魔物なのだろうか?


「どうする?」


「先制攻撃です!」


「そうするしかないか」


「……ちょっと待って大地」


「あ?どうした?」


それしかないよなーと思い両腕を構えたらユキからストップが入った。


「あの二匹だけじゃないわ。ワタシが感知できる距離にあと六匹…」


「……迷宮からここで待ち構えろ、って指示でもあったのか?」


「それはないと思うけど…」


「ボスでもないですし…流石に六匹?八匹?たくさんいる魔物が知識や知能を与えられてるとは思えないです」


「お前達はたくさんいるだろ?」


「ワタシたちは人間のサポート役の為に人間への敵意とか持って生まれないからまた別よ」


「まあ…そうか。んじゃただ単にそこにいるバフォメット達はこの階層の仕様か?」


「そうじゃないですか?でも強そうですね!私も全力で先制します!」


「ああ。何匹いたとしてもこの位置なら先制だな。階段に入ってこないんだし、わざわざ俺らが出て行ってやることないもんな」


よし。

階段と階層の境目ギリギリまで行ってみると確かにすぐ近くにいるバフォメット以外にもいた。少しだけ手を突き出してみるがバフォメットは反応しない。階層に足を踏み入れなきゃ反応しないのだろうか?


とりあえず火の魔法にする。形状は…まあ球でいいか。バスケットボールサイズの火の球を六個作る。とりあえず見えている魔物の一発ずつだ。これくらいで倒せるといいが。そして未だに反応しないバフォメット。やはり階層に足を踏み入れるか、全身が出ないと反応しないのかもしれない。それなら階段前に魔物が居たら殺し放題だな。滅多にこんなことはないと思うが。


「モモ準備は?」


「オーケーです!」


モモはすぐ横で火の球を展開していた。


「なら行くぞっ」


「はいっ!」


モモにタイミングを合わせ近くにいるバフォメットに向かって魔法を放つ。


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