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60 表裏一体


迷宮核の条件を飲むと言うとミノタウロスは徐に手を伸ばす。


なんだ?

掌を上にし水平に伸ばす。その手の上辺りに黒い穴が空き、そこから以前見たスキルオーブらしき玉が落ちてきた。


「それってアイテムボックスか?」


「アイテムボックス…?次元倉庫のことか?我は使えないな。これは我が使ったわけではない。迷宮核がこちらに繋げた次元扉だ」


つまり迷宮の大元の迷宮核…もとい愉快犯さんはこの状況を見ていたってことか?というか次元倉庫とか次元扉ってのはスキルの正式名称なのか?


「ほれ。そのスキルを使うが良い。そして…我と思う存分戦おうぞ!」


こいつって脳筋の戦闘マニアみたいなやつだが、迷宮からモモ達より知識を与えられているからか頭も良いんだよな。まあやってることは意味わからんが。なんだ思う存分戦おうぞ!って。どんだけ戦いたいんだよ。もっと時間が経てば自衛隊とかが迷宮攻略しにきそーなもんだし、そいつらと戦えばいいのに。


言いたいことはあるし、釈然としないがとりあえず貰っておく。


「ん?表裏一体?」


ステータスの固有スキル欄に【表裏一体】というスキルが追加された。


「ああ。効果はその幻獣の姿にも以前までの人間としての姿にもなれるスキルだ。魔力の消費もない。

デメリットとして肉体が変質するから多大な苦痛を伴うこと、これは迷宮核からお前さんなら問題ないと聞いた。それとお前さんのように進化して全く別の姿になった者以外には無用な物だ」


苦痛、ね。【苦痛耐性】がMAXだから問題ないってことだろう。迷宮はそんなことまで把握出来てるのか。ステータスを覗き見された?それともモモ達との会話を聞かれたのか?


早速使うと光に包まれ、物凄い痛みに襲われる。

声をあげることもなく我慢ができる程度だが、身体を思い切り締め付けられているような痛みに少し顔が歪む。

レベル1の時にキングエイプやオークに攻撃された時の方が痛かったな。そして十秒程で光も痛みも無くなった。


「おっと…」


ヒヨコの時との感覚の違いか転びそうになった。


「大地さん大丈夫ですか!?」


「大地無事…?」


「ああ。問題ない。身体が重くなった感じがしてよろけただけだ」


「よかったです。ただせっかくお揃いだったのに…」


「お前悪いと思ってたんじゃねーのか?」


「あの時は申し訳なかった、とは思ってます!でもお揃いなのが嬉しいのはまた別です!」


お前フェニックスだからお揃いではないだろうに。

顔に触れたり腕を回したり屈伸したりして身体を確かめる。

ちゃんと元の身体だ。服もミノタウロスを三十階層で倒した時に出てきたジャケットのままだし、靴やズボンも変わってない。ステータスも変化してないな。


「やっぱこの姿が一番いいわ。礼は言っておく。ありがとうな」


「本気で戦ってくれるなら礼なんていらない。我は初めての相手であるお前さんとまたヤりたくて迷宮核に話を持ちかけてみただけだ」


「おいこら。誤解を招くような言い方すんな。よし!望み通り戦ってやる。前と一緒で初めは魔法なしでやってやるよ」


【身体強化魔法】は使うがな。


「武器はあるのか」


「ああ。ちょっと待て」


アイテムボックス…ではなく次元倉庫と呼ぶか。いや、箱の形だから次元箱にするか。次元箱から斧とオーガの角とウェアウルフの尻尾を取り出す。

角と尻尾は問題なかったが斧を入れるのには苦労した。箱の形を平べったくしてから斧を引きずって次元箱にいれたのだ。能力は変わるどころか上昇しているので力的には重たく感じることはなかったが持ち難かった。

ウェアウルフの尻尾は別にいらないかと思ったがミノタウロスのジャケットになってもずっと懐に付けていたからな。角と一緒に取り出し懐に入れる。


「待たせたな…。いつでもいいぞ」


ミノタウロスは凶悪そうな笑みを作り槍斧を持ち上げ吠える。


「ブモモモモォォォォ!」


やっぱり戦闘になるとブモーって鳴くのなお前。ボスなのにもはや親しみが湧くが…まあ死んでも死なないんだろ?迷宮核と茶を飲みに来る時また会えると思えば本気で殺しに行ける。


「モモ、ユキ!離れとけ。援護はいらん」


「わかりました!でも危なかったら援護はしますから頑張ってください!」


「ワタシは見守ることしか出来ないけど…頑張ってね?」


「ああ」


【身体強化魔法】、【怪力】、【表皮硬化】、【体毛硬化】。任意発動のスキルは全て発動させる。


ミノタウロスは突っ込んできた。今度こそと思いこちらも斧を振りミノタウロスの槍斧と打ち合わせる。


ガンッ!!


衝撃波かと思うほどの音と振動が響く。

押し返すことはできなかったが、今回は押し負けなかった。

一合、二合と打ち合う。幻獣になってスキルが全て上がってから初めての人間の姿での戦闘だ。少し感覚がまだ狂っているが以前よりも斧が手に馴染み、取り回しがうまくなっている。

そしてそれはミノタウロスも同じだ。以前よりも比べ物にならないくらい強くなっているはず俺の攻撃を全て躱すか槍斧で受け切り、また受け流し、槍の部分で突きを放ってくる。


「フハハハ!楽しい!楽しいぞ!ブモッ!」


「うるせぇ!ブモッ!とか鳴くのやめろ!気が抜けんだよ!」


だが俺も楽しんでいるのだろう。自分が笑っているのがわかる。相変わらず身体能力と斧の打ち合いは互角だ。ミノタウロスと何度も斧をぶつけ合い、時にはお互いの武器が身体を掠め傷を作っていく。


コイツは嫌いじゃあないし、訓練にもなるし、なによりコイツ以外の魔物は一対一でこんな戦いができる相手はいなかったから楽しい。このままずっとやっていても良いが…。


「そろそろ全力でやるぞ」


「来い!」


【身体強化魔法】は使ったがそれ以外の魔法は使わず本気で戦った。次は魔法込みでの全力だ。奇しくも前回と同じ運びになったが…お互い楽しいからいいだろう。


【魔化】発動。属性は…火。


ミノタウロスと打ち合いながらも身体ががどんどん燃え盛る真っ赤な火へと変わっていく。不思議と斧は掴めており、未だ斧をぶつけ合っているが…おそらくミノタウロスの攻撃はもう効かないだろう。身体に振り下ろされても通り抜けるだけだと思う。


【飛行魔法】を発動し、翼を生やし後方に飛び上がり距離を取る。


「斧での戦いは楽しかったが…今から俺の全力で相手してやる」


「来るがいいっ!!」


【木魔法】で巨大なバリスタを作る。そしてバリスタに火を纏わせる。【火魔法】だけでも良いのだが…慣れ親しんだ【木魔法】を芯とすることで速度も威力も上がる。

そして俺自身が【魔化】で火になっているせいか火の威力が幻獣になってから使った時より上がっているおり、【木魔法】で作ったバリスタが燃えるかと思ったが燃えず火を纏うイメージのおかげか燃えることはない。

火だけではなく芯は木なので魔力的な攻撃力もあるが物理的な攻撃力も加味されており、魔力も惜しみなく注ぎ込んだ特別性の矢だ。


「おらっ!俺からの全力の礼だっ!」


「ブモモォォォ!!!」


バリスタは飛んでいき、ミノタウロスの振り下ろされた斧とぶつかり爆発した。



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